国内ではそう珍しいものではなくなっている、陸から完全に離れた沖合に設置された「海上空港」。実は世界初の本格的な海上空港は日本で生まれ、現在も世界的に見ても「海上空港」が多いという特徴も。

どのような空港があり、どういったメリットがあるのでしょうか。

初の海上空港は長崎空港?

 陸から完全に離れた沖合にある「海上空港」は2023年現在、国内に5か所あり、そう珍しいものではなくなりましたが、実は世界初の本格的な海上空港は日本で生まれ、現在も世界的に見ても「海上空港」が多いという特徴があります。どのような空港があり、どういったメリットがあるのでしょうか。

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長崎空港(乗りものニュース編集部撮影)。

 一般的に海上空港は、周辺に住宅などがないことから騒音問題が軽減されます。このことで24時間運用なども可能となり、夜間の貨物便や国際線の便数増などにも対応しやすくなるなど、陸にある空港よりも弾力的な運用と経済的なメリットが期待されます。

特に島国で国土の狭い日本では、空港の広い敷地を確保するのが容易ではないことも、海上空港が志向される理由でしょう。

 日本で初めてできた海上空港は、1975年に建設された長崎空港です。実は世界的に見ても、初めての本格的な海上空港といわれています。もともとは、大村湾に浮かぶ箕島(みしま)という13世帯66人が暮らす小さな島で、同島をベースに、まわりの海を埋め立てて建設されました。

 ただ、このとき長崎空港が建設された理由は、先述の事情とは多少異なります。それ以前、この地域では対岸にある旧大村空港(現・海上自衛隊大村航空基地)で旅客便が運航されていたところ、1960年代後半から航空需要が大きく伸び始めました。

より輸送能力の大きいジェット旅客機が必要とされるなか、これを就航させるためには、設備が整った空港を新たに造るのがもっとも効率的で、長崎空港の場所はこれに適したためといわれています。

 そして、長崎空港の運用開始からしばらくたち、平成に入ると、海上空港がさまざまな場所にでき始めます。

平成生まれの「海上空港」どんな経緯で設置?

 2番目に造られた日本の海上空港は、1994年に建設された関西空港です。当時世界の国際空港では一般的になりつつあった24時間運用を、日本で取り入れた初めての空港で、世界初という100%人工島の海上空港でもあります。もともとは、兵庫県大阪府の市街地にまたがる伊丹空港のキャパシティがいっぱいになりつつあった一方で、ジェット旅客機による騒音問題や、拡張のための用地取得が難しかったことから、大阪府の泉州沖に造られたものです。

 そして2005年には、愛知県知多半島沖に中部空港が建設されます。

これ以前に中部地域の玄関口であった名古屋空港(現・県営名古屋飛行場)も、先述の伊丹空港とほぼ同じような状態となっていたこともあったことから、2005年、愛・地球博(日本国際博覧会)の直前に運用開始となりました。

「海の上に浮かぶ空港」実は日本は”超先進国”? 「海上空港」のメリットとは 世界初ももちろん日本
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多様な航空会社が見られる関西空港(2019年、乗りものニュース編集部撮影)。

 2006年には、ふたつの海上空港がオープンします。2月には神戸市の沖合に神戸空港が、3月には北九州空港が開業。後者は北九州市内の内陸部から移転し、北九州市と苅田町の沖合に浮かぶ海上空港として新たに生まれ変わりました。移設前の北九州空港の滑走路は1600mしかなく、山と干潟に囲まれていたため延伸が困難だったことが、現在の位置に設置されたおもな背景です。

 なお、関西空港と神戸空港が設置される背景となった伊丹空港、ならびに中部空港設置の背景となった名古屋飛行場は、いまだに健在です。

 伊丹空港は2023年現在、運用時間帯や同空港を発着する飛行機のエンジン数を制限しながらも国内線専用の基幹空港として、また名古屋飛行場は静岡に拠点を構える地域航空会社、FDA(フジドリームエアライン)の拠点として、それぞれ使われています。