物流手段を持っていない物流会社だ。

 物流サービス中堅の日本コンセプト(NICHICON,9386)が手掛けるのが、液体貨物の国内・国際物流だ。

 発火性の化学物質など危険な液体を運ぶプロフェッショナルとして1994年に創業。それからわずか8年、2012年10月に大阪証券取引所のジャスダック市場へ上場を果たした。

 日本コンセプトの最大の武器であり、強味が「タンクコンテナ」を活用した液体輸送だ。

 タンクコンテナとは、どのようなものか。

発火性の化学液体貨物を運ぶ
タンクコンテナとは

 上記写真がタンクコンテナ。国際標準の危険品液体貨物の輸送手段で、大きさは長さ約6メートル、高さ2.6メートル、内容量は2万4000リットル程度のステンレス製だ。

 その特徴は筒状のタンクを、鉄製の枠を囲って、完全に固定していること。これにより幾重に重ねて保管することも、通常のコンテナのようにトラックにそのまま積載して運ぶことができる。

 日本コンセプトの京浜支店(神奈川県川崎市)は、多摩川の対岸に羽田空港を望む地に1万5000平方メートル(約4500坪)の広大な面積を持つ。ここで実稼働中のタンクコンテナは700基あまりで、国内では最大級だ。

 ところで、化学物質などの大量かつさまざまな種類の液体を、安全かつ効率的に運ぶにはどうすればよいか。

 身近な例ではドラム缶に入れて運んだり、もしくはタンクローリー車はタンカーなどに積載するケースが思い浮かぶ。

 だが、ドラム缶もタンクローリー車も、実はとても不便極まりない代物なのだ。なぜか?

液体貨物の天敵は不純物の混入と
詰め替え作業時の事故

 まずドラム缶だが、そもそもそれ自体の劣化のスピードが速く、ほとんどの場合、数回しか使えない。ドラム缶内部の劣化に伴い、劣化した物質が内容物に溶け出すこともある。さらに、使えなくなったドラム缶は、その処分に手間とコストがかかる。

 またドラム缶にせよ、タンクローリー車にせよ、最も問題となるのが化学物資どうしが混合してしまうリスクが大きいという点だ。

 すなわち、運んできた液体をドラム缶やタンクローリー社から抽出後、次に別の液体を入れてしまうと、タンク内に残っている物質と混じってしまい、不純化してしまう。

場合によっては過熱、発火、爆発する事態も起こりうる。

 そうした事態をさけるため、タンクローリー車などは混じり合ってもよいように、通常、運ぶ液体をガソリンならガソリンだけというように、ひとつに決めてしまうケースがほとんどだ。つまり、タンクローリー車では複数の種類の液体を運ぶことが事実上できないわけだ。

 多くの液体を必要に合わせて運ぶには、貨物の納品後、次の出荷主に引き取りに行く間に、輸送容器内に残った残留物を、ゼロになるまで完全に洗浄する必要がある。

 安全確保の徹底も重要だ。発火性の高い化学物資の輸送に際して、最も危険が伴うのが詰め替えの作業、すなわちそれまでの容器から取り出し、次の容器に移し替えるときだ。

移し替えは極力行わず、可能な限り回数を減らすの望ましい。

 こうした問題を解決するのが、タンクコンテナだ。

徹底した洗浄で
多種の液体輸送を可能に

 まず出荷元で輸送する液体をタンクコンテナに抽入する。その後、コンテナごとトラックや船舶に積載し、陸上輸送、海上輸送を経由して納入先へ到着する。

 液体の納品後、タンクコンテナは日本コンセプトの専用の洗浄機で洗浄する。

 個々の液体にお性質上、タンク内ですでに完全に固化してしまっているものや、高熱の液体がそのまま残っているものなどさまざまあるが、これを何種類もの洗浄剤を用いて洗浄し、何度も利用される。

使用回数にもよるが、35年程度は繰り返し利用できるという。

 こうしたタンクコンテナへの液体の抽入・取り出し、薬剤や蒸気による過熱によるタンクコンテナの洗浄、維持管理、微生物などを利用した洗浄廃液の浄化などはきわめて特殊な技術が必要で、他社が容易にまねできることではない。

 さらにもうひとつの特徴、それは日本コンセプトは自身では輸送の手段を持っていないことだ。

「物流手段をもたない物流会社」 ――― それが日本コンセプトの創業以来の一貫した方針だ。「物流手段をもたない物流会社」とは、どういうことなのか。

危険な液体への対応に特化し
陸上・海上の輸送はアウトソーシング

 日本コンセプトは、トラックや船舶といった輸送の手段を保有していない。

輸送はトラック会社や海運会社に発注する。

 支店・営業所は国内は川崎のの京浜支店のほか、神戸、徳山(山口県下松市)、新潟、中部(愛知県海部郡)、海外は米国とマレーシアに拠点を持っているが、これら拠点の業務はタンクコンテナの洗浄、保管であり、搬送貨物の倉庫ではない。

 すなわち物流手段も倉庫もないわけだ。

 理由は、例えばトラック自社で保有した場合、川崎から関西へ配送し、貨物の納品後は、空のトラックが川崎に戻ってくることになってしまい、売上げの立たないコストが発生する。

 こうした事態を避けるため、日本コンセプトは貨物の液体を入れたタンクコンテナの往路の配送のみをトラック会社に発注する片道配送・片道運賃に徹している。

 自社ではタンクコンテナへの抽入や、タンク内の洗浄など、他社が容易に真似できない業務に徹する。

 物流会社というよりは、危険な化学物質という厄介や荷物の荷造りと、納入先での荷ほどき、荷物を入れる特殊容器の洗浄、維持管理のみを行うサービス会社といったほうが適切かもしれない。

 こうした競争力を持つ分野への特化により、効率的な経営を実現しており、それは経営指標にもはっきり表れている。次の表をみてほしい。

 これは日本コンセプトを含む物流8社に関して、従業員1人当たりの売上高、1人当たり営業利益、さらに売上高営業利益率を比較、ランキングしたものだ。

 まず従業員1人当たり売上高は日本コンセプトが5050万円で、2位のエーアイテイ(9381)の1.3倍、1人当たり営業利益は851万円で、同様にエーアイテイの3.1倍、売上高営業利益率は16.9%で、いずれも日本コンセプトがトップだ。

 次に日本コンセプトの資産・負債構成、いわゆるバランスシートをみてみよう。

 上図からわかるように、日本コンセプトの強みであり、事業そのものであるタンクコンテナが保有資産の60.7%、総資産117億円のうちの70億円あまりを占め、無駄な資産は可能な限り削減していることがわかる。

 最後に株式公開1年目の2012年12月期の業績動向をみてみよう。

上場から2カ月経過で
株価は反騰体制へ

 2012年12月期の会社計画の売上高は前年比4.4%増の78億円、経常利益は同3.5%増の9億4000万円だが、若干ながら上振れが予想される。

 株価は上場初日の10月4日に977円まで急騰後、700円台の値動きだが、高い収益力と成長力を原動力に息の長い上昇展開が期待できよう。