スターダム 吏南インタビュー 後編

(前編:スターダムの三姉妹レスラー・吏南が振り返る、小学6年生デビュー後に味わった屈辱 木村花に救われて「目指す道が見えた」>>)

 5★STAR GP 2026で史上最年少優勝を果たした吏南(りな)。小学6年生でデビューし、長く「三姉妹の次女」として見られてきた彼女は、今やスターダムの頂点を争う存在へと成長した。

 その歩みは決して順風満帆ではなかった。フューチャー・オブ・スターダム王座での経験、海外遠征で受けた刺激、リーグ戦での苦闘、スターダム生え抜きのスターライト・キッドとの優勝決定戦――。数々の経験を糧に、吏南は次にどんな景色を見据えているのか。

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【フューチャー王座の価値を上げたという自負】

――2023年にはフューチャー・オブ・スターダム王座を獲得し、1年5カ月にわたる長期政権を築きました。

吏南:フューチャーを獲るまでが本当に長かったです。あとから来た選手にどんどん抜かれて、負けることも多かった。自分のなかでは「もっとできるのに」と思っていました。

 今なら、「まだ若かったからしかたない部分もあった」と理解できます。でも当時は自分なりにプロ意識を持ってやっていたし、チャンスが少ないことが悔しかった。(デビューから)5年以上、何度も「もう辞めてやろう」と思いました。

――王者になってからは、"見せ方"も考えていたそうですね。

吏南:学校の授業中も、プロレスのことばかり考えていました(笑)。試合はもちろん、試合後に何をするのか、若手興行「NEW BLOOD」でどうすればお客さんに会場へ来てもらえるのかなど、24時間プロレスのことしか頭になかった。

フューチャー王座は「若手のベルト」と思われがちですが、「今までで一番盛り上げたのは私だ」と胸を張って言えるくらい頑張ったつもりです。

――特にこだわったのはどんな点ですか?

吏南:「マンネリにならないこと」ですね。防衛を重ねれば、お客さんも慣れていく。だからこそ難しかった。「どのようにすれば前回と差別化できるか」「お客さんが常に熱狂してくれるためには何が必要か」などを考えました。スターダム内でフューチャー王座の価値を上げた時期でもあり、自分もそのベルトとともに成長させてもらいました。

――この頃、マイクアピールの存在感も増しましたね。

吏南:マイクで何を伝えるかは、いつもすごく考えます。試合後は会場のお客さんの表情を見て、どんな気持ちでいるのかを想像しながら言葉を選ぶようにしています。

 自分の試合映像も何度も見返すんですよ。気に入った試合なら10回くらい、30回、40回見ることもあります。もちろん練習して身体を鍛えることは大切ですが、いろいろな試合を鑑賞することも同じくらい大事だと思っています。

自分の試合も含め、スターダムの試合は誰よりも見ている自信があります。『5★STAR GP 2026』も全部見返しました。自分を客観的に見て、「このマイクはいらなかった」「あれは言って正解だった」と振り返るんです。

【海外で実感したハングリーさ】

――今年6月からの海外遠征も、大きな経験になりましたか?

吏南:そうですね。アメリカとメキシコに約1カ月行きましたが、日本とはまったく違いました。向こうのお客さんは、プロレスをよりエンターテインメントとして見ている印象です。「このスターは何を見せてくれるんだ」という期待を感じます。

 スターダムは、欠場しなければ所属選手全員に試合が組まれます。それはすごく恵まれた環境ですが、海外では所属していても試合が組まれない選手がいる。だからこそ、海外の選手のアピールや見せ方、ハングリー精神には学ぶところがありました。

 日本の選手が負けているとは思いません。ただ、ひとつひとつの見せ方では、まだ自分も追いつけていないと感じました。

――将来的に海外挑戦は考えていますか?

吏南:「プロレス団体としてスターダムをトップに持っていくこと」が今の目標です。

海外に挑戦する可能性もゼロではないけど、現実的に考える段階ではありません。東京ドームを満員にするような選手になった時に、また違う景色が見えるかもしれません。

 とにかく、プロレス以外にやりたいことがないんです。自分の人生の半分以上がスターダムですから。8歳からプロレスを始めて、12月には20歳になります。だからこそ、スターダムで上へ行きたいですね。

【5★STAR GPで苦しかった2試合】

――5★STAR GPでは、ブロック戦から厳しい試合が続きました。最も苦しかった一戦は?

吏南:2試合あります。まずは海外遠征から帰ってきて、5★STAR GP初戦の玖麗さやか戦です。私は5★STARのために帰ってきたと言ってもいいくらいの気持ちだったし、自信もありました。それなのに、負けた。「なんで勝てないんだろう」「私は何をしていたんだろう」と思いましたね。試合映像を何度も見返しましたが、まだ答えは出ていません。

ただ、あの負けがあったからこそ、「もっとやらなければいけない」と思えました。

 もうひとつは、公式戦最後のAZM戦です。「負けたら終わり」という状況で、しかもAZMには、去年の5★STARで2連敗している。自分にとっては"ラスボス"のような相手でした。AZMに勝たなければ、どれだけ勝ち点を積み上げても前に進めない。去年越えられなかった壁を越えられた時に、「1年前の自分とは違う」と確信しました。

 その勢いのまま、決勝トーナメント1回戦では山下りなに勝利しました。次に控えていたのは同門H.A.T.E.の小波。とにかく8月18日の後楽園大会で組まれた2試合は、必死に勝ちに行きました。

――8.23両国大会、RED STARS代表決定戦の相手は、リーグ戦で15分時間切れ引き分けだった舞華選手でした。

吏南:両国国技館で舞華とやると決まった時から、「ハイドレンジア(グラウンド式卍固め)」で勝つことしか考えていませんでした。私よりも身体が大きくてパワーも桁違いな舞華。

どうすれば自分が勝てるのかを考えた時に、出てきた答えはハイドレンジアだった。自分で言うのもなんですけど、実力を伴った作戦勝ちだったと思います。

【スターライト・キッドを追い越して見えた景色】

――5★STARの優勝決定戦の相手は、スターダム生え抜きのスターライト・キッド選手でした。

吏南:小さい頃から一緒にやってきた相手と、両国のメインイベントに立つ。決まった時はうれしさよりも、「やってやるしかない」という気持ちのほうが強かったです。昨年、宇都宮大会でスターライト・キッドに負けましたが、高校を卒業して完全にプロレスラーとして生きていくなかで、自分のレベルを証明できた試合だと思います。負けたけど、「トップに行く日は遠くない」と実感できた。

「自分が今どの位置にいて、トップとの差がどれくらいあるのか」もわかりました。その手応えを、今回の優勝で確信に変えることができた。最後は本当に気持ちで勝ちましたね。私は同期(7期生)のなかで、最初は実績もキャリアも一番下でした。ドラフト会議でも、最初に指名されたのはスターライト・キッドで、私は8巡目。

比べられることすらなかった私が、5★STAR優勝で追い越したと思っています。

――両国の景色はいかがでしたか?

吏南:忘れられないです。一番強かったのは、「ほら見たか」という気持ちでした。悔しかったことが多すぎたので。でも、そこで満足はしていません。ここからトップを獲りにいきます。

 史上最年少優勝という記録も、すごくうれしい。長く続けてきたからこそ、最年少で誇れるものがほしかった。スターダムひと筋で8年やって、19歳7カ月でスターダムの歴史に名前を刻めたことは大きいです。

【これからのスターダムは、私についてこい】

――次に見据えるのは、ワールド・オブ・スターダム王座の"赤いベルト"でしょうか。

吏南:それはどうかな~。5★STARを獲って頂点に立った以上、今の自分が見せたい景色を作るためにはどのベルトが必要なのか。赤と白(ワンダー・オブ・スターダム王座)のどちらが上か下か、という考え方はあまりしたくありません。

 私が魅せたいのはベルトを獲った姿ではなく、その先の私が作る景色。挑戦するタイミングは考えてます。5★STARを優勝した自分なら、何を言ってもいいと思ってますから。最高の舞台で挑戦したいです。それまでは、全員手のひらで転がしていきますよ。楽しみにしててください。

――5★STARを制したあと、「スターダムは上谷だけじゃない」という発言もありました。

吏南:世間的にも、プロレス界のなかでも「スターダムといえば上谷沙弥」という見られ方を変えたい気持ちがあります。上谷がこれまでやってきたことのすごさや偉大さも理解しています。彼女にしかできないこともある。でも、私にしかできないこともある。上谷を本当の意味で脅かす存在になりたいですね。

 それと、「スターダムが最強で一番だ」と示すために他団体にも出ていきたい。他団体に出ること自体が正義だとは思いませんが、スターダムの強さを知らしめるためには必要です。

――ファンの方へメッセージをお願いします。

吏南:これからのスターダムは、私についてこいって感じです。スターダムの"今"は私であり、スターダムの"未来"も私です。

【プロフィール】

吏南(りな)

12月28日、栃木県出身。スターダム所属。姉・羽南、双子の妹・妃南とともにプロレスラーとして活動する三姉妹の次女で、2018年10月に妃南との試合でデビューした。柔道経験を生かした払い腰、木村花さんから受け継いだハイドレンジアを武器に成長。2023年にはフューチャー・オブ・スターダム王座を獲得し、1年5カ月にわたって王座を保持した。2026年、19歳7カ月で5★STAR GPを初制覇し、史上最年少優勝記録を樹立。

大楽聡詞●取材・文 text by Satoshi Dairaku

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