◾️私がAI株価予測の比較サイトを作った理由
AIが株価を予測する──。こう言うと、いまだに「そんなことできるわけない」という顔をする人がいる。
気持ちはわかる。私だって最初はそう思っていた。だが、2025年から2026年にかけて、この分野で起きていることを知ってしまったら、もうそんな悠長なことは言っていられない。
いま、世界のAI株価予測の最前線で火花を散らしているのが、中国・清華大学が開発した金融特化型AI「Kronos」と、米アマゾン・サイエンスが送り出した汎用時系列予測モデル「Chronos-Bolt」だ。片や中国の最高学府が金融市場のためだけに作った専門家、片やGAFA最後の砦が「なんでも予測できます」と送り出した万能選手。この2つのAIが、どちらが本当に株価を当てられるのか。
論文を読み比べているだけでは埒が明かない。だから私は自分で検証プラットフォームを作った。それが「autobullbear.jp」だ。
世界16市場で、まったく同じルールで、KronosとChronos-Boltを毎日走らせている。いわば、AIの実力を丸裸にする公開処刑場である。
結果は衝撃的だった。
■ そもそもKronosとChronos-Boltは何者なのか
まず両者の素性を整理しておきたい。知らない人のために言うと、この2つはまったく別の思想で作られたAIである。
Chronos-Boltはアマゾンが2024年にリリースした。天気予報でも電力需要でも小売の売上でも、とにかく「時間とともに変化するデータ」なら何でも予測しますよ、という万能型だ。従来モデルの最大250倍速い。2025年10月にはマルチバリエート対応の「Chronos-2」も出した。AWS上でAutoGluonと組み合わせた企業向けソリューションも展開している。さすがはアマゾン、商売がうまい。
対するKronosは清華大学の研究チームが2025年に発表し、AI分野の最高峰学会AAAI 2026で正式に採択された。こちらは金融市場のためだけに作られた専門家だ。
何が違うかというと、学習データが根本的に違う。
Chronos-Boltは株価も天気も売上も、全部「数字の並び」として同じように処理する。いわば、内科も外科も眼科も全部診ますという総合病院のようなものだ。
Kronosはそうじゃない。世界45カ国以上の取引所から集めた120億本超のローソク足データ──始値・高値・安値・終値・出来高・売買代金の6次元データだけで学習している。株価チャートという「金融市場固有の言語」だけを徹底的に叩き込まれた、いわば金融専門の名医である。独自のBSQ(Binary Spherical Quantization)という技術で株価データを約100万語の"金融語彙"に変換し、ChatGPTと同じGPT型のTransformerで自己回帰学習を行う。要するに、ChatGPTが人間の言葉を覚えたのと同じ方法で、Kronosは株価チャートの言葉を覚えたのだ。
学術ベンチマークでの成績は一方的だった。株価予測の標準指標であるRankIC(ランク情報係数)で、Kronosは既存の時系列基盤モデルを+93%上回った。ちなみにアマゾンのChronosやグーグルのTimesFMは、金融データでのゼロショット予測でR²がマイナス──つまりサイコロを振ったほうがマシという結果だった。
開発者コミュニティの支持も明確だ。
■ autobullbear.jpの売買ルール──裁量を排除した「AIガチンコ対決」の仕組み
だから私はautobullbear.jpを作った。
対象は日本株、米国株、英国株、ドイツ株、フランス株、インド株、中国株、香港株、韓国株、台湾株、カナダ株、オーストラリア株の12カ国の株式市場に加え、暗号資産、REIT、先物、コモディティを含む全16市場。2026年4月にシミュレーションを開始し、現在も日々データを蓄積し続けている。
autobullbear.jpでは、KronosとChronos-Boltの両モデルに「10営業日後の株価」を予測させている。予測期間は10営業日、つまり約2週間先の未来だ。デイトレードのような超短期でもなく、数カ月先を読む長期でもない。機関投資家がスイングトレードで使う、もっとも実践的な時間軸を選んだ。
売買ルールは徹底的にシンプルにした。裁量が入った瞬間、それはAIの検証ではなく人間の検証になってしまうからだ。
まず、autobullbear.jpでは独自のアルゴリズムで市場全体の地合いを「青信号」「黄信号」「赤信号」の3段階で判定している。そのうえで、条件はたった2つ。
買いの条件──青信号の日に、AIが「10営業日後に+5%以上の上昇」と予測した銘柄を買う。
売りの条件──買いから10営業日後に自動的に売却する。ただし、途中で信号が黄または赤に変わった場合は、保有日数にかかわらず即座に全ポジションを売却する。
これだけだ。このルールをKronos、Chronos-Bolt、そして両モデルの予測が一致した銘柄のみ売買する「コンセンサス」戦略の3パターンで同時に走らせている。人間の判断が入る余地はゼロ。AIの予測精度だけが結果を左右する設計である。
■ 運用開始わずか3~4営業日──それでもKronosの優位は鮮明だった
ここで正直に断っておかなければならないことがある。
今回お見せする結果は、シミュレーション開始からわずか3~4営業日時点のものだ。市場によって開場日が異なるため2~4営業日の幅があるが、大半の市場は3営業日分の結果である。しかも、10営業日の保有期間がまだ満了していないため、ほぼすべてのポジションが未決済のまま──つまり含み益・含み損を含んだ数字である。確定利益ではない。
「たった3日のデータで何がわかるのか」という声が聞こえてきそうだ。もっともな疑問である。
だが、考えてみてほしい。たった3日で、しかも含み益の段階で、ここまで明確な差が出ること自体が異常なのだ。通常、2つの予測モデルの実力差は数週間から数カ月のデータを積み重ねてようやく見えてくるものである。それが3日で10勝5敗の差がついている。これは偶然では片づけられない。
では結果を見てみよう。
・暗号資産(運用2営業日)……Kronos +11.87%、Chronos +4.08%。約3倍の差
・フランス株(運用3営業日)……Kronos +4.18%、Chronos +0.74%。5倍以上の開き
・香港株(運用4営業日)……Kronos +2.91%、Chronos +0.04%。Chronos-Boltはほぼゼロ
・ドイツ株(運用3営業日)……Kronos +2.78%、Chronos +2.14%
・インド株(運用3営業日)……Kronos +2.07%、Chronos +0.46%
・REIT(運用3営業日)……Kronos +2.02%、Chronos +1.09%
・韓国株(運用3営業日)……Kronos +1.68%、Chronos +0.45%
・日本株(運用3営業日)……Kronos +1.67%、Chronos +1.59%。僅差だが勝ちは勝ち
・オーストラリア株(運用4営業日)……Kronos +0.72%、Chronos -0.25%。Chronosはマイナス
・コモディティ(運用3営業日)……Kronos +0.64%、Chronos -0.56%。ここもChronosはマイナス
次にChronos-Boltが勝った5市場。
・台湾株(運用3営業日)……Chronos +5.61%、Kronos +1.95%
・米国株(運用4営業日)……Chronos +3.20%、Kronos +0.67%
・英国株(運用3営業日)……Chronos +1.57%、Kronos +1.19%
・中国株(運用3営業日)……Chronos +1.38%、Kronos +0.17%
・先物(運用3営業日)……Chronos -0.06%、Kronos -1.73%。どっちもマイナスだが
カナダ株は運用1営業日でデータ不足のため除外。数値は2026年4月時点のautobullbear.jpにおけるシミュレーション累積損益率であり、含み益・含み損を含む未確定の数字である。
繰り返すが、これは3~4営業日の、しかもほぼ全ポジション未決済の結果だ。それでもこれだけの差がつく。
■ なぜアマゾンは「金融のプロ」に負けたのか
面白いのは、Chronos-Boltが勝った市場の顔ぶれだ。米国株、台湾株、英国株──いずれもデータ量が豊富で、世界中のファンドマネージャーが注視している市場である。
要するに、情報が溢れている場所では万能型でも戦える。S&P500の値動きは世界中の論文やレポートに書かれているし、TSMCの株価は半導体業界の誰もが追いかけている。汎用モデルがこうしたデータを学習していないわけがない。
ところが、香港市場の午前中の急騰パターン、フランス市場のセクターローテーション、インド市場のFII(外国機関投資家)フローの影響──こういう「ローカルな文脈」 は、天気予報や小売データと一緒くたに学習したモデルには拾えない。
Kronosは45カ国以上のローソク足だけを120億本食べて育った。各市場の出来高の癖、値動きの周期性、板の厚さの変化──そういう「金融市場にしか存在しないシグナル」 を言語として理解している。だからアジアや欧州のような、英語圏の情報では拾いきれない市場で圧倒的な差が出るのだ。
これは考えてみれば当たり前の話で、たとえば日本語の翻訳をやらせるなら、100カ国語を薄く広く学んだAIよりも、日本語だけを徹底的に叩き込んだAIのほうが正確に決まっている。金融も同じだった、というだけの話である。だがこの「当たり前」を16市場のリアルデータで証明した例は、私の知る限りautobullbear.jpが初めてだ。
■ 「コンセンサス戦略」という意外な伏兵
もう一つ、autobullbear.jpの運用で面白いことがわかった。
KronosとChronos-Boltの両方が「買い」と判断した銘柄だけに投資する「コンセンサス」戦略が、いくつかの市場で単独モデルを上回っているのだ。日本株で+3.79%、コモディティで+1.93%、英国株で+2.43%。いずれもKronos単独より上だ。
これは人間の世界でいえばセカンドオピニオンに近い。設計思想がまったく違う2つのAIが、それでも「この銘柄は上がる」と口を揃えたとき、そのシグナルの信頼性は高 い。考え方の違う医者2人が同じ診断を下したら、患者としてはかなり安心できるのと同じ理屈だ。
このコンセンサス戦略は、いわばKronosの「目利き」とChronos-Boltの「広い視野」を掛け合わせた第三の選択肢である。まだデータの蓄積が浅いので断定はできないが、シミュレーションが進めば進むほど、この戦略の真価が見えてくるだろう。
■ 金融AIの覇権争いは、論文ではなくリアルマーケットで決着がつく
私がautobullbear.jpを作った理由は単純だ。「AIが株価を当てられるかどうか、誰もが自分の目で確かめられる場所を作りたかった」。
世界16市場×3モデルの予測結果がリアルタイムで更新され、累積損益が日々可視化される。どの市場でどのモデルが強いのか、いまこの瞬間のAI予測はどうなっているのか──そうした情報がautobullbear.jpでブラウザを開くだけで手に入る。シミュレーションは現在進行形で、データは毎営業日更新されている。今日の数字は明日にはもう変わっている。だからこそ、自分の目で見届ける価値がある。
後に日本マクドナルドの創業者になる藤田田は1972年、このBEST TIMESを運営するKKベストセラーズで『ユダヤの商法』を発表し、孫正義と柳井正の人生を変えた。あの本の本質は「ユダヤ人の知恵を日本人にもわかるように翻訳した」ことにある。
私がやろうとしていることもそれに近い。清華大学のAIが論文で証明した「金融特化モデルは汎用モデルに勝つ」という事実を、16市場のリアルデータという誰にでも検証可能な形で翻訳する。それがautobullbear.jpの存在意義だ。
金融AIの覇権争いは、もはや論文の中の出来事ではない。あなたのブラウザの向こう側で、毎日静かに、しかし確実に結果を積み上げている。
筆者は独自に開発したAI株価予想比較プラットフォーム「autobullbear.jp」を運営し、Kronos(清華大学)およびChronos-Bolt(Amazon Science)を含む複数のAIモデルによる世界16市場のリアルタイム予測シミュレーションを公開している。本記事のデータは同プラットフォームでの実運用結果に基づく。
なお、本記事は特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
文:林直人
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