不定期連載『みんなマンガで強くなった』 周東佑京(後編)

 小さな選手が大きな相手に立ち向かい、弱かったチームが仲間とともに強くなっていく──。そんな成長物語に惹かれるのは、育成ドラフトからプロの世界へ飛び込み、球界を代表する選手へと駆け上がってきた自身の野球人生と、どこか重なる部分があるからかもしれない。

『ハイキュー!!』への愛から、侍ジャパンでの大谷翔平との交流、話題を呼んだ単独ホームスチール、そして30歳を迎えた今も抱く「まだまだ成長できる」という思いまで。周東がマンガと野球を縦横無尽に語った。

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【チームになっていく面白さ】

── 愛読書の『ハイキュー!!』で、とくに印象に残っているシーンは?

周東 孤爪研磨と日向翔陽が出会うところですね。道端に研磨が座っていて、そこに翔陽が通りかかる。あの瞬間にふたりが知り合って、そこからお互いに成長していく過程も面白いし、最初からどこか通じ合っている感じがいいじゃないですか。

 あと、合宿の話も好きですね。烏野高校って最初はめちゃくちゃ負けるじゃないですか。そのチームがどんどん強くなっていく姿がやっぱりいい。小さいけど大きな相手に立ち向かって強くなるとか、弱かったチームが強くなっていくとか、そういう成長ストーリーが好きなんですよね。

── それは、周東選手自身の野球人生にも重なるところがありそうですね。合宿といえば、ご自身も数多く経験してきました。今年はWBCに向けた侍ジャパンの事前合宿もありました。

周東 WBCの代表に選んでもらったのは前回(2023年)に続いて2度目でしたけど、まず自分の立ち位置が変わったなと思いました。

僕ももう30歳。前回は下から数えたほうが早かったけど、今回は上から数えたほうが早かった。『引っ張らなきゃ』とか、そんなふうに思ったわけじゃないですけど、若い選手が多くて。特に20代前半とかになると、逆に話しかけづらくて(笑)。

── それこそマンガの話を振ってみればよかったのでは?

周東 だって、マンガを読んでいるかわからないじゃないですか。ノリがわからない(笑)。結局、年上の人と一緒にいることが多かったですね。ホークスでもチームメイトの近藤健介さんとか。あとは西武の源田壮亮さんかな。

── 侍ジャパンも合宿が進むにつれて結束力が高まっていくものですか?

周東 そうですね。最初はちょっとよそよそしいのが、だんだん"チーム"になっていく感じはありました。やっぱり食事会は大きいかも。

普段しゃべらない人とも親睦を深められるように、くじ引きで席を決めるんですよ。だから、普段はあまり接することのないピッチャー陣のテーブルになることもあります。

 宮崎合宿の時は、めっちゃジャイアンツ勢でした(笑)。菅野智之さん(ロッキーズ)と大勢と、サポートメンバーで来ていた湯浅大。頑張ってしゃべりましたよ(笑)。名古屋でも食事会があって、その時は隣が大谷翔平さん(ドジャース)で、向かい側には宮城大弥(オリックス)がいましたね。

【単独ホームスチールの舞台裏】

── 大谷選手とは、いろいろな話をしましたか?

周東 前回のWBCの時はほとんどしゃべらなかったけど、今回はわりとしゃべりました。野球の話はほとんどしていないですね。『普段、何してんの?』って聞かれて、『たまに飲みに出たり、あとは寝ています』って答えたと思います(笑)。

── マンガの話は?

周東 だって、大谷さんも読んでいるかわからないですもん。ああ、でも大谷さんもなかなか外出できないから、読んでいるかもしれないですね。

── 周東選手自身も、育成ドラフトでプロ入りし、そこから球界を代表する選手へと駆け上がってきました。まるでマンガの主人公のような野球人生です。

今年5月10日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)で決めた単独ホームスチールも、まさに漫画のようなプレーでした。

周東 たしかにマンガっぽいですね(笑)。単独ホームスチールは最初で最後かなと思いますよ。さすがに相手チームも警戒している感じがありますから。あの時は打席が柳田(悠岐)さんで、内野が右寄りの守備シフトを敷いていました。それで三塁手もかなりベースから離れていたので、その日、三塁ベースコーチだった本多雄一コーチに「行けそうじゃないですか?」と聞いたら、「行け!」と返ってきて。思いきってスタートを切りました。

大谷翔平との食事会、衝撃のホームスチール、そして『ハイキュー!!』 周東佑京が語る「マンガのような野球人生」
盗塁王を4度獲得するなど、球界を代表するスピードスターに君臨する周東佑京 photo by Yoshihiro Koike
── ホームスチールを決めた瞬間は、どんな気持ちでしたか?

周東 気持ちよかったですね。二盗の時とは違う興奮があったし、球場の盛り上がりもすごかったですし。

── 野球を始めた小学生の頃から、一度はやってみたいプレーだった?

周東 それはなかったかな。だって、プロになるまで内野があれほど極端なシフトを敷くことがなかったので、チャレンジできるような機会もありませんでしたから。

【次に狙うマンガのようなスーパープレーは?】

── 単独ホームスチールを超えるのもなかなか難しそうですが、次はどんな"マンガのようなスーパープレー"をしてみたいですか?

周東 普通にランニングホームランですね。

── オープン戦で一度記録していますよね。2020年3月15日の広島戦(マツダスタジアム)でした。

周東 あの時はセンターオーバーの打球を野手がグラブではじいて、ボールが転がったおかげでした。そうじゃなくて、普通に外野の間を抜けていった打球で、ランニングホームランを決めたいですね。

※9月8日の日本ハム戦でフェンスに直撃し、高く跳ねる間にホームインするというランニングホームランを記録するも、試合後に目指しているスーパープレーとは違うとコメント

── 自信は?

周東 やれそうな気はしていますよ。

── ただ、30歳を迎えました。ここからは年齢との闘いも出てくるのでは?

周東 でも、スピードは落ちていないし、動けない感じもない。若い時に想像していた30歳よりも、動けている感じはします。僕にはまだまだ成長の余地がありますよ。僕、大器晩成型だと思っているので。

── 若い頃は「(ジュリスベル・)グラシアルになりたい」と話していました。2019年の日本シリーズMVPに輝き、現在もメキシコで現役を続けています。

周東 常にストイックで、鍛え上げられた肉体がすごくて、アグレッシブな打撃をする。それにけっこう守れるし、しっかり走るし......スーパーマンでした。やっぱり今も目標ですよ。

── これからもマンガの主人公のように、プロ野球界で輝き続ける周東選手を楽しみにしています。

周東 いやいや、主役じゃなくていいですよ(笑)。派手な脇役くらいで。主役を食うまではいかないけど、影山(飛雄)みたいなキャラでいきます。

── 研磨も影山もセッター。いわばチームの司令塔ですね。

周東 そういうところで存在感を出していきたいですね。


周東佑京(しゅうとう・うきょう)/1996年2月10日、群馬県出身。東京農大二高から東京農業大北海道オホーツクを経て、2017年育成ドラフト2位で福岡ソフトバンクホークスに入団。

19年に支配下登録され、俊足を武器に一軍に定着した。20年に50盗塁を記録して初の盗塁王を獲得。23年から25年にも3年連続で盗塁王に輝くなど、球界を代表するスピードスターとして活躍。23年のWBCでは日本代表に選出され、準決勝のメキシコ戦で代走から劇的なサヨナラのホームを踏むなど、世界一に貢献した。24、25年にはベストナイン、ゴールデン・グラブ賞を2年連続で受賞。

田尻耕太郎●文 text by Kotaro Tajiri

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