それが「笑軍天下一決定戦」だ。この大会に優勝すればテレビのレギュラーも保障されていて、間違いなく生活は安泰。田中はもうTSUTAYAでバイトしなくていいし、甲本もヒモ生活からおサラバできる。
でも、甲本はどうしても出たくない。出ても勝てないの一点張り。
甲本が「笑軍コンテスト」に出たくない理由。それは、今回こそ本当に、失敗したらあとがない「最後のチャンス」だったからだ。
今までの芸人人生で良いことはまるでなかった。その上最後のチャンスにチャレンジして、それすらもダメだったら、さらに自信がなくなる。
自信がなくなってまで芸人を続けられるのかと葛藤する甲本。

甲本はかつて、M-1の準決勝で大事なツッコミの最中に2回も噛んでしまった。そのせいで減点され、落ちたと思い込んでいるのだ。「笑軍」をビッグチャンスだ、と思うより先に、ミスをした自分のトラウマを思い出してしまう。
田中が〈笑軍コンテストに出るの、怖いんですか??〉と尋ねると、〈ふざけんなよ!! 怖いはずないだろ!〉と甲本が返す。
〈やっぱり怖いんでしょ?〉〈怖くはないって。しつこいぞ!!〉
このやりとり。10月8日から9日にかけて、ふたり合わせて12回、つまり6往復も日記をやりとりしているのだ。書くたびにお互いの家に行きポストへ入れにいく。はじめの〈嫌です〉が嘘のように盛り上がっている。
しかし、田中が〈M-1の準決勝のこと、まだ気にしてる?〉と聞き、その返事が帰ってきたのは10月11日、2日後だ。