「Go!プリンセスプリキュア」のキュアマーメイド役などで知られる声優でありながら、アニメ化もされた漫画『それが声優!』の原作など、作家としても活躍している浅野真澄
発行部数160万部の『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』など、会計にまつわる数多くのベストセラーの著者でもある公認会計士・税理士の山田真哉

そんな2人がパーソナリティを務め、毎週月曜日の21時30分から文化放送で放送中の「浅野真澄×山田真哉の週刊マネーランド」
お金が大好きな人気声優と、アニメや声優が大好きなお金のエキスパートが投資や税金などお金にまつわる話をするという、面白い上に知識も身につくラジオ番組だ。
声優・浅野真澄が一千万円を投資して三百万円儲けてた「さおだけ屋」の山田真哉とマネー対談
「浅野真澄×山田真哉の週刊マネーランド」のパーソナリティ浅野真澄と山田真哉。声優の浅野はお金が大好きで、公認会計士・税理士の山田はアニメや声優が大好きという、不思議なバランスのコンビ

2015年3月の放送開始から約1年半が過ぎ、投資未経験者だった浅野も株で300万円の利益を出すほど投資家として大きく成長。番組自体も、「第2回アニラジアワード」の「ためになるラジオ賞」を受賞するなど、ますます注目を集めている。
さらに8月31日には、投資についての話題をまとめた初の番組本『山田先生とマネー番組をはじめたら、株で300万円儲かった』(扶桑社)も発売された。
そこでパーソナリティの2人に、番組や投資についての話題とともに、初心者向け投資ガイドでもある番組本についても話を聞いてきた。


お金の話をするのは楽しいことだと伝えたかった


──「浅野真澄×山田真哉の週刊マネーランド」は、どういったきっかけで始まったのですか?
浅野 私が11年間、パーソナリティをやっていた「A&G 超RADIO SHOW〜アニスパ!〜」という番組が終わる時、文化放送の皆さんが「アニスパが終わってからも、ぜひ番組をやってください。何かやりたい企画はありますか?」と言ってくださったんです。普通は先に番組の枠組があって、そこにパーソナリティとして呼ばれるので、これはめったにないチャンスだと思い、「お金にまつわる番組をやりたいです!」と提案しました。お金の話を嫌う人もいますが、嫌いなのは関心があるからだと思うんですね。まったく興味が無かったら、嫌いという気持ちにもならないですし。だから、楽しくお金の話をしたら、興味を持ってくれる人も多いだろうとは思っていたし、お金の話をするのは別にいやらしいことでも何でもなく、楽しいことだと伝えられたら良いなとも思っていました。今は、少なくともリスナーさんたちの間では、日常的にお金の話を気兼ねなくできる空気になっているのかなと感じています。

──山田さんは、1年半、番組をやってきてどのような感触がありますか?
浅野 山田さんは、「マネーランド」が初めてのラジオレギュラーなんですよね?
山田 初めてですね。本を出す場合は、明確にターゲットを絞り込むというよりも、ある方向に向けて出してみて、誰かに当たれば良いやという大ざっぱな感じも多少あるんです(笑)。一部の人に受けたら、それだけでも1万部、2万部はいく世界なので。でも、このラジオは、「アニスパ」や浅野さんのファンが聴いてくれるのだろうという前提があったので、最初は、そこにどうやって弾を当てるかというコントロールが必要だなと思いました。
──しかも、お金の話で。
山田 そうなんですよ。
「アニスパ」や浅野さんのファンの人にとっては、お金の話って変化球のはず。最初は、その変化球をどうやってストライクゾーンに入れたら良いのかなと思って、(強引に)アニメの話をしたりもしていました。浅野さんは嫌そうな顔をするんですけどね(笑)。
浅野 嫌じゃないけど、マネーの番組ですから(笑)。
山田 でも、回数を重ねるごとに、それがだんだんと快感になって。今や、いかに浅野さんに嫌そうな顔をさせるかという勝負になってきました。
1年半の間に、僕なりの「マネーランド」の楽しみ方が分かって来た感じですね。
声優・浅野真澄が一千万円を投資して三百万円儲けてた「さおだけ屋」の山田真哉とマネー対談
「浅野真澄×山田真哉の週刊マネーランド」の収録風景。浅野、山田と一緒にブース内にいるのは構成作家の諏訪勝。手前は「もんちゃん」こと文化放送・門馬史織プロデューサー。二人とも元「アニスパ」のスタッフ

投資という柱ができてから、浅野さんの成長物語に


──放送開始当初は、クレジットカードのポイントや節税の話などお得情報的な内容も多かったですが、徐々に投資の話がメインになり、浅野さんも実際に投資家デビューを果たしました。投資については、最初から興味があったのですか?
浅野 元々、投資もやってみたかったんですけど、私のマネーリテラシー(お金に関する知識)が低すぎたから、どこから手をつけて良いか分からなくて。だから最初は、お得情報がメインだったんです。
山田 最初の3か月ぐらいが良い助走期間にはなりましたよね。その後、浅野さんが実際に投資を始めてから番組にストーリー性が出てきた。投資と言う柱ができた段階から、ある種、浅野さんの成長物語になっていたんです。
その成長物語的な面白さで、番組を継続して聴いて頂けているのかなと思います。最初の頃と比べたら、投資や経済の知識に関しては如実に違いますから。
──浅野さんは「マネーランド」が始まるまで、投資に対してどんなイメージを持っていましたか?
浅野 私の周りには投資についてネガティブに話す人がけっこういたんです。「止めた方が良いよ。絶対に儲からないよ」って。それに対して「そんなことはないでしょう」と言いたい気持ちはあったんですけど、私自身、そう言えるだけの知識も経験値も無かったので、反論できず、「へえ、そうなんだ」としか言えなかった。
それが嫌だったんですよね。とはいえ、誰かに導いてもらわないと偏った知識を身に付けてしまいそうだなという怖さもあって、なかなか挑戦できなかったんです。だから、「マネーランド」をきっかけに、正面玄関から投資の世界に入れた感じがしています(笑)。
──第1回放送で山田さんが語られた「『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』印税5000万円をFX(外国為替証拠金取引)で全額溶かした話」は、とても衝撃的だったのですが……。
山田 はいはい(笑)。
──そんな経験をしても、投資を止めようという気持ちにはならなかったのですか?
山田 「投資の手法が違ったんだ。FXではなかったんだな」という結論ですね。前提として、僕が投資をしているのは、自分が今使っていないお金を有効活用するためなんです。例えば、使ってない土地があったら、もったいないから駐車場にしようという話と一緒。貯金しているだけのお金があるなら、10万でも20万でも動かしたほうが良いだろうと思って投資をしているので、そこはブレなかったですね。僕は、お金についてだけではなく、あらゆることに対して根っからの貧乏性というか、もったいない病なんですよ。例えば、歴史の勉強をしたから歴史系の番組もやってみたいなとか。自分が勉強したことや、自分の財産とかは全部使い切りたいタイプなんです。
──では、投資が性格に合っているのですね。ハイリスクハイリターンのFXと言う手段が合わなかっただけで。
山田 たまたま、(自分にとっては)悪い友達と知り合っちゃたみたいな(笑)。だから、投資や経済の勉強をして、もっと自分に合った友達を選ぼうと思ったんです。
──番組の第1回目でいきなり5000万円も損したという話を聞いて、浅野さんは、投資するのが怖くなったりはしませんでしたか?
浅野 全然、怖くはなかったです。山田さんが大損したのは、レバレッジ(少ない資金で大きなお金を動かす仕組み)のあるFX。私は現物取引(持っている資金の範囲内でしか株式を購入できない取引)しかやらないとか、最初にいくつかルールを決めていたので。それに山田さんは、FXのことをすごく勉強して投資したのではなくて。友達に誘われて軽い気持ちでやってみたら、大損しちゃったらしいんですよね。
山田 そうそう。
浅野 聞いていても「そりゃあ、失敗するよね」って話じゃないですか? だから、怖いとかではなく、「そういう投資をしたら失敗するのね。メモメモ」って感じでした(笑)。
声優・浅野真澄が一千万円を投資して三百万円儲けてた「さおだけ屋」の山田真哉とマネー対談
番組本の『山田先生とマネー番組をはじめたら、株で300万円儲かった』は、「投資のはじめ方教えてください」「株を買う前の知るべきことを教えてください」「株で稼ぐ方法教えてください」の3章で構成されている

女性声優というより、60代の投資好きのおっちゃん


──番組本のタイトルにもあるように、浅野さんは1000万円を資金に株式売買だけで300万円もの利益をあげたそうですね。番組が始まった当初から、身銭を切って投資をするつもりだったのですか?
浅野 お金の番組をやりたいと言った以上、自分が安全な場所にいて話しても、きっとリスナーには届かないだろうなと思っていたので、ガチな話をしていこうとは考えていたんです。だから、最初から1000万円投資すると決めていたわけではないんですが、そういうことも隠さずに話していこうとは決めていました。
──投資額を1000万円にしたのは、投資が楽しくなったからですか?
浅野 最初は100万円ぐらいしか投資していませんでした。1000万円投資することにした直接のきっかけは番組の企画なんですよ。「株式投資とれーにんぐ」というコンテンツでヴァーチャルな株式投資をして勉強しようという企画をやったんですね。
──浅野さん、山田さんだけでなくリスナーも参加して、1000万円を元手に誰が一番多く稼げるか競ったゲーム企画ですね。
浅野 はい。あれをやったら、1000万円で投資するのは楽しいなって思っちゃったんです。資金が100万円だと高くて買えない株もあるのですが、1000万円あれば、そういうことも無くなるので。
──山田さんは、浅野さんの顧問税理士でもあるわけですが、投資家としての浅野さんの成長を、番組収録中以外でも感じることはありますか?
山田 EU離脱がどうとか、為替の動きがどうとか話題がどんどんマニアックになっていて。人気女性声優さんではなく、60代くらいの投資好きなおっちゃんと話しているような気分になります(笑)。
浅野 ひどい!
山田 そうやって「THE個人投資家」という感じに変貌していく姿が嬉しくもあり、寂しくもあり、みたいな。声優の時の浅野さんは、すごく好きだったんですけどね……。
浅野 過去形にしないで! 今も今も(笑)。
──山田さんは、浅野さんが投資を始めて約1年で300万円も儲けるとは予想していましたか?
山田 こんなに大幅に稼ぐとは全然予想してなかったです。株って、統計を取ると、少しプラスになるくらいが平均ですから。ただ、浅野さんは、けっこう一発狙った買い方をするんですよ。ホームランか、三振かという中田翔(北海道日本ハムファイターズ)みたいな感じ。これで大損したら、番組の雰囲気が重くなるなあと思って、ずっとドキドキしていました(笑)。
浅野 300万円の利益が出ている時は、「どういう状態になれば、株で損するの?」って思ってました(笑)。その時期は、私が主に投資をしているマザーズ(ベンチャー企業向けの株式市場)が調子良かったんです。今は株価が落ち込んでいて、含み損(買った時よりも株の価値が下がっていること)が出ているんですけど……。でも、私は学生の頃、お金ですごく苦労させられたからか、お金に関してめちゃくちゃ打たれ強いんです! 損をするのは嫌ですけど、それによって番組のテンションが下がるとか、「もう二度と投資はしない!」って気持ちになるとかは全然ありませんでした。逆に「負けないぞー!」という気持ちになるというか。投資家として貴重な経験させてもらっているなと思っています。例えば、イギリスがEUを離脱した時には、日経平均株価が歴史的大暴落をしたんですよ。
山田 1286円安でしたね。
浅野 その時、自分の持っている株も値下がりしたのですが、今、投資家として歴史的な局面に直面しているというワクワク感もあって。そういうことも含めて、投資を楽しんでいますね。
(丸本大輔)

後編に続く