スターダム 伊藤麻希インタビュー 後編

(前編:伊藤麻希にとってはイジメも「自分を引き立たせるスパイス」 アイドルをクビになって「万歳!」から始まった逆転劇>>)

 東京女子プロレスで唯一無二の地位を築いた伊藤麻希は、その視線を海外に向けた。AEWで世界トレンド入りを果たし、GCWでは過激なハードコアマッチもやった。

彼女が手にしたのは、数字だけでは測れない"熱狂"だった。

 2026年、彼女が選んだ次なる舞台は、女子プロレスの最高峰「スターダム」。世界を股にかけるカリスマが、その野望のすべてを語る。

【女子プロレス】伊藤麻希が語るスターダムでの野望「引退するま...の画像はこちら >>

【アメリカで獲得した爆発的な人気】

――2019年のDDTアメリカ興行を機に、伊藤選手の海外人気が爆発しましたね。

伊藤:正直に言うと、当時はまったくアメリカに興味がありませんでした。「早く日本に帰りたい」と思っていたくらいです。でも、蓋を開けてみたら、ポートレートの売上が日本の倍以上になったんですよ。

 それは、SNSの力ですね。アメリカに行く前から、現地では「伊藤麻希」というキャラクターが勝手に浸透していました。中指を立てて、ツインテールにリボンをつけて暴れる日本人の女の子なんてほかにいないですから。一度見たら忘れられないんでしょうね。

――2021年にはAEWに参戦し、Xで世界のトレンド入りも果たしました。メジャー団体はどうでしたか?

伊藤:ケータリングが豪華すぎて驚きました(笑)。

当時はコロナ禍で無観客でしたが、会場が大きすぎて、マイクパフォーマンスをしても自分の声が2秒遅れて聞こえてくるんです。「今、私は別次元の場所にいるんだな」と実感しました。

 リング上ではよくも悪くも話題になりました。ムキムキの選手が投げ技を披露する世界で、ツインテールの小さい子が出てきて倒れ込みヘッドバットをする。あんな光景、テレビで見たことないでしょうから。そこで「面白いじゃん」と言ってくれる人がたくさんいたのがうれしかったですね。

――その後、デスマッチ団体「GCW」で"デスマッチのカリスマ"ニック・ゲージとタッグ「Maki Death Kill」を結成しました。

伊藤:AEWを経験して、「自分を変えなければいけない」と思ったんです。プロレスで本当のスターになるには、実力が足りない。そのための修行の場としてGCWを選びました。

――あの狂気的なファンの前で、マット・カルドナの額をピザカッターで切り刻み、吹き出す血を自分の頬に塗った姿は衝撃でした。

伊藤:オーナーのブレット・ローダーデールが「バカっぽいことが好き」ということだったので、そこで思いついたのが「Maki Death Kill」でした。

ニック・ゲージというレジェンドとタッグを組めたのは幸運でしたね。ただ、アメリカに住んでインディー団体を回り続けるより、日本で"強いメディア"に出て話題を作っていったほうが、結果的にアメリカでの価値も上がると考えたんです。

【スターダムで狙うは黒のベルト】

――2026年1月、スターダムに所属することになった理由を聞かせてください。

伊藤:東京女子ではトップの「プリンセス・オブ・プリンセス王座」以外のベルトを獲得し、やりきった感覚があったんです。そんななか、2024年に首をケガして、「自分の残りのキャリアはそんなに長くないのかもしれない」と。だったらリミットを見据えて、早めに行動に移さなければいけない。より高いレベル、より大きなやりがいを求めてスターダムの門を叩きました。

――自由奔放に見える伊藤選手ですが、関係者からは「非常に真面目で、自分の試合映像を必ず見返して研究している」という声も耳にします。

伊藤:自分では、それが普通だと思っています。自分の映像を見ないレスラーもいますが、私は"自分がどう見られているか"を客観的にチェックします。研究熱心なのかもしれませんね。

――実際に所属してみて、スターダムの印象はいかがですか?

伊藤:めちゃくちゃやりがいがあります。レベルが高いし、仲間が増えていく感覚も楽しい。

1月の後楽園ホールで「金を稼ぎにきた」と言いましたが、それは本気です。お金を稼げるのは、スターだけですから。

――狙っているベルトはありますか?

伊藤:IWGP女子のベルトです。今は朱里さんが持っていますが、自分ならもっと面白くできるはずです。

――朱里選手は、格闘技にも精通している"モノが違う女"の異名もある王者です。

伊藤:私は、泥臭ければ泥臭いほど輝くタイプです。強い相手にボコボコにされて、泥水をすするような展開こそが、伊藤麻希を一番美しく見せる。朱里さんとは3.15横浜大会で1分ほど肌を合わせましたが、すごく噛み合う予感がありました。東京女子の山下実優に似た匂いを感じたんです。朱里さんからベルトをはぎ取りたいですね。

 あと、これが大事なんですけど、IWGP女子のベルトのデザインって黒じゃないですか。私の今のコスチュームに絶対に似合うんですよ。

自分好みのデザインなんです。

【個人、軍団での将来的な野望】

――強さだけでなく、見た目とのマッチングも重要なんですね。

伊藤:めちゃくちゃ重要です! 同じ理由でタッグのゴッデス・オブ・スターダム王座もいいかなと思ってます。あれも黒ベースでかっこいいから。逆に、(トリオマッチ専用の)アーティスト・オブ・スターダム王座だったら、(3本あるベルトのなかで)私は絶対ピンクをもらおうかなって。

――アーティスト王座のベルトの色は、オレンジ、ピンク、スカイブルーですからね。

伊藤:そう! 「自分のことしか考えてないじゃないか」って言われるかもしれないけど、ベルトを巻いた時のトータルコーディネートも含めての"スター"ですから。まずは、朱里さんからベルトをはぎ取りたいし、そのベルトを巻いた姿で本も出したいっていう夢もあります。

――ベルトを奪取したら叶いそうですね。ユニット「伊藤リスペクト軍団」としての展望はいかがですか?

伊藤:軍団を大きくしたいです。今は(古沢)稀杏だけですが、彼女は空気を読むのが天才的にうまい。私は自分より目立つ人が苦手なんですが、入場の時、私が「世界一可愛いのは~?」と聞いて「伊藤ちゃーん!」というコールを求めますが、彼女は「世界で2番目に可愛いのは~?」と聞くんですよ。

場をわきまえていますよね。

――これまで何度か新メンバーを迎えましたが、その日のうちに離れてしまうケースが多いように感じます。

伊藤:私のわがままについてこられるのが条件ですから。そういう意味で、稀杏は最高のパートナーです。あと梨杏や虎龍清花も気になります。虎龍は、うちの軍団に加入したら輝くと思うんですよ。

――ベルト以外に、個人的な目標はありますか?

伊藤:東京ドームでのシングルマッチを決めて、自分の入場曲を歌いながら入場すること!

――スターダムの岡田太郎社長も、東京ドームでの開催を口にしています。

伊藤:もちろんスターダムで開催するなら絶対に出たい! でも、具体的にはまだ決まっていないから、現実的には新日本プロレスの1.4東京ドームに出場したいですね。そこに出るための最短ルートが、IWGP女子王座だと思っています。そしてプロレスを知らない一般層にまで私の名前を響かせたい。

――今後のレスラー人生は、どう考えていますか?

伊藤:引退するまでに、すべての物語を完成させるつもりです。引退試合は東京ドームで華々しくやるか、逆張りで、ファンとの距離が近い新木場1stRINGで終わるか......どちらにせよ、完璧な計画で進めていきます。

――Xは24.6万人、インスタグラムは20.7万人と、SNSをフォローしている、ファンのみなさんへメッセージをお願いします。

伊藤:SNSのフォロワーは"傍観者"も多いですが、私は会場に足を運んで熱狂してくれるファンをもっと増やしたい。私自身、メディアでどんどん露出して、「伊藤リスペクト軍団」も有名にして世界を獲る! 伊藤麻希は、絶対にもっと売れます。目を離さないでください!!

【プロフィール】

伊藤麻希(いとう・まき)

1995年7月22日生まれ、福岡県出身。2011年、アイドルグループ「LinQ」の2期生としてデビュー。「世界一かわいい」というキャラクターとSNSでの破天荒な発言で注目を集める。2016年にプロレスラーデビュー。2017年のLinQクビ以降、自らを「クビドル」と称し、逆境を糧にカリスマ性を爆発させた。2019年のアメリカ遠征を機に「ツインテールの女の子が中指を立てるスタイル」が現地ファンに熱狂的に支持され、AEWやGCWなど世界のメジャー・インディー団体で活躍。ニック・ゲージとのタッグ「Maki Death Kill」としてカルト的な人気を博し、GCWエクストリーム王座を300日以上にわたり保持した。2025年8月、東京女子プロレスを卒業し、2026年1月からスターダム所属。現在は「伊藤リスペクト軍団」を率い、世界の頂点を見据えている。

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