トンネル内を自動車やオートバイなどで走行中、頭上で回る巨大なファンを目にしたことはないでしょうか。正式名称を「ジェットファン」と呼びます。
【実は2枚羽根】これがジェットファンの構造です(イラストで見る)
この装置には、大きく分けて2つの役割があります。1つは、日常的な「換気」です。自動車の排気ガスなどがトンネル内に留まると視界が悪くなってしまいます。
そこでジェットファンを使って人工的な風を起こし、空気を入れ替えることで、安全に走行できる環境を保っています。センサーでトンネル内の空気の汚れ具合などを検知し、その情報に基づいて換気設備が自動的にコントロールされているのです。
道路トンネル向けジェットファンの大きさは、例として直径630mmから1530mm級といった幅広いラインナップが用意されています。トンネルの長さや交通量などの条件に応じて、適切な大きさや出力の機種が組み合わされて設置されます。
しかし、この巨大な扇風機の真価が発揮されるのは、万が一の「火災」が発生したときです。
煙の流れをコントロール! 避難路を確保する気流の科学トンネル内で火災が発生した際、ジェットファンは煙を一方向に流すなどしてその動きをコントロールし、避難や消防活動に支障が出にくい環境を確保する役割を担います。
トンネル火災で威力を発揮する巨大な扇風機(画像:写真AC)
ジェットファンの中には、正転・逆転の両方向に運転できる機種もあり、状況に応じて気流の向きを変えることができます。
ただし、避難が続いている段階での安易なファンの反転は、逆に煙を拡散させるおそれがあるため、その運用は避難状況を踏まえた慎重な判断が前提となります。こうした特性を踏まえ、通常時の換気に加え、火災時には煙の流れを適切に制御して避難路の確保を助けるのです。
トンネルは長い筒状の空間になっているため、換気や火災時の煙を制御するには、大型の送風機で強い気流を作り出す必要があります。そのため、ファンから吹き出される風の速さは、秒速約35mという「台風並み」の猛烈なレベルに達します。
なお、ジェットファンはすべてのトンネルに設置されているわけではありません。トンネルの長さや交通条件などにより、自然の風や車両の走行によって生まれる風だけで十分な換気が確保できる場合には、設置されないケースもあります。
何気なく見上げていたあの巨大な扇風機は、私たちがトンネルを安全に通り抜けるため、そして緊急時に逃げ道を確保するための、極めて頼もしい防災装置だったのです。

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