電車の車輪は、レールと接する平らな「円柱」だと思われがちですが、実際はレールの内側から外側に向かって半径が小さくなる「円錐」に近い形をしています。左右の車輪を真正面から見ると、まるで“台形”のようになっているのです。
車輪の踏面(レールと接する面)には若干の勾配が付けられており、これを「踏面勾配(とうめんこうばい)」と呼びます。
具体的には、レールの内側(フランジ側)が太く、外側に向かって細くなるように傾斜がついています。この踏面勾配は設計思想や路線条件によって異なりますが、一般的には「1/20(20進んで1下がる)」といったわずかな傾斜がつけられています。
このわずかな傾きこそが、ハンドルがない電車を曲がらせるための重要な鍵となります。
イメージしやすいのは、飲み口の方が底よりも広い「紙コップ」です。紙コップを横倒しにして床で転がすと、勝手に円を描いて曲がっていきます。電車の車輪も、これと同じ理屈を利用してカーブを曲がっているのです。
カーブで自動的に「舵」を切る! 古くから使われてきた知恵カーブを走ると、遠心力によって輪軸(左右の車輪と車軸のセット)がカーブ外側へ寄るような動きが生じます。すると、外側の車輪は半径が大きい部分、内側の車輪は半径が小さい部分でレールに接しやすくなります。
左右の車輪は1本の軸で繋がっているため、同じ回転数でも1回転で進む距離(周長)に差が出ます。この「回転差」が生まれることで、ハンドル操作をしなくても自然にカーブの方向へ向きを変えることができるのです。
この傾きは、曲線を通りやすくする一方で、直線では左右に揺れやすくなる面もあります。
また、車輪は使い続けるうちにレールとの摩擦で摩耗したり傷ついたりします。そのため、定期的に踏面を削る「削正(さくせい)」という作業を行い、適正な形状に戻す保守が行われています。
何気なく乗っている電車の足元には、車輪形状(踏面勾配)という極めてシンプルかつ合理的な仕組みでカーブ通過を助ける、先人の知恵が詰まっているのです。

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