この記事をまとめると
■今ではリトラクタブルハードトップを装備するクルマはほとんどない■昔流行った理由のひとつに「オープンカーでも安心感がある」というのがあった
■今ではキャンバストップやソフトトップが主流だ
「リトラクタブルハードトップ」という機構を覚えているか?
電動リトラクタブルのハードトップを備えたオープンカーは、今やダイハツ・コペンぐらいか。2000年代から10年代にかけて、スポーツカー系だけでなく4座のオープンでもけっこう隆盛したのに、どこにいってしまったのだろう?
メルセデス・ベンツの初代SLKの大ヒットが先鞭となった電動リトラクタブル・ハードトップを、多くの自動車メーカーが止めてしまった理由は、一部の2座スポーツカーを除けばコンバーチブル・ボディをラインアップするのが、そもそもコスト的に難しくなってしまったためだ。以前ならVWイオスとかプジョー308CC、207CCといった、ゴルフ5や初代308、207といったハッチバックと共通プラットフォームのオープンカーがあった。
だがリーマンショック以降、プラットフォームの共通化と最適化が進められ、そこまでボディ・バリエーションを揃えることがコスト的に難しくなってしまった。加えてCO2排出量過多でメーカーに罰金ペナルティが生じる欧州CAFE規制がために、重量の嵩む電動リトラクタブルハードトップはさらに難しい選択肢になってしまった。
リトラクタブルハードトップに未来はあるか?
とはいえリトラクタブルのハードトップの流行こそが一時的で、元々存在した、より簡素なソフトトップに戻っただけ、という見方もできる。大体、電動リトラクタブル・ハードトップが流行った頃は、まだインフォテイメント・システムどころか車載ナビがダッシュボードに一体化していない時代で、仕向け地によっては1DIN・2DINといったカーオーディオやナビが盗難に遭いやすく、オープンカーでもクローズ時の安心感が求められていた。
だから大衆車クラスにまで電動リトラクタブル・ハードトップは普及したし、BMWの3シリーズやボルボC70など「ちょっと違うんですよ」的なブルジョワ・クラスでは、密閉できるがゆえの静粛性やパーソナル感が強調されていた。
ただし2座のスポーツカーと同じく、販売面で数が出づらいオープンカーは、ほとんどのメーカーにとって採算の見込みづらいモデルとなりつつある。もっといえばドロップヘッドクーペの昔から屋根が無かった2座のスポーツカーとは別に、優雅なソフトトップのオープンをニューモデルとしてラインアップし続けるメーカーは、ある程度の利ザヤを稼がせてくれる上顧客を一定数以上、抱えているプレミアム・ブランドといえる。
ロールスにベントレーといった雲上ブランドが、そうであることに驚きはないが、現行で4座オープンカーをラインアップできているプレミアムなメーカーは限られる。Cクラス、Eクラス、Sクラスを擁するメルセデス・ベンツ、6シリーズ・カブリオレこそカタログ落ちしたが2シリーズから4シリーズ、8シリーズでズラリとカブリオレを揃えるBMW、そしてミニ・コンバーチブルぐらいだ。
いずれ今どきのソフトトップは、内張りが厚くなって遮音性や耐候性も高まり、デフォッガー入りのリアガラスもほぼ標準化している。閉めたままの高速走行や雨の日も、昔のそれとは比べものにならないほど快適になった。カブリオレほど開放的ではないが、フィアット500Cやルノー・トゥインゴ・キャンバストップも今やクラシカルな存在で、貴重な入門オープンカーといえるのではないか。

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