今中慎二インタビュー

中日のピッチャー陣について

 5月26日時点でセ・リーグ5位の中日(45試合、19勝24敗2分)。下位ではあるが、まだ上位をうかがえる位置にいる。

そんなチームのピッチャー陣ついて、かつて中日のエースとして活躍し、1993年に沢村賞を受賞した今中慎二氏が語った。

今中慎二が中日ピッチャー陣を分析 不調のエース髙橋宏斗は「昨...の画像はこちら >>

【不調の髙橋宏斗と、うれしい誤算の松葉貴大】

――先発ピッチャー陣をどう見ていますか?

今中慎二(以下:今中) 全体的に悪くはないです。ただ、ローテーションはくるくる回しているような感じで、固定はされていません。投げては抹消したり......日程の影響もあると思いますけどね。

 あと、昨年は先発ピッチャーが余計なフォアボール出して試合のリズムを悪くしたり、立ち上がりに失点してしまう傾向があったのですが、今年はあまりないかなと。まったく出さないわけではないですけど、ゴタゴタする場面は今のところありません。

――エースの髙橋宏斗投手は2勝5敗(成績は5月26日時点。以下同)と負けが先行するも、直近4試合はクオリティスタート(QS/先発投手が6回以上を投げ、自責点3以内に抑える)を達成。状態は上がっているのでしょうか?

今中 キャンプ、オープン戦などもよくなかったですが、今もあまりよくないです。いつ頃から状態が上がるかなと思いながら見ているのですが、まだ本来のピッチングにはほど遠いですね。

 メンタル面というより、メカニック(投手が投球モーションに入ってからボールをリリースするまでの動き)の部分でズレがあると思うのですが、シュート回転するボールが多いんです。なので、本来の真っすぐで押せるピッチングができていません。昨年のよかった頃とは全然違いますよ。

 昨年のような球速も、ボールのキレもない。何より、空振りが取れる真っすぐではありません。あれだけスプリットを投げる比率が高い(約30%)と、真っすぐはスピードが出ないですし、落ちていく一方です。スプリットに頼るのではなく、真っすぐをもう少しよくしないと、状態は上がってこないんじゃないですか。

―― 一方、松葉貴大投手はチーム最多の5勝(3敗)を挙げ、防御率1.84と安定したピッチングを続けています。

今中 試合を作って勝っていますね。昨年に比べて、特にピッチングが変わっているわけではないですし、今年のオープン戦も最後に1試合投げただけなので、当初は「大丈夫なのかな?」と心配されていましたが......いざ蓋を開けてみたら、松葉がいなかったら大変なことになっていた、という感じです。

 逆に前評判が高かったカイル・マラーが勝てていません。ランナーが出ると、ちょっとリズムがおかしくなって制球を乱しがちです。クイックも全然できていないですし。4月22日の巨人戦などもランナーが出てからおかしくなりました。

 開幕してからの最初の2試合は、援護がなくて勝ちがつかなかったのですが、投球内容はよかったんです。

登録抹消されてファームで調整となっていますが、もうワンチャンスあげて様子を見てもよかった気がします。課題は一軍の試合のなかで改善していかないといけませんし、ファームで抑えた・打たれたということとは別問題ですから。

【リリーフ陣は不安要素もあるが......】

――リリーフ陣はどう見ていますか? リリーフ陣の防御率は現段階で2.52です。

今中 クローザーの松山晋也がしっかり抑えていますし、全体的に安定しているんじゃないですか。ただ、最近は清水達也が早い回を投げるようになって、ジュニオル・マルテが8回投げることが多くなっていますが、やっぱり怖いですよね。球速は157、158キロくらい出ますが、球速があるわりにはなかなか空振りが取れませんし、一発で仕留められてしまう。

 0-0の試合で登板してホームランで決められた試合もありましたね。そういうのはやっぱり困ってしまいますよ。少しランナーを出したりするのは仕方がないですが、8回を任せるピッチャーがホームランで決められるというのは、チームにとってしんどいです。そういった不安要素があるから、クローザーを任せるのは厳しくなります。

――勝野昌慶投手は、大台の160キロ(球団日本人最速を更新)をマークするなど好調をキープしていますね。

今中 状態は上がってきていると思います。

ただ、僅差の試合の終盤など、もう少し厳しい場面で投げた時、同じように投げられるかどうかですね。僅差でマウンドに上がるとフォアボールを出してしまいますから。確かにすごいボールは投げるのですが、そういう時に脆さが出てきてしまうのが課題だと思います。

 ただ、先に話したピッチャーのほか、清水達也、齋藤綱記、藤嶋健人、橋本侑樹らリリーフ陣は全体的に安定していますし、今後もある程度は計算できます。近年はずっとそうなのですが、課題はやっぱり打つほうですよ。

(野手編:点が取れない中日打線について、今中慎二は「1、2人が頑張っても難しい」 改善のカギとなるのは?>>)

【プロフィール】

◆今中慎二(いまなか・しんじ)

1971年3月6日大阪府生まれ。左投左打。1989年、大阪桐蔭高校からドラフト1位で中日ドラゴンズに入団。2年目から二桁勝利を挙げ、1993年には沢村賞、最多賞(17勝)、最多奪三振賞(247個)、ゴールデングラブ賞、ベストナインと、投手タイトルを独占した。また、同年からは4年連続で開幕投手を務める。2001年シーズン終了後、現役引退を決意。現在はプロ野球解説者などで活躍中。

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