F1第4戦マイアミGPレビュー(前編)

「楽しさなんてないよ。マシンはずっと問題だらけだ」

 マイアミGPの決勝レース。

今シーズン初の完走を果たしたランス・ストロール(アストンマーティン)に笑顔はなかった。

「ダウンフォースもないし、パワーもない。改善作業を続けるしかない」

【F1】アストンマーティン・ホンダのドライバーに笑顔なし 2...の画像はこちら >>
 アストンマーティン・ホンダはこの週末を通してトラブルに見舞われることなく、すべてのセッションをスムーズに走行した。FP1ではピットガレージの電源設備トラブルにより走行開始が20分ほど遅れる場面もあったが、車体とパワーユニットはトラブルフリーだった。

 スプリント予選は黄旗やロックアップのせいで本格的なアタックができず21位・22位に終わったものの、スプリントレースではキャデラック勢をかわして15位・17位まで挽回。

 予選ではさらに改善を進め、キャデラック勢を上回る17位・18位という結果を出した(イザック・アジャの失格で繰り上がり)。

 しかし、フェルナンド・アロンソにも笑顔はなく、最終コーナーの出口で目一杯スロットルを踏み込んでマシンを横にスライドさせ、フラストレーションを爆発させていた。

 問題はギアボックスだった。

「今週末は、パワーユニットよりもギアボックスのほうが問題だった。原因は電気系なのか何なのか、とにかくアップシフトもダウンシフトもすごく変で、きちんと制御ができていなかった。もっとパフォーマンスはあったはずだけど、ギアボックスのせいでかなりタイムロスしてしまったんだ。

 ブレーキングのたびにシンクロ(クイックシフトを実行するための同調制御)を失っていて、アップシフトがハーシュ(シフトロスが大きく)で、コーナーの出口でまったく加速していかなかった。

ダウンシフトもすごくランダムでバラバラだった。

 リアがロックして、うしろから押されるような感触の時もあった。もしウェットコンディションになったら、こんなダウンシフトがバラバラな状態ではとてもレースなんてできないよ」

【アロンソが狙っていたチャンス】

 Q1ではトップのアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデスAMG)から2.445秒差のタイムだった。だが、ギアボックスの問題がなければそのギャップはもっと縮まっていたことになる。

 それを証明するように、決勝ではキャデラック勢と戦い、アロンソがセルジオ・ペレスを抜き去って15位フィニッシュを果たした。

 積極的にソフトタイヤを使い、タイヤ差を利用してマシンの不利を詰める──。アストンマーティンが採ったのは、そんなアグレッシブな戦略だった。

 ソフトタイヤはもって20周、攻めて走るなら15周。57周のレースで使うには、ミディアム~ハードの1ストップ作戦を採るライバルたちとは違う戦略が必要になる。

 そのため、ストロールは2ストップ作戦でソフト中心の戦略、アロンソは第1スティントのミディアムを41周目まで引っ張って最後にソフトで猛プッシュする戦略を採った。

「昨日のスプリントレースでソフトタイヤを履いてデータを収集し、19周は問題なく走れることを確認していた。だから、そのデータを使ったんだ」

 アロンソがそう語るように、アストンマーティンは当初からソフトタイヤを使ってマシン性能差を埋める積極策を想定したのだろう。

19周のスプリントレースで、ほぼ全車がミディアムタイヤを履いて決勝に向けたロングランを行なうなか、彼らだけがソフトを履いてデータ収集を行なったのだ。

 そういう意味でアストンマーティン・ホンダは、現状で最大限の努力をしたと言える。

 アロンソはステイアウトを続けることで、雨やセーフティカー導入をチャンスにつなげようという狙いもあった。だが、どちらも実現しなかった。

 だが、仮に雨が降ってきてピットストップを1回減らせたとしても、セーフティカーが出たタイミングでタイヤ交換を済ませられたとしても、意味はなかった。

 すでに中団グループのライバルたちは、ピットストップを終えてもなおアロンソの前でコース復帰を果たしており、つまりレース中盤までにピットストップ1回分の差をつけられていたからだ。

 キャデラックと戦い、打ち負かせたのはポジティブなことだ。日本GPでは完敗を喫したが、今回は逆転を果たせた。

 しかし、中団グループの他チームとの間には1周1秒ものパフォーマンス差がある。それは、そう簡単には縮まらない。

◆つづく>>

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