「通りすがりの会社員が、ネクタイをほどいて踊り出した」――その光景を目にした瞬間、人生の歯車が大きく動いた。東京で働くごく普通の会社員だった女性は、わずか3カ月後、カリブ海の島国トリニダード・トバゴへと渡る決断をする。
『世界へ飛び出た100人の日本人』より、一部抜粋、再構成してお届けする。
「騙された」つもりで行ってみたカーニバル
プロフィール
トリニダード・トバゴ〈2009年から居住〉
旅行・撮影コーディネーター 森本英代さん
1976年生まれ、女性、香川県→ポート・オブ・スペイン
――もともとカリブ海に興味があったんですか?
はい。10代のころからレゲエが好きで、イベントプロモーターをやったりレゲエマガジンに原稿を書いたり、カリブ音楽に携わっていました。でも、当時はそれで食べていくのは難しく、27歳のときにリクルートに入社して働きはじめました。
――トリニダード・トバゴとはどう出会ったのですか?
リクルートで編集者をやっていたころに友達から「騙されたと思って、一回トリニダードのカーニバルに行こうよ」と誘われたのがきっかけですね。
トリニダードのカーニバルは「世界三大カーニバル」のひとつとしてカリブ音楽好きの間では有名でした(あとの二つはブラジルとイタリア)。当時はカーニバル自体に興味があったわけではなかったので、大して期待もせずに仕事を調整して遊びに行くことにしたんです。
――その結果、どうでした?
毎年訪れるほどハマってしまいました。何万人もが朝から晩まで踊っていて、音楽の生命力があふれる場所でした。
日本の会社員を路上で踊らせる音楽
――毎年訪れていた国に移住しようと思ったきっかけは?
東京で、トリニダードのスティールバンド(ドラム缶からつくられた打楽器スティールパンを中心にしたバンド)のストリートライブを目の当たりにしたときですね。
トリニダードからレネゲイズというバンドが来ていて、2009年の東京国際フォーラムの会場前で無料のストリートライブをやっていました。そしたら、そこを通りかかったスーツ姿の会社員たちが、ネクタイをほどいて踊り出したんですよ!それを見て、「やっぱりトリニダードの音楽の力はすごい!」って実感したんです。
当時、東京での忙しい生活で疲れていた私も、一瞬でトリニダードにトリップした感覚になり、「もう、これは住むしかないな」と思い立ち、3カ月後にはトリニダードに渡っていました。当時は「合わなかったら日本に帰ってくればいい」くらいの感覚でしたね。
――結果的に16年以上住んでいますが、トリニダードの魅力とはなんでしょうか?
音楽がくれる解放感とポジティブなエネルギーですね。トリニダードの音楽は、基本的にパレードで人を前進させるためにつくられています。低音に背中を押されるような感じで、歩くうちに自然と笑顔でジャンプしてしまうくらいです。
こうした音楽が日常に流れる、ポジティブでピースフルな空間にずっと身を置いておきたいと思うようになったんですよね。
旧統治国によって異なるカリブ海の国々
――現在のお仕事について教えてください。
カリブ海全域の29カ所で旅行・撮影コーディネーターをしています。個人や会社からの依頼に合わせてプランを提案したり、場合によっては同行もします。総じて、日本にカリブ海のことを伝える仕事をしているって感じですね。
――森本さん自身が感じるカリブ海の魅力とはなんでしょう?
カリブ海には、さまざまな国があります。私は、各国のその「違い」こそが、とっても興味深いと思っています。
たとえば、旧統治国の違いです。スペイン領だったキューバやドミニカ共和国は、大きな都市がつくられて、そこにヨーロッパの移民が大量に入植したので、いまでも立派な旧市街が残っています。
一方、トリニダードはイギリス領でしたが、ヨーロッパ系の移民は少なく、むしろインド系移民が多いので、インド料理が国民食です。また、同じく旧イギリス領のアンティグア・バーブーダにはサトウキビ農園が多かったので風車の跡が至る所にあったり、オランダ自治領の島には塩田があったり、街並みや文化にも違いがあっておもしろいんです。
――トリニダードにインド系の人が多いのは意外でした。
割合で言うと、いまはアフリカ系4割、インド系4割くらいです。このバランスがよかったのか、トリニダードは歴史的にも民族抗争が少なく、共生意識の強い国だと感じていますね。
「無礼講」は礼儀重視の裏返し
――生活するなかで驚いたことはありましたか?
意外かもしれませんが、気遣いや礼儀作法が大切にされています。役所などの行政施設には短パンやサンダル、ノースリーブでは入れませんし、多様な人種と宗教の人が共存しているので、互いに気を遣い合う場面も多いです。小さな島の中ですから噂はすぐに広まるし、ある意味抑制的な社会です。
なので、トリニダード人にとってカーニバルは「無礼講のお祭り」なんです。礼儀作法や気遣いが大事な点は日本と似ていますが、カーニバルなど、日々のストレスを発散する〝ガス抜き〟の場は日本よりも多いと思います。
――意外でした! そうなると、ひょっとしたら日本人とカーニバルの相性はいいのかもしれませんね……。
スティールバンドの演奏で踊り出す日本の会社員がいい例ですよね。カーニバル期間には「ジュベー」という泥を塗り合うパレードがあって、初参加する日本人は最初は戸惑っているんですが、そのうち見ず知らずの人々と無邪気に泥をかけ合いはじめますよ。
日本人も自分の殻を破り、自由と開放感を味わえるのがトリニダードのカーニバルです。気になった人はぜひ一度、騙されたと思って遊びに来てください!
文/おか けいじゅん
写真提供/森本英代さん
『世界へ飛び出た100人の日本人』(集英社インターナショナル)
おか けいじゅん

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