訴状や判決文、証拠書類などによると、原告の堀田元也氏(50代、仮名)は次のように主張している。
そんな順風満帆な堀田氏の人生が一変したのは同年9月1日。午前中、翌年3月に支給される「退職一時金」の予定額が、各社員のパソコン上で告知された。これは国の方針によりプレナスの適格退職年金制度が廃止になり、確定拠出年金制度に移管することに伴う措置だった。堀田氏のパソコンには、「退職金予定額」として「会社都合退職での退職金支給額212万円」と記載してあった。
同日、堀田氏は13時からのテレビ会議に出席し、終了後に同僚のM氏と退職金の話をした際に、旧ほっかほっか亭の退職金規定のコピーをもらった。同規定によると、旧ほっかほっか亭の退職金の種別は「定年退職一時金」と「中途退職一時金」の2種類しかなく、告知された212万円は低いほうの「中途退職一時金」の額であり、高いほうの「定年退職一時金」で計算すると、堀田氏のキャリアで退職した場合の退職金は240万円だった。その一方、プレナスの退職金の規定では「自己都合」「会社都合」の2種類であるが、旧ほっかほっか亭吸収前からプレナスに在籍する社員(プロパー社員)の退職金は高いほうの「会社都合」で計算されていたのだ。
疑問を抱いた堀田氏は、福岡本社の人事部課長・F氏に電話し、「提示された退職金額には間違いがある。会社都合ではなく自己都合退職の金額となっており、旧ほっかほっか亭の社員が大騒ぎになっている」と不満を述べたが、F課長は「現状の年金資産状況では難しい」などと説明した。
納得できなかった堀田氏は、旧ほっかほっか亭社員など約20人にメールを送り、一連の経緯を説明し、「みなさん、どう思われますか? ちなみに、退職金規定では、プレナス社員として記載されており、その内容で計算すると、500万円以上になります」。
要するに、プレナスのプロパー社員の退職金は、旧ほっかほっか社員の倍以上だったのだ。
●執拗に退職を迫る人事部長 翌2日、本社人事部のN氏から堀田氏へ電話があった。堀田氏は東京事務所の旧ほっかほっか亭社員向けの退職金制度変更に関する説明会の担当者だったが、N氏は堀田氏に対し「昨日のようなメールをする者には説明会を任せられない」「明日午前11時までに、K部長の元へ出頭するように」と指示した。翌日、堀田氏は福岡本社の会議室でK部長と面談した。K部長は「人事部の者が、説明会担当者が、つまらんメールして不安や不満をあおるような真似をしていいと思ったのか?」「人事部として不適格。もう、あんた、いらない。信用できないし、信頼もしない。辞めたら? 退職願書いたら? 退職届持ってくるから、今書いたら? 印鑑持ってる?」と詰め寄った。これを受け堀田氏は、「人事部で働く者として軽率でした。なんとか働かせてください」と謝罪した。
しかしK部長は「いや、いらんね、人事部の仕事取り上げるんで、仕事がなくなるよ。だから、会社に来なくていいよ。
堀田氏は再度「このまま働かせてください」と頼むと、K部長は「だから、いらんて。 あんたは信頼を裏切ったんだ。辞めたら?」「辞めたらよかねん」とテーブルを叩き怒鳴った。堀田氏は、即答するのを避けて、「2日後に返事をします」と言ってその場を逃れた。
こうして会社を出た堀田氏は、空港に向かう途中で夫人に電話をしたが、K部長に恫喝された動揺が収まらず、うまく話せなかった。心配した夫人は羽田空港まで迎えに行き、堀田氏は取り乱して泣き出し、夫人に付き添われて帰宅した。
その後、「まずは、静養しましょう」との夫人のアドバイスにより、堀田氏は前月の永年表彰による特別休暇と有休を使い、9月12日まで休むことにした。K部長には、退職についての返事を「12日には報告します」と伝えた。
堀田氏は休暇中、労働局に相談に行き、安易に退職願を出さないよう指導を受けた。
堀田氏はしばらくは失業保険でしのいだが、やがてそれも尽きた。50代で再就職は難しく、2人の子どもがいるため家計が苦しくなり、安価な物件に引っ越した。
その後、時給850円でレストランで働いたが、その店は8カ月後に閉店。現在は時給1000円でスーパーの臨時社員の職を得て、総菜部で揚げ物を揚げたりしている。
そして退職に追いやられたことに納得のいかない堀田氏は、12年に会社を相手取り、地位確認と、退職日以降の給与、引っ越し代、慰謝料などを求め、東京地裁に提訴した。堀田氏の訴えに対しプレナス側は、「K部長は罵倒はしていない」と主張しつつも、退職勧奨していたことは認めた。
13年6月5日に下った判決では、「K部長に退職強要をされた」との堀田氏の主張に対し、堀田氏が当初は2日後に回答すると言っていたのに一週間休暇を取り、その通りにしなかった点について「不自然」と指摘し、「K氏の陳述書、証言に照らしても、原告供述等は信用し難い」とした。また、「K部長が罵声を浴びせていた」との主張についても、「罵声を浴びせるなどして一方的に退職を強要したことを認めるに足りない」と退け、退職強要ではなく退職勧奨だと認定した。
そして、このK部長の退職勧奨について、「原告の前途が閉ざされていることを強調している面はあるものの、退職勧奨に応じない場合の不利益を殊更に強調したり、原告の人格を否定するような罵声を浴びせたりしたようなものとまではいえない」とした。また、K部長が堀田氏に退職願を書くよう伝えたのは、電話による約15分の会話だったことや、労働局に安易に退職願を書かないよう言われていたのに書いたことを挙げ、「このような経緯に照らせば、退職願の提出による意思表示自体が、原告の真意に基づかないものということもできないというべきである」とし、原告の請求を却下した。堀田氏の完全敗訴である。
このように、一審判決は会社側の主張を全面採用したかたちだが、「もう人事部では任せられる仕事はない、他部署で受け入れるところもない」というのは、事実上、解雇に等しい行為ともいえるのではないか。
この事件の教訓の一つは、退職勧奨は、気の弱い社員がターゲットになるケースが多いという点だ。また、プレナスには組合がなく、退職金支給額をめぐり会社側に疑問を呈するというのは、組合活動としては一般的な行為である。組合がしっかり機能していないと、会社に異議を唱えた途端、退職に追い込まれるリスクがあるということを、この事件は示しているといえよう。
(文=佐々木奎一/ジャーナリスト)

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