【写真】栗山千明主演『晩酌の流儀』の場面カット【6点】
◆女ひとり、ただ家で飲むだけのドラマ
まずは冒頭で書いた通り、現在の作品で“5期”を迎えた。2022年のスタート以降、キンキンに冷えたビールが恋しくなる夏クールごとに放送を繰り返して、年末になるとスペシャル版を複数回放送してきた。放送回数をすべてあわせてカウントすると“50話”を超えており、もう立派なご長寿番組の域に突入している。テレビドラマのシリーズ化が厳しいと言われている昨今、これは大きすぎる記録。
ちなみに『晩酌の流儀』とは主人公の不動産会社に勤務する伊澤美幸(栗山)が、日々の仕事を定時で終えて、帰宅後に最高の晩酌を楽しむオムニバス形式のドラマ。美幸はアルコールの種類にあわせたつまみを自炊して、乾杯。このドラマは、ただひたすら美幸がうまそうに酒を飲む様子を愛でるドラマなのだ。伏線はない、考察する視聴者もいない、大きな事件が起こるわけでもない。昨今、仕事で酒を飲まない文化も定着したし、ソバーキュリアスも増えているので、酒に興味がない人にはどこまで刺さっているのか想像し難いが、私のような左党にとってはぶっ刺さっている。
左党にも外飲み派と家飲み派がいるけれど、私はどちらの流派(?)も好きなので、女性がひとりで飲んで食べている様子はテレビ画面に同士が登場したようなもの。若い世代がTikTokで動物の動画を見て癒されているらしいが、それに近い感覚がある。おそらく私のような意見が多数集まった結果、“5期”までコマが進んでいるのだ。
◆孤独化が進む日本にふさわしいテレ東3作品
……はて。『晩酌の流儀』について考えていると、つられるように浮かんできたのが同局で放送中の『孤独のグルメ』だ。説明するまでもないかもしれないが、サラリーマンの井之頭五郎(松重豊)が、仕事中の外出先でひとり=孤独に食事している様子を描いている。五郎は下戸なので酒を嗜むシーンはない。いかにも男性が好みそうなガッツリとした“メシ”を喰らうのみ。ただそれだけの内容なのにロケ地の飲食店は、聖地巡礼ファンが押し寄せるという。以前、私も普段使いにしていた回転寿司屋が撮影で使用され、しばらくは入店ができないほどのフィーバーぶりを目の当たりにした経験がある。
2012年の放送スタート以来、シーズン11を迎え、途中でスペシャルドラマはもちろん、映画化もされた。あの『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系・1990年)でさえもシリーズ10で歴史に幕を閉じたので、松重豊は泉ピン子を超えたと評しても過言ではない。『孤独のグルメ』年末年始になると一気に再放送が催されるのは恒例となり、各動画配信でも見かける。とにかく日本国民総『孤独のグルメ』ファン。
加えてテレ東は単身行動を応援しているのか、2021年にスタートした江口のりこ主演『ソロ活女子のススメ』も2025年にシーズン5を超えている。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(2024年4月発表)」のデータによると、2032年に平均世帯人員が1.99人になり、2人を割り込むと言われている。単身生活者は増えていく一方だ。寂寥感が増していく現代において、放送中の『晩酌の流儀』は、AIに並ぶ作用を持っているのかもしれない。さてそろそろ今夜の晩酌メニューを考えるとするか。
(文/コラムニスト・小林久乃)
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