「おい、『うさぎドロップ』おもしれえなー」
「見た見た。まあ原作コミックも読んでたけど、あんなにきれいな映像になるとは思わなかったな」
「おれは原作未読だけど、続き気になって仕方ないわ！ ……でもさ、なんか不思議じゃね？」
「え？何が？」
「主人公の大吉が、亡くなったじいさんの隠し子のりんちゃんを引き取るっていう話だろ。
「そうそう。りんちゃん超かわいいな」
「かわいいかわいい。かわいいけどさ、逆に言えばそれだけなんだよな、このアニメ。もちろんいい意味でなんだけど」
「そうだな。特にダイナミックな物語の展開があるわけじゃないし。ギャグっぽい展開でもないし、泣ける話に演出しているわけでもない、子育ての話をこつこつとリアルに描いてる」
「淡々としてるんだよね。６歳の女の子を預かることに決めました。色々大変ですが頑張ってます。それ以上に過剰に盛り上げることもしないし、ネタに走ったりもしない。本当に新しい家族の日常をコツコツと描いてる。だけどすごい面白い。
「魔法もでてこないしお色気シーンもない。悲しい物語というわけでもないし、萌えアニメとも違う。じゃあドラマの方がよかったんじゃないか？って言われるかもしれないけど、俺はアニメだからいいと思うんだ」
「あーそれは思う。ドラマも見てみたいけど、これはアニメだからいいんだよ！ 絵本水彩画タッチな画面がすごく魅力的なんだよなー。独特な雰囲気を描くためにアニメを選んだってのは凄いと思う」
「あと、りんちゃんがすごい見事に子供してるじゃないか。あれ声優松浦愛弓って子なんだけど、９歳だぞ」
「９歳！？ り、リアル子供か！」
「他に出てくる子もみんな声優は子ども。徹底してるよなー」
「どおりで妙にリアルなわけだ……いやさ、アニメも子どもっぽいしぐさめちゃくちゃ意識して動かしてるじゃん、だから子どもらしさ溢れてるんだけど、声妙に引っかかってたんだよ。そうか、あの子ども独特の声はどんなプロ声優でも出せないもんな。ん？つうことはあれか、『うさぎドロップ』は放映されたあと同じものをつくろうとしても絶対できないってこと？」
「そうなるな。声優の子役が成長するからね」
「貴重な一瞬だなあ……。まあ、そのこだわりはわかった。
「俺の中のヒントをだすよ。お前『TIGER ＆ BUNNY（タイガー＆バニー）』は見てるか？」
「見てる見てる。主人公の虎徹のヒーローっぷりたまんねーよなー」
「虎徹は、どんなキャラだ？」
「えーと、ちょっと古臭いくらいの思想の持ち主で頑固で真面目で一生懸命で父親……ん？」
「分かってきたみたいだな。他にも今期だと『ロウきゅーぶ！』って作品があるけど見たか？」
「見た見た。絵見たとき絶対ロリアニメだと思ったのに、あれ超熱血の教師と生徒のバスケ物語だよな……あれ、あ、そうか」
「俺の言いたいこと分かったみたいだな」
「なるほどね、要するに今求められているのは、もしかしたら父性かもしれないってことか。守ってあげたいとか、そういう」
「まあ、仮説にすぎないけどネットではそういう考え方がちらほら上がりはじめているんだよ。たとえば、俺もお前も四捨五入したらもう３０なわけじゃん」
「うっ、そ、それを言うなよ……いやまあ、仕事してから帰ってきてアニメ見る生活嫌いじゃないぜ」
「俺もだよ。『うさぎドロップ』の大吉は独身で、３０歳。りんちゃん育ててる姿見てどう思った？」
「かっこいい。ああなりたい。
「そうなんだよ。やってることは子育てなんだけど、すげーかっこいいんだよ。となると女の子の存在ってどうなる？」
「恋愛対象ってよりも、守りたい存在になるのか……アニメの『アイドルマスター』もそうだよな。俺はアニメから入った派なんだけど、あれ女の子たちをアイドルとして育てるために全力尽くす男性プロデューサーの話だもんな。女の子一人一人はかわいいけど、現時点であそこで手を出すとか考えられないし……」
「娘の父親って感じだよな。もしかしたら、もしかしたらだぞ。一部のアニメファンの視線は「ヒロインと恋したい」という方向から「女の子を守りたい」という視点にシフトしているんじゃないか？」
「『異国迷路のクロワーゼ』もそうだよなあ……まあ見ているのが必ずしも３０前後の男だけとは限らないけどもさ」
「うむ。そういう点では『うさぎドロップ』は本来のターゲットの女性視聴者層も多いだろ。ほら、なおのこと相乗効果で話題になるわけだよ」
「その仮説面白いなあ……俺も娘を見て癒されたいのかなあ。そして派手じゃないしみじみした話でも、視聴者層のツボに入れば話題作になる、ってことか」
「あとはきっちり良い質であることもな。もっとも物語的にはりんちゃんが高校生になると……おっと、いかんいかん」
「えっ、えっ！？ なに、どうなるの！？」
「それは続きか原作を見てのお楽しみってことで一つ」
「生殺しかよおおお！」
（たまごまご）
「見た見た。まあ原作コミックも読んでたけど、あんなにきれいな映像になるとは思わなかったな」
「おれは原作未読だけど、続き気になって仕方ないわ！ ……でもさ、なんか不思議じゃね？」
「え？何が？」
「主人公の大吉が、亡くなったじいさんの隠し子のりんちゃんを引き取るっていう話だろ。
えーとじいさんの子だから、叔母になるのか。６歳だけど」
「そうそう。りんちゃん超かわいいな」
「かわいいかわいい。かわいいけどさ、逆に言えばそれだけなんだよな、このアニメ。もちろんいい意味でなんだけど」
「そうだな。特にダイナミックな物語の展開があるわけじゃないし。ギャグっぽい展開でもないし、泣ける話に演出しているわけでもない、子育ての話をこつこつとリアルに描いてる」
「淡々としてるんだよね。６歳の女の子を預かることに決めました。色々大変ですが頑張ってます。それ以上に過剰に盛り上げることもしないし、ネタに走ったりもしない。本当に新しい家族の日常をコツコツと描いてる。だけどすごい面白い。
ネットでの評判とかすごくいいじゃん。すっげー不思議なんだよね」
「魔法もでてこないしお色気シーンもない。悲しい物語というわけでもないし、萌えアニメとも違う。じゃあドラマの方がよかったんじゃないか？って言われるかもしれないけど、俺はアニメだからいいと思うんだ」
「あーそれは思う。ドラマも見てみたいけど、これはアニメだからいいんだよ！ 絵本水彩画タッチな画面がすごく魅力的なんだよなー。独特な雰囲気を描くためにアニメを選んだってのは凄いと思う」
「あと、りんちゃんがすごい見事に子供してるじゃないか。あれ声優松浦愛弓って子なんだけど、９歳だぞ」
「９歳！？ り、リアル子供か！」
「他に出てくる子もみんな声優は子ども。徹底してるよなー」
「どおりで妙にリアルなわけだ……いやさ、アニメも子どもっぽいしぐさめちゃくちゃ意識して動かしてるじゃん、だから子どもらしさ溢れてるんだけど、声妙に引っかかってたんだよ。そうか、あの子ども独特の声はどんなプロ声優でも出せないもんな。ん？つうことはあれか、『うさぎドロップ』は放映されたあと同じものをつくろうとしても絶対できないってこと？」
「そうなるな。声優の子役が成長するからね」
「貴重な一瞬だなあ……。まあ、そのこだわりはわかった。
雰囲気作り、子供らしさの演出。十二分すぎるくらいわかった。だけどみんながこの作品を話題にするだけの、もっと決定的な何か魅力がある気がするんだよ……」
「俺の中のヒントをだすよ。お前『TIGER ＆ BUNNY（タイガー＆バニー）』は見てるか？」
「見てる見てる。主人公の虎徹のヒーローっぷりたまんねーよなー」
「虎徹は、どんなキャラだ？」
「えーと、ちょっと古臭いくらいの思想の持ち主で頑固で真面目で一生懸命で父親……ん？」
「分かってきたみたいだな。他にも今期だと『ロウきゅーぶ！』って作品があるけど見たか？」
「見た見た。絵見たとき絶対ロリアニメだと思ったのに、あれ超熱血の教師と生徒のバスケ物語だよな……あれ、あ、そうか」
「俺の言いたいこと分かったみたいだな」
「なるほどね、要するに今求められているのは、もしかしたら父性かもしれないってことか。守ってあげたいとか、そういう」
「まあ、仮説にすぎないけどネットではそういう考え方がちらほら上がりはじめているんだよ。たとえば、俺もお前も四捨五入したらもう３０なわけじゃん」
「うっ、そ、それを言うなよ……いやまあ、仕事してから帰ってきてアニメ見る生活嫌いじゃないぜ」
「俺もだよ。『うさぎドロップ』の大吉は独身で、３０歳。りんちゃん育ててる姿見てどう思った？」
「かっこいい。ああなりたい。
いい男だよ」
「そうなんだよ。やってることは子育てなんだけど、すげーかっこいいんだよ。となると女の子の存在ってどうなる？」
「恋愛対象ってよりも、守りたい存在になるのか……アニメの『アイドルマスター』もそうだよな。俺はアニメから入った派なんだけど、あれ女の子たちをアイドルとして育てるために全力尽くす男性プロデューサーの話だもんな。女の子一人一人はかわいいけど、現時点であそこで手を出すとか考えられないし……」
「娘の父親って感じだよな。もしかしたら、もしかしたらだぞ。一部のアニメファンの視線は「ヒロインと恋したい」という方向から「女の子を守りたい」という視点にシフトしているんじゃないか？」
「『異国迷路のクロワーゼ』もそうだよなあ……まあ見ているのが必ずしも３０前後の男だけとは限らないけどもさ」
「うむ。そういう点では『うさぎドロップ』は本来のターゲットの女性視聴者層も多いだろ。ほら、なおのこと相乗効果で話題になるわけだよ」
「その仮説面白いなあ……俺も娘を見て癒されたいのかなあ。そして派手じゃないしみじみした話でも、視聴者層のツボに入れば話題作になる、ってことか」
「あとはきっちり良い質であることもな。もっとも物語的にはりんちゃんが高校生になると……おっと、いかんいかん」
「えっ、えっ！？ なに、どうなるの！？」
「それは続きか原作を見てのお楽しみってことで一つ」
「生殺しかよおおお！」
（たまごまご）
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