一風変わったメニューがある喫茶店は数多くあれど、コーヒーで炊いたご飯で作るおにぎりを出すお店も珍しいだろう。

東京都足立区にある喫茶店「山楽喫茶 千寿山荘」の土日限定、一日8個しか作らない特別メニューがこの「コーヒーおにぎり」だ。


一昨年8月にオープンしたこのお店、登山歴およそ30年の山好きのオーナー斎藤寿博さんが山小屋をイメージし、自らが内装を手がけたこだわりの店内。登山グッズや山の写真が至る所に飾られている。メニューを見ると「コーヒーおにぎり」以外はサンドイッチ、カレーなど、いたって普通だが……。

コーヒーおにぎり(1個150円)、早速いただきます。アイスコーヒーで炊いたというご飯は真っ黒で、赤米に近い?
匂いを嗅いでみたがコーヒーの香りはほとんどなし。ご飯を炊いている時は店中がコーヒーの香りに包まれるが、炊きあがるころには香りがとぶのだという。味のほうは……あれっ、意外に美味しい。もっと苦い味を想像していたのに。そしてほのかに甘い。
「甘くしないと不味いから。砂糖と塩を入れてる」とのこと。シンプルなようでいて、完成するまでは試行錯誤の日々だったという。
家族にも試食させ、今では「コーヒーおにぎり」という言葉を聞くだけで嫌な顔をされるのだとか。

この店オリジナルかと思いきや、
「長崎の寿古(スコー)コーヒーパークというコーヒー農園が併設しているレストランにコーヒーおにぎりがあるんです。うちで出すにあたって断りを入れてますが」 
元祖はコーヒーの葉っぱでおにぎりをくるみ、具はパパイヤやマンゴーという南国色の強い仕上がりだそう。こちらは海苔でまかれ、具も梅干しや紅ショウガなどその日冷蔵庫に入っているもので決まるという(ちなみにこの日はワサビ海苔)。 

おもしろいもの、限定ものが大好きという斎藤さん。コーヒーおにぎりも美味しいと言われるより、「微妙」と言ってもらいたいのだとか。
「微妙という言葉のいいところは、うまいかマズいかわからないところ。それが食べようと思わせる作戦」と語ってくれたが、実はあまり人気がないようで、常連客の中には未だに食べたことがないという人が多い。作戦は功をなしていないかもしれない……。

そして、山をコンセプトにしている割には登山が趣味というお客さんは「皆無に等しい」のだそう。とはいえ、非常に落ち着ける空間で、オーナーの人柄に惹かれて足げく通うお客さんは多い。山小屋で休憩するように、立ち寄ってみてはいかがだろう?
(いなっち)

※山楽喫茶千寿山荘(さんがくきっさせんじゅさんそう)
東京都足立区千住桜木2-7-3
TEL 03-3879-1513(イコートザン)
水曜休
営業時間:10時頃〜18時半頃消灯(特に決まっていないそう)
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