製造業を中心とする企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するビジネスエンジニアリング<4828>は2026年5月、産業用スマートグラスや遠隔支援ソフトウエアの開発・提供を手がけるフィールドクロス(東京都千代田区)を完全子会社化した。
成長投資の一環として、新規事業の一つであるフィールドDX支援(製造現場のデジタル化支援)を補強するのが狙いで、今後、両社の知見や技術を融合させ、現場に特化した新たなソリューションの開発・提供を目指す。
国内の工場デジタル化市場は2030年度(2030年4月~2031年3月)に、2024年度(2024年4月~2025年3月)に比べ約18%の拡大が予測されており、今回の案件は製造業DX関連の技術を取り込むM&Aが広がる可能性を示す動きといえそうだ。
計画の上乗せ要因に
富士経済が2025年10月に発表した「2025年版 DIGITAL FACTORY関連市場の実態と将来展望」によると、日本では熟練工の退職による技術継承や人手不足などの課題に対応するため、製造業のDX化の取り組みが広がっている。
矢野経済研究所が2025年4月に発表した「工場デジタル化市場に関する調査」によると、国内の工場デジタル化市場はIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、クラウドの活用拡大を背景に成長が続いており、市場規模は2024年度の1兆8420億円から、2030年度には2兆1800億円(2024年度比約18.3%増)に拡大すると予測されている。
ビジネスエンジニアリングは2025年5月に公表した成長戦略「BE 2030」で、2031年3月期に売上高330億円、営業利益100億円を目標に掲げた。
同計画の売上高目標には、M&Aなどによるインオーガニック成長(外部の資源を活用した成長)の収益は含めていない。
一方で、同社は成長投資として製品開発とM&Aを掲げており、M&Aは計画の上乗せ要因となる可能性がある。
M&Aの基本方針では、同社事業の拡大と持続的成長への寄与を掲げる。
事業別では、システムインテグレーション事業(顧客企業の業務システムの構築・導入支援)で、顧客基盤を広げ、取り扱うソリューション(業務課題に対応するIT製品・サービス)を増やす。
ライセンス事業とグローバル事業では、販路の拡大と商品ラインナップの拡充を進める。
新規事業では、新技術や新たな知見、ノウハウの獲得を目指す計画だ。
2026年3月期から2031年3月期までに、製品開発とM&Aを含む成長投資に320億円を配分するとしている。
現場データの収集・活用機能を強化
フィールドクロスの完全子会社化は、この新規事業領域のM&A方針に沿った案件といえる。
ビジネスエンジニアリングは、IT戦略の立案からシステムの構築、導入、運用までを支えるほか、自社開発の製造業向けパッケージソフトウエア「mcframe」の販売・導入を手がける。
これまでERP(統合基幹業務システム)やサプライチェーン(調達から生産、物流、販売までの供給網管理)、IoTなどで蓄積されたデータを活用し、システムの高度化や製造現場の改善を支援してきた。
新規事業では、フィールドDX支援を成長戦略上の重点領域の一つに位置付けている。
一方、フィールドクロスは産業用スマートグラスと遠隔支援ソフトウエアを手がける。
スマートグラスは、視界にデジタル情報を映し出せるメガネ型端末で、作業者の視点映像や作業データを取得し、熟練者による遠隔支援、作業手順の共有、安全教育、技能伝承などに活用できる。
ビジネスエンジニアリングは2026年3月に、現場の映像データを収集・活用し技能伝承や安全教育に役立てる「orishia」を立ち上げた。
こうした新規事業に、フィールドクロスのハードウエアとソフトウエアの開発力を取り込むことで、現場データの収集・活用機能を強化し、現場に特化したソリューションの開発につなげる。
製造業支援と開発力に強み
ビジネスエンジニアリングは、業務システムの構築や導入支援、コンサルティングなどのソリューション部門が、売上高の64%ほどを占める主力事業で、自社開発パッケージソフトウエアなどを手がけるプロダクト部門が同34%ほど、導入システムの運用、保守サービスを担うシステムサポートが同2%ほどとなっている。
同社は、製造業のIT支援で培った実績、自社プロダクトの企画・開発力、顧客との信頼関係、グローバル展開の実績を自社の強みとして挙げる。
2026年3月期は売上高244億4200万円(前年度比17.6%増)、営業利益64億1100万円(同37.1%増)だった。
成長戦略で掲げる2031年3月期の売上高330億円、営業利益100億円の目標は、同社の強みを生かしたオーガニック成長(内部の経営資源を活用した成長)で達成を目指す計画で、上乗せ要因となるM&Aで、どこまで成長を加速できるかが焦点となる。
文:M&A Online記者 松本亮一
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