アメリカとイスラエルのイラン攻撃を契機とした、ナフサ不足が国民の生活を脅かしている。TOTOはシステムバスとユニットバスの新規受注を一時停止。
建築資材を扱う会社が20~50%もの値上げを発表
ナフサは原油を精製する段階で生まれる原料で、合成樹脂製品などのもとになるものだ。日本の石化向けナフサ調達は、2024年時点で中東44.6%、国産39.4%、その他16.0%であり、輸入ナフサに限ると中東比率は73.6%に達する。ホルムズ海峡封鎖の影響は大きい。
住宅資材関連メーカーは、次々と値上げを発表している。
積水化学は「雨とい製品全般およびとい関連製品、波板」を20%以上、「カラーパイプ本体」を30%以上引き上げる方針を発表した。防水関連の資材を扱う田島ルーフィングは、防水材料類を10~30%程度、ベランダ防水材を20~50%程度引き上げると公表した。カネカは断熱材「カネライトフォーム」を4月1日の出荷分からすでに40%値上げした。
いずれの会社も、原材料価格の高騰が自助努力ではとても吸収しきれないレベルに達していることを理由に挙げている。
市場では、資材高騰の住宅価格への転嫁を懸念する見方が広がっている。日本経済新聞社は、旭化成ホームズが戸建住宅の販売価格について値上げを予定していると報じている。
木造住宅の原価率は一般的に60~70%。積水ハウスのような大手でも戸建住宅事業の営業利益率は10%程度だ。利益率が高いビジネスというわけでもなく、建築資材が20~50%も値上げすることになれば、価格転嫁が視野に入るのも当然だ。
建築関連の小規模事業者には甚大な被害が…
建築業界では、小規模事業者や個人事業主からすでに悲鳴が聞こえている。
「塗装業などの一人親方の場合、塗装用シンナーなどを備蓄する人は多くありません。そういう職人は、フリマサイトで高額で転売されている材料を購入することになります」こう語るのは都内で注文住宅を手がける中堅ハウスメーカーの施工管理責任者だ。
フリマサイトでは、塗装用シンナーの一斗缶が一時2万円を超える金額で取引されていた。通常は数千円で売られているものである。転売ヤーが価格を吊り上げているのだ。シンナーのような危険物は宅配業者に配送を断られるため、通常は現地に赴いて引き取らなければならない。なぜ、高額かつ面倒な方法で手にしようとするのか。
先の施工管理責任者によれば、資材が不足している中で問屋に掛け合っても、普段取引のない事業者に資材を販売することは無いに等しいという。一部の職人たちはあり得ないような条件であっても何とか資材を手にし、工事を終わらせてキャッシュを得なければ生き延びることができないのだ。
しかも、跳ね上がった資材費を施主に請求することなどできるはずもなく、事業者が負担することになる。
このような状態が続くと、工務店は安全性を確保するため、在庫を持っている規模の大きい事業者に発注する傾向が強くなる。小規模事業者の存続が危ぶまれるのだ。
リフォームを手掛ける会社への影響も甚大だ。規模の小さいリフォーム事業者は、浴室やトイレ単体の工事を請け負うことが多い。規模が小さいために在庫はなく、仕事が入ればメーカーや問屋に発注するというのが一般的だ。しかし、肝心のシステムバスや便器の納期がわからない。これでは、営業がかけられなくなる。
ナフサ不足は建設業界の淘汰を促す可能性もあるのだ。
高市首相は4月5日に自身のXでナフサについて、「少なくとも国内需要4ヶ月分を確保しています。」と投稿。
これは4月4日のTBS「報道特集」にて、ホルムズ海峡封鎖によるナフサ不足が続けば、日本は6月に詰むという専門家の指摘を受けたものだ。
首相はこの報道に反論したわけだが、ただし、企業のサプライチェーンが海外拠点を含めて広範にわたる点は、政府説明だけでは見えにくい論点として残る。TOTOはベトナムやタイ、インド、LIXILもベトナムに生産拠点がある。現地の材料不足も深刻なのだ。
東南アジア諸国は日本に比べて原油の備蓄量が少ない。政府は東南アジア各国に対して100億ドル(1.6兆円)の金融支援を行なう方針を4月15日に固めた。しかし、TOTOなど大手メーカーの受注停止の影響が出てしまった後での対応となってしまった。
東京23区の戸建住宅の平均額は9000万円を突破
住宅価格については別の懸念もある。戸建住宅は需給面で価格が押し上げられる可能性があるのだ。
東京カンテイによると、東京23区の2026年3月の新築小規模一戸建住宅平均価格は、9256万円だった。前年同月比で16.6%(1319万円)も上昇している。
東京23区では、2025年の新築分譲マンションの平均価格が前年より2割高い1.3億円となった。建築費高騰の煽りを受けたものだ。1億円を超えたのは3年連続。ここ数年でマンション需要が拡大、価格は上昇基調にあった。そこにコスト高が加わったことで、2割も上昇してしまったのだ。
ここまでマンションの価格が高騰すると、購入検討者は戸建住宅の取得も視野に入りやすい。資金力のある人が豪華な内装と高い機能性を兼ね備えた高級物件を探し始めているのだ。都心の戸建はラグジュアリーへと傾いて強気な価格の物件が増えた。
マンション購入を諦め、郊外の戸建住宅を取得する動きも加速しているようだ。首都圏の2026年3月の新築小規模一戸建住宅平均価格は5891万円で、前年同月比で8.2%、東京都で12.9%の増加だ。
戸建住宅は資材高と人材不足による建築コスト負担増に加え、需要が膨らんで価格上昇に拍車がかかる恐れがあるのだ。
悪材料はまだある。住宅ローン金利の上昇である。2026年4月から大手銀行の変動型の住宅ローン金利が上がっているのだ。2025年12月の日本銀行の利上げを受け、みずほ銀行や三井住友信託銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行などが変動型の基準金利を引き上げている。
住宅の高額な購入費用は巨額の住宅ローンに形を変え、借入にかかる金利が上昇して生活費をさらに圧迫するというわけだ。
混乱を招く前の早期解決に期待したい。
取材・文/不破聡

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