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映画「かぐや姫の物語」で解く『竹取物語』の謎。その2「姫はなぜ結婚を拒むのか」

2013年11月29日 11時00分

高畑勲監督作品『かぐや姫の物語』全国ロードショー中

『竹取物語』の面白さは前編で指摘したように「謎解きの楽しさ」にあります。
そして『竹取物語』がこんなにも多くの謎を秘めているのは、一つには、物語の成立過程が複雑ということも関係するのかもしれません。

他の多くの古典同様、『竹取物語』の原本は残っていません。しかも現存する最古の完本の写本は1592年に書かれたという新しさ。『竹取物語』は800年代の後半から900年代の半ばまでのあいだに成立したと言われますから、今現在「原話」とか「原文」と呼ばれる『竹取物語』は物語ができてから六、七百年も経って書き写されたものなのです。
しかも諸本によってその内容がかなり違い、できた当初の物語に相当の手が加わっていると言われています。

それで、「原『竹取物語』」といったものがあるとしたら、それはどういうものだったのか、どんな物語が『竹取物語』に影響を与えたのか、さまざまな研究があるわけで、非常に関係深いとされるのが「羽衣説話」です。
天降った天人が水浴びしているあいだに、男に「天の羽衣」を奪われて、しばらくのあいだ、人間界で過ごし、やがて天に帰って行くといった、昔話でもお馴染みの物語です。

この羽衣伝説が、『風土記』(七一三以後)の二つの逸文に残っています。逸文とは散逸した文のことですが、他の文献に採録されて伝わったものが、日本古典文学大系や新編日本古典文学全集の『風土記』に所収されています。
以下、12/4発売の拙著『ひかりナビで読む竹取物語』(文春文庫)でも紹介したのですが、一つは丹後国の「奈具社(なぐのやしろ)」、そして近江国の「伊香小江(いかごのをうみ)」の話で、せっかくなので概要を訳しますと……。

まずは「奈具社」、これがなかなか衝撃的な話なのです。

丹後国の、今は沼になっている泉に、“天女(あまつをとめ)”が八人降りてきて水浴びしていた。そこへ “老夫婦(おきなとおみな)”がやって来て、こっそり一人の天女の衣を隠してしまう。
衣のある天女は天に飛び立ったものの、衣のない天女は一人残されて、身を水に隠して恥じらっていた。
そんな天女に“老夫(おきな)”が「私には子がない。私の子になってくれ」と言うと、天女は、
「私一人残されたので従わないわけにはいかない。だから衣を返してほしい」と言い、
「返せば天に帰ってしまうのでは」
「天人は“信(まこと)”を大切にしている。どうして疑って衣裳を返さないのか」
「疑いの多いのはこの世の常。
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