「あの発言が原因じゃない」守田英正がW杯落選…森保監督が最後まで消せなかった“ある違和感”
「あの発言が原因じゃない」守田英正がW杯落選…森保監督が最後まで消せなかった“ある違和感”

サッカーW杯が約1ヶ月後に迫る中、15日に日本代表メンバーが発表された。南野、三苫といった主力を怪我で欠く森保ジャパンで選外となったのが、代表で不動のスタメンだった守田英正だ。守田は今季、所属チーム・スポルティングが欧州チャンピオンズリーグ(CL)でベスト8に進出するなど好調を取り戻したにも関わらず選外となった。

 

SNS上では、「2024年アジアカップで監督批判したから外されたのでは?」と物議をかもしているが、日本代表を取材し続けるジャーナリスト・ミムラユウスケ氏は、決してそんな短絡的な理由からではないという。ではなぜ選外なのか。その理由を解説する。

2024年アジアカップ敗退後のあの一言

“あの一件”をもって守田英正を外したという意見はあまりに短絡的である。まるで20巻完結の漫画を2巻まで読んで、結末の真相を語るようなものだ。

6月から始まる北中米W杯のメンバーに守田英正が入らなかったのは驚きをもって受け止められた。同時に、こんな意見が多く聞かれる。

「2024年2月にアジアカップのベスト8で敗退した直後の守田の発言が監督批判であり、それを最終的に許せなかった森保一監督が守田を選ばなかった」

なお、その発言の要旨とは以下の通りだ。

「どうすれば良かったのかはハッキリ分からない。考えすぎてパンクというか、もっとアドバイスとか、外からこうした方がいいとか、チームとしてこういうことを徹底しようとかが欲しい」

そもそも、守田の発言は、チームを良くするためにどうすればいいのかを記者から聞かれたときに返したものに過ぎない。確かに結果として、チームを批判するように聞こえたのは事実だ。ただ、この件については後に監督と守田がひざを突き合わせて話し合い、解決している。

それだけではない。

本記事では深くは語らないが、「こんな行動をしたからには、もう二度と代表に呼ばない」と森保監督が判断しても不思議ではないような、規律違反と呼べる行動をした選手が森保監督の最初の任期である2022年W杯の前にもいたはいた。

ただ、一度代表から外した上で、その選手が所属チームで良いパフォーマンスを見せれば声をかけた。それが森保流だ。

実際、“規律違反”を犯した過去を経て、今も日本代表に欠かせない存在としてチームのために汗を流している選手もいる。

森保監督と守田の共通点

もっとも、あのアジアカップ後も、森保監督が守田の言動を監視し続けていたのは事実だ。

例えば、2024年6月のエディオンピースウィング広島での試合後、取材エリアの最後列で筆者が守田に話を聞いてたときのこと。スタジアムの出口へと向かう森保監督がその背後のエリアに来たとき、一瞬歩くスピードを落とし、守田の背中を凝視した。その種の観察は森保監督の得意とするところで、例をあげればキリがない。

蛇足ながら、守田本人の名誉のためにことわっておくと、あのときは「アジアカップの後から、森保さんが『自分の意見をどんどん言っていいよ』と言ってくれているんですよ。森保さんには感謝していますし、懐の深さを感じます」と話していた。

他にも、森保監督が守田をリトマス試験紙にかけるようなイベントはあった。

2024年秋から始まったW杯最終予選では全ての試合前日記者会見にキャプテンの遠藤航を出席させる方針をとった(同年1月からのアジアカップではキャプテンではなく、異なる選手を順番に出席させていたのだが、それが変わった)。

ただ、遠藤が体調不良でメンバーから外れたオーストラリア戦前日の公式記者会見だけは、翌日に代行でキャプテンを任せる守田を同席させた。守田がどんな発言をするかをチェックする格好の舞台だった。

ただ、そこでは記者の的外れな質問が飛んだときに2人が目を合わせるシーンもあったし、誰もがキャプテンを務めるのにふさわしいと思うようなメッセージを守田は発している。

「僕は森保さんが就任された1年目から招集していただいていますが……これは僕が調子いいから(言うの)ではなく、チーム力は今が一番良いのかなと思います。ただ完成ではない。今後もっとよくなっていくと思うし、関係という部分においてもよりいいものになっていくので、期待していただければ」

また、守田と森保監督の考えには似ている部分もある。

森保監督は指揮官として決定を下すときに、以下の2つの基準に照らし合わせることを明言している。

・次の試合に勝つために有効かどうか
・日本サッカーの将来のためになるかどうか

その前提をふまえて、W杯最終予選に臨む前の守田の言葉に耳を傾けてほしい。

「自分の意見を言わせてもらえるなら、アジア予選と本大会で同じ狙いを持ち、同じような(攻撃的な)サッカーをしたい。本大会で相手が格上だからといって、カウンター1本で勝負するのは、勝つ確率を上げるという意味では間違いないのかもしれないですけど……。

今後、日本サッカーがもう1つレベルを上げるには、そこにトライしないといけない。だから、結果を残すのはもちろんですけど、どんな相手にも通用するような、一貫性のあるサッカーや土台のようなものを作りたいんです」

守田もまた、勝つことと日本サッカーの未来の両方を同時に追い求めるタイプだ。

なぜ守田は選外となったのか

しかし、今大会を臨む上での戦略には、2人の考えに決定的な隔たりがある。

森保監督は今大会のW杯で優勝するためには守備がキーになると考えている。「隙をつくらず失点をしないことを大切にする」という方針をエース・三笘薫のケガによる欠場が決まる前から明らかにしている。

例えば、以下の2つの要点がある。

・守備をベースにしたチームを作る(2018年のベルギー戦も2022年のクロアチア戦も「打ち合い」と言えるような試合をしてしまったことが敗因の1つだと分析している)

・決勝トーナメントでの最大5試合のうち、2~3試合はPK戦になると覚悟している

実際、W杯メンバー26名のうちディフェンスラインの最後の砦となるセンターバックの本職が7人もいて、中盤の守備的なポジションにも本職のセンターバックを起用する方針をたてているのもその一環だ。

そこが、攻撃的なサッカーにトライしたい守田とのサッカー観や勝負勘の違いだ。戦術的・戦略的で守田は落選したとも言い換えられる。

大迫勇也と重なった?守田の姿

ただ、やはり、守田がいないのはあまりに惜しい。その理由をいくつか挙げよう。

大一番で彼が見せる個人の能力の高さはどうなのか。

今年4月7日に行なわれた、チャンピオンズリーグの準々決勝。サッカーの競技面のレベルだけを考えると世界最高峰で、W杯をしのぐレベルにある。欧州CL準々決勝のアーセナルを迎えた試合で、守田のデュエル勝率は73%だった。デュエルの勝率はどうしてもセンターバックの選手たちが高くなりがちだ。それでも、世界屈指のセンターバックであるフランス代表のサリバと並ぶ2位の数値をたたき出した。

何より世界最高峰のプレッシャーと熱量の下で行なわれる試合でここまでのパフォーマンスを見せるというのは、W杯に向けて選手の力量を証明していた。しかも、その種のデータは森保監督が選手を選考する上で大切にしているものでもある。

守田が試合にかける想いの強さはチームの武器にならないのか。

アーセナル戦の前半31分、ルーズボールを巡る争いでみせた守田のスライディングがファールと判定された直後のシーンだった。ファールをアピールして転がったトロサールに駆け寄り、守田は一喝した。接触があったにせよ、「激しく痛がる必要などない!」と伝えるかのように。トロサールを一喝したときの守田の目は"イって"いた。この試合に命を懸けている者の目だった。

そんな想いの強さが本人の意図に反して、別の方向に働く。そんな恐れも森保監督の頭の中にはあったのかもしれない。

例えば、2019年のアジアカップでの前例がある。森保監督が就任してからおよそ半年の時点で行なわれたあの大会は、現在の主力選手たちの多くが日本代表として初めて挑む国際大会だった。当時のエース大迫勇也はチームが勝つ確率を上げるために周囲に強く要求し続けた。大迫は心優しい青年であり、決してエゴイストではない。

ただ、勝利のために要求する。

そして、それは正しい。しかし、当時まだ若手だった現在の主力メンバーたちがその強度に萎縮してしまったという事実があった。大会途中で大迫がケガで欠場していた時間があったため、当時はあまり話題にならなかったが。

「想いの強さ」がチームの空気を乱すことがある。選手たちにそれぞれの特長をいかんなく発揮してもらうことを森保監督は特に大事にしている。ポゼッションサッカーへの強い信念を持つ守田を招集することで、あのデリケートな代表チームの統一感が崩れるのではないか。そう考えたとしても、不思議ではない。

それでも――。

思えば、2022年カタールW杯でクロアチアとのPK戦で敗れた直後、多くの選手が涙を流した。多くの者の涙の理由は「なぜ、勝てなかったか」「自分がPKを蹴るべきだったのか」という、"過去の"悔しさの涙だった。それも大いに価値がある。

守田の場合はちょっと違った。

あの試合の後、「カタールW杯までの4年間が終わり、次の北中米W杯に向けた戦いが始まりますが、どのように過ごしていきたいですか?」と筆者が問うと、少し考えてから、こう話し始めた。

「この4年、本当にあっという間で。自分は(W杯)予選から(代表に)入ってプレーしましたけど、本当に"いっときも"無駄にしていなかったですし……」

そこまで話すと、言葉を詰まらせた。こぼれそうになる涙をぬぐい、それでもぬぐい切れず、消え入りそうな声で「すみません……」と一言ことわってから、続けた。声は震えていた。

「本当に、これからは1日も無駄にできないので」

涙腺は、これからやってくる厳しい日々に想いを馳せたとき崩壊した。

守田英正とは、「未来」を見つめて、涙を流す人間なのだ。

だからだろう。2025年の7月19日、守田はお参りに出かけている。ちょうど1年後のその日、2026年W杯の決勝が行なわれるからだった。決勝から逆算して、やれることは何でもやりたい。その一念からだった。

そんな強い想いを持っているものがチームのために100%コミットできれば、それは大きな力になる。

そうなるための作業を、森保監督が十分にできなかったのか、したけれども無理だったと判断したのか。あるいは、限られた時間をそこには割けないと思ったのか。それは森保監督が胸の中にしまっておくたぐいのものだ。

ただ、この結末はあまりに残念だった。

守田の能力と想いの強さが日本サッカーにもたらす影響について考えれば考えるほど、そう感じずにはいられない。

取材・文/ミムラユウスケ

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