そうしたヒット商品のひとつが“おにぎり”だ。日本人にはお馴染みのシンプルなこの料理を、日本語そのまま「オニギリ」の名前で販売する専門店が、続々登場。おにぎりを専門に扱うチェーン店も生まれている。
学生の多い弘大(ホンデ)前エリアにある、食事時には行列ができるおにぎり店「kamome」を訪れた。
こちらのお店では、「焼き鮭」「焼きタラコ」「ツナマヨネーズ」といった日本でもお馴染みの具のほか、「コチュジャンプルコギ」「キムチベーコン」「火鶏(プルタク)」といった韓国らしい具のおにぎりを用意し、ひとつ1000~2000ウォンという価格で販売している。
ご飯も具も、日本のコンビニおにぎりの2倍以上あるのではないかというほど、ボリュームたっぷり。また、ご飯は白米ではなく、ごま油や刻んだたくわん等を混ぜた味付けご飯となっている。
日本のおにぎり屋で勉強し、1年半前にこのお店をオープンしたチェ店長によると、同店のおにぎりは、韓国人の舌にあわせてアレンジしてあるそう。
韓国で日本のオニギリ的な位置づけにある食べ物といえば、海苔巻きだ。韓国の海苔巻きは、ごま油などが加わった味付けご飯を用いており、あわせて具も多い。
同店でも最初は、白米を用いた日本と同じおにぎりを提供していたが、海苔巻きに慣れた人にとって、白米と少量の具によるおにぎりは物足りないだろうと考え、このような形に。
おにぎりをはじめ、ラーメンやカレーなどの日本食が流行する理由は、韓国人の食文化が変わったことにあるのではと、チェ店長は話す。
これまで韓国人にとって外食とは、友達や家族とわいわい食べるものであり、しかも一人で食べることのできる外食メニューは限られていた。しかし晩婚化がすすみ、また忙しい仕事の間に食事を取る人も増え、一人で食事をする文化が一般的になったことから、こうした料理が人気を得た、というわけだ。
また、いわゆるファーストフードとは異なり、日本食には健康的なイメージがあり、これも人気の理由なのだそう。
韓国のコンビニでは以前から、「三角海苔巻き」という名前の、いわゆるおにぎりが発売されており、2000年代に入ってから代表的なコンビニ商品のひとつとして定着していた。
それなのにあえて「オニギリ」という日本語の名前で売り出す背景には、健康に良く、質も高いことをうち出してのことのようだ。
韓国に渡り、現地に適した形でアレンジされ、人気を得る日本食。それらに挑戦してみるのも、海外旅行の楽しみと言えるだろう。
(清水2000)