角川映画50th ANNIVERSARY「角川映画祭」が、5月1日から9月17日まで都内・角川シネマ有楽町で開催中だ(全国順次開催)。

 初作となった『犬神家の一族』(76)から50年。

その間、角川映画は「読んでから見るか、見てから読むか」のキャッチコピーの下、昭和~平成~令和にわたって、映画と書籍を中心にメディアミックスを続け、時代の熱気をスクリーンに刻み続けてきた。今回上映される作品の中から、角川シネマコレクションの特長の一つである、4Kデジタル修復版<初披露>作品を4本紹介したい。

 『セーラー服と機関銃』は、赤川次郎原作、薬師丸ひろ子主演のアイドル映画でありながら、平凡な女子高生がある日突然やくざの組長になり、子分を従えながら敵対するやくざと闘うという奇抜なストーリー、相米慎二監督独特の長回し撮影(カットせずに長い間カメラを回し続ける技法)などの意外性が話題を呼んだ。薬師丸が機関銃を撃った後で吐く「カ・イ・カ・ン」というせりふが流行し、薬師丸のデビュー曲となった同名主題歌(来生えつこ作詞、来生たかお作曲)も大ヒットを記録した。

 アイドル映画製作の王道とは、スタッフや共演者の誰もが、若いヒロインを輝かせるための努力を惜しまないことだが、本作も、まさに薬師丸ひろ子のために作られた映画である。渡瀬恒彦も大門正明も北村和夫も佐藤允も、そして、あの三國連太郎までもが、彼女の引き立て役に過ぎないからだ。とは言え、本来なら照れてしまいそうな役を、彼らがきちんと演じてくれたことが、この映画を一層ユニークなものにしている。

 『時をかける少女』。放課後の理科実験室でラベンダーの香りをかいだことをきっかけに、芳山和子はタイムトラベラーに…。未来人と彼女の淡い初恋と学園生活を描いたファンタスティックで切ないラブロマンス。監督は大林宣彦、原作は筒井康隆のジュブナイル(少年少女向け)SF。

 原田知世の映画デビュー作ということもあり、大林監督はアイドル映画の手法を用いながら、自身の故郷・尾道に舞台を移し、ノスタルジックな背景を構築。

この映画で尾道が果たした役割が、日本のフィルムコミッションの先駆けとされる。その一方で、当時の最新特撮を駆使して、タイムトラベルという非現実を見事に映画の中に取り込んでみせた。

 公開から40年以上がたった今となっては、映される風景、若々しい出演者たち、「土曜日の実験室」という印象的なせりふ、「桃栗三年柿八年」の歌(大林監督作曲の「愛のためいき」)、原田が歌った松任谷由実作詞・作曲の主題歌など、何から何までが懐かしく思える。

 『麻雀放浪記』は、阿佐田哲也の原作を映画化した、イラストレーター和田誠の監督デビュー作。終戦直後、焼け跡のドヤ街でドサ健(鹿賀丈史)と出会い、賭博の世界に足を踏み入れた坊や哲(真田広之)は、オックス・クラブのママ(加賀まりこ)や出目徳(高品格)と組んでマージャンにのめりこんでいく。やがて、独り立ちした哲は、ドサ健、出目徳、女衒の達(加藤健一)、上州虎(名古屋章)らと壮絶な青天井マージャンを繰り広げる。

 時代背景を意識したモノクロ映像、雀卓を旋回するカメラワークなど、映画狂である和田のこだわりが随所に見られる。もちろんマージャンを知っているのに越したことはないが、よくできたスポーツやギャンブルを描いた映画は、たとえルールを知らなくても楽しめるように、この映画も、不思議な縁で結ばれた個性的な登場人物たちが、生き残りを懸けて激闘を繰り広げるピカレスク(悪漢)ロマンとして存分に楽しめる。

 監督としての和田の力量はもちろん、俳優たちの好演、共同脚本の澤井信一郎による印象的なせりふ、安藤庄平の見事なモノクロ撮影、そして主題歌の役割を果たした岡晴夫の「東京の花売娘」などが相まって、いい映画を見たという満足感を得ることができる。

 『Wの悲劇』。劇団研究生の三田静香(薬師丸ひろ子)は、次回公演「Wの悲劇」のオーディションに臨んだが、ライバルの菊地かおり(高木美保)がヒロイン役に決まる。そんな中、劇団の看板女優・羽鳥翔(三田佳子)にスキャンダルが発生。

静香は、その身代わりとなることでヒロインの座を手に入れるが…。

 澤井信一郎監督が夏樹静子の小説を劇中劇として取り入れながら、その舞台を演じる女優の成長と元劇団員の森口昭夫(世良公則)との恋を描いた。

 劇中劇との二重構造を持った構成が見どころで、薬師丸がアイドルから本格的な女優へと成長した映画としても知られる。薬師丸が歌った、作詞:松本隆、作曲:呉田軽穂(松任谷由実)の主題歌「Woman“Wの悲劇”より」も名曲だ。

(田中雄二)

映画祭のスケジュールの詳細は『角川映画祭』公式サイト

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