石川は長く覚醒が期待されている(C)産経新聞社

 プロ入り後、一番の当たりだったのではないか。中日・石川昂弥が5月16日のヤクルト戦(バンテリンドームナゴヤ)で今季1号本塁打を放った。

【動画】石川は130メートル超えの豪快なアーチを放った

 「7番・三塁」で先発出場。3回に相手先発、奥川恭伸の内角直球を捉え、今季1号をマーク。バックスクリーンの「106ビジョン」に映し出されたトラッキングデータを見て驚いた。「打球速度180.2km/h」「打球角度27.4度」「飛距130.1m」。どのデータを見ても文句なしの放物線が、レフトスタンド上段に突き刺さった。

 地元出身のドラフト1位、しかも3球団競合の長距離砲とあって、石川に対する期待は半端じゃなかった。前後で入団した根尾昂、岡林勇希、髙橋宏斗らと共に新たなドラゴンズを作ってくれる──。そう願う声は本当に多かった。

 ただ、高卒7年目を迎えて、高いポテンシャルを活かしきれているとは思えない。故障渦に巻き込まれたり、極度の打撃不振に陥ったり……。公称186cm100kgの身体から滲み出る「大物感」こそ残っているが、2023年の「打率.242、13本塁打、45打点」がキャリアハイになっているのは寂しい。

 今季も開幕一軍でスタートしたが、スタメンに抜擢された3月31日の本拠地開幕戦(巨人戦)で不発。

捉えたと思った打球が全然飛ばない様子に業を煮やしたのか、首脳陣はファーム行きを即決。石川は多くの実戦に出る中で感覚のすり合わせを行なっていった。

 ファームでは5月10日の西武戦(カーミニーク)で本塁打含む3安打2打点、12日のオイシックス戦(ナゴヤ球場)でも再び3安打を放ち、状態が上がってきたタイミングで5月13日に再び一軍昇格を果たした。

 敵地のDeNA戦では2試合でポテンヒット1本しか安打が出なかったが、冒頭の通り16日のヤクルト戦は今季1号を含む3安打の活躍。翌17日も3ボール0ストライクから右中間へ二塁打を放っている。本塁打はもちろん素晴らしいが、個人的にはこの3-0からの二塁打が状態の良さを物語っているように感じる。

 もともと、石川は「待球型」の打者。打席でまず1球見てから対策を施すタイプだ。これは彼が少年期からスラッガーで、相手投手もボール球から入って警戒するからそうなったのかなと推察する。だからこそ、3ボールから仕掛けた上記の二塁打が“変身ぶり”を裏付けている。

 まだ一軍で2試合しか結果を出していないが、少なくとも今の石川はスタメンで使い続ける価値がある。三塁守備も安定しており、守りから破綻する心配もない。

 石川昂弥は今度こそ、本当に覚醒したのか? あの放物線と二塁打を見た今なら、信じてみてもいいかもしれない。

[文:尾張はじめ]

編集部おすすめ