ペットボトルキャップの切れ込みの存在、知ってますか?
手元のペットボトルのキャップ、見てみてください。このへんに、こんな感じに「切れ込み」が入っているんです。
夏の暑い季節も近い。外出するときペットボトル飲料を持ち歩く人はますます多いと思う。


さて、そんなつめた〜い飲み物が入ったペットボトルのキャップをよ〜く見てみると、なにやらほそ〜い“切り込み”が何カ所かに入っているのが分かるだろうか。
全部のペットボトルに入ってるわけじゃないけれど、キャップの頭の方にある、カッターで線を入れたようなちっちゃな切り込み。

これは一体何なんだろうか? フタに切れ目なんかが入っちゃってていいんだろうか? 疑問を解消すべく、ペットボトルなどの容器を製造している「日本山村硝子株式会社」に聞いてみた。

「その切り込みは“ベントホール”といって、内容液をボトルにつめたあと、飲み口のネジの部分を洗い流すための穴です。これによって飲み口がより清潔に保てるんですね」

でもどうやって洗い流すんだろう? こんなほそ〜い切り込みで、ホントに洗い流すことができるんだろうか?
「例えばお茶をボトルに入れるとき、中身は80度などの高温になっています。するとキャップの温度も上昇するので、自然とベントホールの口が開くんです。
そうすると水をかけるだけでキャップと口の間に水が入り込み、口の部分を洗い流せるんですよ」
熱いと開く、なんとなく分かるイメージだ。そうか、そうやって洗い流されているのか。

ベントホールの歴史は、お茶のペットボトルの歴史と重なる。ベントホールが開発されたのは、お茶のペットボトルが流行り始めたころのこと。お茶を入れた急須や湯飲みに茶渋がつくのと同じで、お茶を詰めたペットボトルでも、口の部分が茶色くなってしまうことがあった。その対処法として生まれたのが、ベントホールだったという。

つまりベントホールは、飲み口を美しく保つための、いわばエチケット的な工夫だった。人間がナポリタンを食べたあと、ナプキンで唇を拭うのと同じだ。

ということは、ベントホールがついていないものは、飲み物を詰めるとき、飲み口が汚れないからなのか?
「そうですね。理由はいくつかあると思いますが、例えば水やスポーツドリンクなど、汚れが目立たないものはベントホールがついておらず、緑茶など汚れが目立つものはベントホールがついていることが多いですね」

1977年にキッコーマンがペットボトル入りの醤油を発売して以来、進化を続けてきたペットボトル。82年には飲み物用にも使われるようになり、その進化の途中で、ベントホールは生まれた。

外見の個性だけでなく、内面の美しさをも磨いているペットボトル。

三十路を迎えたペットボトルは、今もなお、美を追求しているようだ。
(イチカワ)