JR四国が「ものがたり列車」と呼んでいる観光列車は、飲食物を車内に持ち込むことが原則禁止されています。食事の事前注文をせずに乗り込んだところ、意外な展開が待ち受けていました。
【至福すぎる…】これが「伊予灘ものがたり」の車内と食事です!(写真22枚)
「ものがたり列車」はJR四国管内に3つ。愛媛県の瀬戸内海(伊予灘)を見渡せる予讃線旧線(愛称:愛ある伊予灘線)を経由して松山と伊予大洲(大洲市)・八幡浜(八幡浜市)を結ぶ「伊予灘ものがたり」、多度津(香川県多度津町)―大歩危(徳島県三好市)の「四国まんなか 千年ものがたり」、そして高知県の高知―窪川(四万十町)などを走る「志国土佐 時代(トキ)の夜明けのものがたり」です。
いずれも現在は特急として運行しており、全車両がグリーン車です。国鉄時代に製造が始まったディーゼル車両「キハ185系」を改造しています。
これらの「ものがたり列車」は特製の食事を事前注文できるようになっており、列車ごとにメニューが異なる名物となっています。パンフレットには「車内ではお水・お茶以外の飲食物の持ち込みはご遠慮いただいております」と明記されており、乳幼児やアレルギーがある場合などを除くと弁当の持ち込みはできません。
しかし、筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)が愛媛県の有力紙、愛媛新聞が主催する講演会でお話しするために勤務先の初任地だった松山市を訪れ、松山駅の「みどりの窓口」で「伊予灘ものがたり」の切符を買ったのは乗車2日前。食事予約券を申し込める乗車4日前を過ぎていました。
このため料理の事前注文をせずに事実上の手ぶらで乗り込んだところ、意外な展開が待ち受けていました。
「伊予かんの香りに包まれる車内」で食事なし…おっ?2014年7月に運行が始まった「伊予灘ものがたり」は、もともと国鉄時代に造られたディーゼル車両キハ47形を改造した2両編成でした。バトンタッチして2022年4月に運行が始まった現行車両は、「レトロモダン」をコンセプトにキハ185系を改造した3両編成です。
伊予灘ものがたりの車内に飾られた陶器(大塚圭一郎撮影)
定員は58人で、1号車の「茜(あかね)の章」は3~4人で利用できるボックス席や、途中で目の前に瀬戸内海を一望できるカウンターの座席、2号車「黄金(こがね)の章」はカウンターの座席や2人の対面座席、3号車「陽華(はるか)の章」は1両まるまる、最大8人で使える個室になっています。
瀬戸内海の絶景と沿線の人々の温かいおもてなしを受けながら、愛媛県が誇る新鮮な魚介類や果物を生かした食事を味わえるのが大きな特色です。料理や飲み物は、愛媛県の特産品である砥部焼(とべやき)で振る舞われます。
土休日を中心に運行されており、列車は松山から伊予大洲へ向かう「大洲編」、伊予大洲から松山の「双海編」、松山から八幡浜の「八幡浜編」、八幡浜から松山の「道後編」の4便があります。
筆者が乗ったのは「道後編」で、食事はサンドイッチやイングリッシュスコーン、マカロン、ムースなどとともに、伊予かんを乾燥させたフレークにアッサム茶葉をブレンドした紅茶を楽しめる「アフタヌーンティーセット」(3500円)が用意されていました。料理を提供するプチパリ(松山市)は「夕日が沈む美しい景色を見ながら、車内が伊予かんの香りに包まれたらいいなという想いを込めている」と解説します。
予約した2号車のカウンターの座席に腰かけると、美しいBGMが流れる車内は「ヌン活」の格好の舞台でした。「食事も味わえるように早めに手配すれば良かったかな」と後悔の念がよぎりました。
ふとカウンターの上に視線を向けると、小冊子が置かれているのに気づきました。
「この場で注文できるのですか?」その小冊子はメニューで、「アフタヌーンティーセット」を注文し損ねた筆者のような乗客に“敗者復活戦”を提供しているかのよう。同じプチパリが手がける特製スイーツを紹介していたのです。
八幡浜を出発後に民家のベランダから見送ってくれる夫妻と2匹の愛犬(大塚圭一郎撮影)
特製スイーツは、ハート形のカップにシロップ漬けミカンとチョコレートブラウニー、チーズのムース、果物のジュレが入った「らぶかん」(700円)、パイナップルチーズケーキ(同)、カヌレとクッキー、マカロンを組み合わせた「下灘カヌレセット」(650円)の3種類。それぞれコーヒーまたは紅茶とのセットで1100円です。
他にも愛媛県の日本酒と小魚珍味「二名煮」の「おたたさんセット」(1500円)、季節のキッシュとグラスワインの「夕日セット」(1000円)、3種類あるオリジナルカクテル(800円)などバラエティーに富んでおり、どれにすべきか目移りします。
念のためアテンダントに「この場で注文できるのですか?」と確認すると、「はい、どれもご用意できます」と頼もしい返答。筆者は下灘カヌレセットを注文しました。
列車は八幡浜を出発して間もなく、民家のベランダから夫妻が2匹の愛犬とともに見送ってくれます。伊予大洲の手前では肱川(ひじかわ)をゆっくりと渡るので、大洲市政50周年の2004年に復元された平山城の大洲城天守などを一望できました。
アテンダントが「下灘カヌレセット」を運んできてくれたので代金を支払おうとすると、「お会計は最後に参ります」とのこと。肱川の雄大な流れと併走する“走る喫茶室”で、「ヌン活」を満喫することができました。
「お会計を」→やられたっ!肱川河口に架かっている1935年8月完成と日本最古の道路可動橋・長浜大橋(通称・赤橋)が進行方向左側に見えてくる頃、「伊予灘ものがたり」のオリジナルグッズといった土産品のサンプルを持ったアテンダントが席に回ってきました。そこにはしっかりとした“計算”がありました。
喜多灘駅のプラットホームにある大洲市と伊予市の境界線(大塚圭一郎撮影)
アテンダントは発車前後には飲食物の注文を積極的に聞き、最大のクライマックスである瀬戸内海沿いを走行中に記念撮影をしてくれます。このため、それらの間に土産品の注文を聞いて回るのです。
オリジナルグッズはキーホルダー(1300円)や「ひのきの木工コースター」(800円)、ピルスナーグラス(1000円)、クッキーアソート(1200円)など。
プラットホームが大洲市と伊予市にまたがる喜多灘駅を通り過ぎると、隣の串(伊予市)の手前に「地上から浮かんで走っているような感覚を楽しめる」(アテンダント)という名所が。これは地上から18mに架かる本村川橋梁(通称・串の鉄橋)で、橋の防護柵が車窓からは見えないため“空中散歩”の気分を味わえます。
串の次が下灘(伊予市)で、晴れた日にはプラットホームの前に広がる瀬戸内海に美しい夕日が沈む様子を堪能できます。下灘で約10分停車し、アテンダントは乗客に「列車からメロディーから流れたら出発の合図ですので、流れ始めましたら車内にお戻りください」と呼びかけました。
下灘を出発後に食事のラストオーダーがあり、会計の段取りになりました。このとき、筆者は「伊予灘ものがたり」のもう一つの“計算”に舌を巻きました。クレジットカードのようなポストペイ(後払い)によって利用者は大船に乗ったつもりになり、食事や土産品を気前よく頼んでしまうのです。
筆者も「下灘カヌレセット」に加えてさまざまな土産品を買ったため、支払い金額は5500円に達しました。
隣の伊予上灘(伊予市)には計3匹いる犬と猫の「福駅長」と地元住民が見送ってくれましたが、残念ながら「道後編」は通過するため一瞬のご対面でした。次に「伊予灘ものがたり」に乗車する際は、下灘に加えて伊予上灘にも止まる「双海編」を選ぼうと考えています。
その際には、気になりながら注文しなかった「らぶかん」を味わおうと思います。

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