背番号「33」の真骨頂がそこにはあった。本拠地ZOZOマリンスタジアムで行われた4月29日のイーグルス戦。
八木彬投手は1点リードの五回1死一、二塁の場面で2番手として登板をした。難しい場面だったが、心は冷静だった。武器であるツーシームを自信満々に投じ、三ゴロ併殺。わずか1球で絶体絶命のピンチを切り抜けてみせた。すると今季4勝目が転がり込んできた。1球で勝ち投手。今季、幾度となくスクランブル登板をしている男が、手に入れた無心の白星だった。
 「イメージ通りのピッチングができました」と八木は試合後、充実した表情で振り返った。そしてサブロー監督とガッチリと握手を交わした。セットアッパーながら今季、プロ初勝利を含む4勝を挙げるなど勝利を運んでくれる右腕に指揮官は「あやかろうと思います」と笑みを浮かべた。
 思えば今や伝家の宝刀となっているツーシームは当時、2軍監督だったサブロー監督の助言で誕生した。3年前の事だ。
「ファームでボコスカに打たれた」と八木は振り返る。翌日、グラウンドで話しかけられた。「オマエのストレートは打てる」。打者目線でのサブロー監督流のアドバイスだった。そして「ツーシームを投げてみろ」と勧められた。
 「自分の中でもストレートが打者目線で打ちやすいのかなというのは感じていた。綺麗というか、伸びとかがなくて打ちやすいのかなと。なんか自分の中で変化が欲しかった。そんな時に監督に言われて、やってみようと踏ん切りがついた」と八木。
 ストレートとほぼ同じ球速で、手元でわずかに動き、芯を外すボールとして知られるツーシーム。投手コーチに握りを教えてもらい、練習をしてみるとすぐに手応えを感じた。2軍戦で試すと面白いようにゴロアウトが増えた。

 「ちょっと動くので三振ではなくて早いカウントでどんどん振ってくれる。ゴロアウトが増えた。打者の反応が変わった。刺されるというか。もともと、右打者のインコースに投げたかった中で右打者が詰まってくれる印象。これはいいと思った」と言う。
 ただすぐに今のピッチングを1軍で発揮できるようになったわけではない。1軍で結果を出そうと欲が出て、もっと変化をさせようとした。すると今度は痛打された。「去年は変化を気にして、もっと動かそうとしてしまった。その結果、身体が開いて抜ける球が増えた。ストレートと同じ感覚で投げるというのが原点。
もっとシンプルにゾーンに投げることを今は意識している」と八木。サブロー監督からも「真ん中あたりでいいくらいの気持ちで」と言われ、肩の力が抜け、堂々とゾーン内で勝負できるようになった。
 そして今や1軍で欠かせない戦力となっている。困った時の八木。「行けと言われたら、いつでも行く」と、スクランブル発進で幾度となく窮地をしのぎ、勝ちを呼び込んできた。まさに勝利を呼び込むピッチング。八木の力投は続く。
(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)
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