NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(=羽柴秀吉/池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。
この回の見どころは、何といっても小一郎役の仲野太賀と敵方の竹田城城主・太田垣輝延役の中野英雄の親子共演だろう。父・中野英雄の出演は事前告知なしのサプライズで、敵役の輝延を憎々しげに演じ、小一郎の活躍を引き立てていた。番組公式サイトで公開された中野のコメントも親として、また俳優としての喜びにあふれ、心打たれるものがあった。
そしてもうひとつ注目したのが、竹中半兵衛(菅田将暉)とこの回登場した小寺官兵衛(後の黒田官兵衛/倉悠貴)という2人の軍師の知恵比べ、さらにそれとは異なる小一郎の知恵の使い方だ。
自軍の織田方と西国の毛利家との間に位置する播磨を攻略するため、荒木村重(トータス松本)の仲介で姫路城代の官兵衛と対面した秀吉は、いきなり「今よりこの城は、羽柴様に差し上げまする」との申し出を受ける。既に城主や有力国衆の調略も済ませていた官兵衛の手際の良さに、秀吉は感服。だがここで、慎重な半兵衛が人質を要求すると、官兵衛は一瞬ひるんだものの、すぐさま「たやすいことでございまする」と冷静に答え、嫡男・松寿丸を差し出すと約束する。
さらに秀吉は、半兵衛の進言を受けて毛利の勢力圏と接する最前線・上月城の攻略に乗り出す。その途中にある福原城攻略の際、半兵衛が作戦を立案したところ、官兵衛は得意げに「この策には、穴がありまする」と指摘。話を聞いた秀吉は、官兵衛の策を受け入れるが、それは半兵衛が、わざと穴を作って官兵衛の実力を試したものだった。共に秀吉の軍師として名高い半兵衛と官兵衛の火花散る静かな戦いは見応えがあった。
半兵衛役の菅田は、大河ドラマ出演も「おんな城主 直虎」(17)、「鎌倉殿の13人」(22)に続いて3度目ということで、放送時にSNSで”変顔“と話題になった個性的な表情芝居を見せるなど、余裕が感じられた。これに相対する倉も、官兵衛の野心と知性に溢れた不敵なたたずまいを、初登場で的確に表現。大河ドラマ初出演ながら、世界的大ヒット作「SHOGUN 将軍」(24)に出演した実力の一端を垣間見せてくれた。今後の活躍が楽しみだ。
一方、生野の銀山を手に入れるため、秀吉たちと別行動でその地を治める太田垣輝延の竹田城攻略に乗り出した小一郎は、「わしはこの戦、一滴の血も流さずに終わらせたいのじゃ」と知恵を絞る。その結果、思いついたのが、高台にある城を包囲して水の補給を絶ち、降伏させるというものだった。その際、敵が城の周囲を覆う雲海に紛れて水の補給に出ることを阻止するため、昼夜を問わず篝火をたく。その理由について「朝もやはのう、昼と夜の暑さと寒さの違いでできるんじゃ」と説明した小一郎は、藤堂高虎(佳久創)から「よう知っておりますな」と問われ、「昔はずっと、田畑に囲まれて生きておったからのう」と答える。農民時代の知恵を生かした小一郎ならではの作戦で、半兵衛や官兵衛とは異なる熱血漢で心優しいキャラクターが際立っていた。
また、この回は半兵衛が秀吉に「やはり私は、聖人君子にはなれそうもありませぬ。戦が楽しうて仕方ござらぬ」と語る一幕もあったが、これも「一滴の血も流さずに終わらせたい」という小一郎の言葉とは対照的。“秀吉の名参謀”と呼ばれた小一郎が、これからどんな活躍を見せていくのか。
(井上健一)

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