女優のサンドラ・ブロックが、『オーシャンズ8』(本日公開)で、久々に、変わらぬパワーを見せつけた。アン・ハサウェイやケイト・ブランシェットなど、ほかの人気女優に囲まれているとはいえ、『オーシャンズ11』の女性版リブートである今作を率いるのは、同性に愛されるサンドラだ。
実は、日本において、彼女がスクリーンに姿を現すのは5年ぶりのこと。アメリカにおける首位デビューも、同様に5年ぶりなのである。

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 守備範囲の広さでサンドラに勝る女優は、ハリウッドにもなかなかいない。1994年の『スピード』で大ブレイクを果たしたサンドラは、翌年、デミ・ムーアが蹴ったことから主役を手に入れたロマンチックコメディ『あなたが寝ている間に…』(1995)で、“ガール・ネクスト・ドア(隣に住む女の子)”の肩書きを得る。同年公開された別の主演作『ザ・インターネット』は心理スリラー。その後も、『評決のとき』(1996)、アカデミー賞作品賞に輝くシリアスな『クラッシュ』(2004)など、さまざまなジャンルに挑戦しては、成功させてきた。

 『デンジャラス・ビューティー』(2001)、『トゥー・ウィークス・ノーティス』(2002)、『あなたは私の婿になる』(2009)などのコメディで、観客を呼び込める女優の代表となったサンドラが、ついに念願のオスカー候補入りを果たしたのは、2009年の『しあわせの隠れ場所』だ。予算が限られていたことから、彼女も、バカ高い基本のギャラをカットし、興行収入に応じてボーナスをもらえる契約に承諾したのだが、想像以上にアメリカで大ヒットしたことから、通常以上の稼ぎを得ることになった。さらに、主演と呼ぶにはやや出番が少ない感があるにもかかわらず、主演女優賞を受賞することになったわけだ。まさに、彼女の頭と運の良さがわかるエピソードである。

 その後の『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(2011)はぱっとしなかったものの、2013年のアクションコメディ『デンジャラス・バディ』とSFドラマ『ゼロ・グラビティ』は大成功。しかし、日本の観客が彼女を見たのは、これが最後となった。
その後の『選挙の勝ち方教えます』(2015)は、ジョージ・クルーニーがプロデューサーで、賞狙いだったのだが、惨敗して日本公開も取りやめになり、CGアニメーション映画『ミニオンズ』(2015)は、日本では声が吹き替えられているからだ。 そんな中での『オーシャンズ8』首位デビューは、彼女が今もファンに支持されていることを証明したと言えるだろう。そもそも彼女は、『ウルトラ I LOVE YOU!』(2009、日本未公開)で、最悪の演技に贈られるラジー賞を受賞した時、わざわざトロフィーを受け取りに行き、ついでに「あなたたち、この映画を実際に見ていないでしょう?」とDVDを配るようなユーモアのセンスがある人なのである(彼女が『しあわせの隠れ場所』でアカデミー賞主演女優賞を取ったのは、その翌日だ)。そんな心の余裕を持つ人を嫌うことなどできるだろうか。

 サンドラは現在、54歳。オスカー受賞の直後に離婚し、シングルマザーとなった彼女は、養子のルイス君の母であることを最重要視すると語ってきている。最近は、彼女が住むテキサス州オースティンに昔からあるカフェを買収するなど、ハリウッドから離れたところでビジネスの才能を活かそうとしてきた。これだけ休業してきても、まだ最も所有資産の多い女優のトップ5に入っているのだから、やりたくない映画に出る必要はない。

 それでも、もっと彼女を見たいというファンへの朗報もある。次回作のNetflix製作のSFスリラー『Bird Box(原題)』を、彼女はもう撮り終えているのだ。アメリカ配信は12月21日とのこと。それまではじっくり『オーシャンズ8』の余韻に浸ってもらいたい。
(文・猿渡由紀)
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