4月13日(土)、新国立劇場『デカローグ1~10』の初日の幕が開いた。原作は、ポーランドの巨匠クシシュトフ・キェシロフスキ監督による映画。
1987~88年に撮影され、1980年代のワルシャワの団地に住まうさまざまな人々の姿をオムニバス形式で描き出す『デカローグ』。ポーランド映画の金字塔ともいわれる作品だけに、演劇ファンのみならず映画ファンの関心も集めている。淡々とした語り口で展開するキェシロフスキ作品が、舞台上にどのように立ち上がるのか。期待を募らせ劇場に足を踏み入れると、どことなく懐かしい空間が視界に飛び込んでくる。
『デカローグ1』「ある運命に関する物語」より、右から)ノゾエ征爾、石井 舜、高橋惠子(撮影:宮川舞子)
プログラムAの前半、『デカローグ1』は「ある運命に関する物語」。
父子に優しく寄り添うクシシュトフの姉、イレナを演じ強い印象を残したのは高橋惠子。信心深く、パヴェウを教会に通わせようとするも、無神論者のクシシュトフとは意見が合わない。十戒の最初の戒め「わたしのほかに神があってはならない」が、重々しくのしかかってくるエピソード。「死ぬってどういうこと?」と父に問うパヴェウの声が、いつまでも耳に残る。
『デカローグ3』「あるクリスマス・イヴに関する物語」より、右から)千葉哲也、小島聖(撮影:宮川舞子)
団地の片隅から、主人公たちの生活を覗き見ているような気分
プログラムB『デカローグ2』は、「ある選択に関する物語」。バイオリニストのドロタ(前田亜季)は、同じ団地に住む医長(益岡徹)を訪ね、重い病を患い入院している夫アンジェイ(坂本慶介)の余命を知りたいという。ドロタは愛人の男の子供を妊娠していた──。常に苛立ちを隠せずにいる彼女の姿が痛々しい。
『デカローグ2』「ある選択に関する物語」より、右から)前田亜季、益岡徹(撮影:宮川舞子)
『デカローグ4』「ある父と娘に関する物語」は、近藤芳正演じる父ミハウと、夏子演じる娘のアンカの物語。母はアンカが生まれた時に亡くなっているが、快活で魅力的なアンカと優しい父は、まるで友達、ともすると恋人同士のように仲が良い。
『デカローグ4』「ある父と娘に関する物語」より、右から)近藤芳正、夏子(撮影:宮川舞子)
必要以上に畳み掛けるセリフの応酬も、仰々しい場面転換もない舞台。それだけに、次々と登場する俳優たちの存在感が、ぐっと胸に迫る。演じるのは皆、普通の団地の普通の人たち。
公演は5月6日(月・休)まで。
取材・文:加藤智子
<公演情報>
舞台『デカローグ 1~10』
原作:クシシュトフ・キェシロフスキ/クシシュトフ・ピェシェヴィチ
翻訳:久山宏一
上演台本:須貝英
演出:小川絵梨子/上村聡史
2024年4月13日(土)~7月15日(月・祝)
会場:東京・新国立劇場 小劇場
●[デカローグ1~4(プログラムA&B交互上演)]
2024年4月13日(土)~5月6日(月・休)
●[デカローグ5~6(プログラムC)]
2024年5月18日(土)~6月2日(日)
●[デカローグ7~10(プログラムD&E 交互上演)]
2024年6月22日(土)~7月15日(月・祝)
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2449609(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2449609&afid=P66)
公式サイト:
https://www.nntt.jac.go.jp/play/dekalog/