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足りないのはLOVEとヤンキー〈『四月は君の嘘』新川直司インタビュー前編〉

足りないのはLOVEとヤンキー〈『四月は君の嘘』新川直司インタビュー前編〉
昨年9月に発売された第1巻。3年前からピアノが弾けなくなった、元天才少年ピアニストの有馬公生。性格も演奏も自由奔放なヴァイオリニスト宮園かをり。中学生最後の春、2人の出会いから物語は始まります。夢を失っていた公生の変化だけでなく、幼なじみの椿と亮太を交えた、恋の四角関係も気になる! (C)Naoshi Arakawa 2011
エキレビ!に掲載された「一巻で選ぶライトノベル、マンガの傑作!~年末年始スペシャル■2011年ベスト10」。この中で、僕が第1位に挙げた『四月は君の嘘』2巻が、1月17日に発売になりました! そこで、著者の新川直司さんへのインタビューを実施。『四月は君の嘘』のことだけではなく、漫画家デビュー前や、前作『さよならフットボール』などについても、じっくりとお話を伺いました。2部構成のまずは前編です!

――『四月は君の嘘』、月刊少年マガジンでの連載開始前から注目していた作品で、「2011年に1巻が一番面白かった本」にも選ばせて頂きました。先日発表された「マンガ大賞2012」のノミネート作品にも選ばれるなど、ますます評価が高まっていますね。
新川 ありがとうございます。恐縮です。僕なんかに……。認めていただいたこと、素直に嬉しいです。頑張ってきた、ご褒美だと思ってます。でも、身の引き締まる思いでもあって。評価して頂いた方々を失望させないよう、これに浮かれることなく、苦しみながらもいい漫画を描きたいです。
――今回は、“漫画家・新川直司”がどのように誕生したのかというお話から、伺いたいと思っています。まず、新川さんが漫画を書き始めたのは、いつ頃ですか?
新川 子供の頃から漫画は大好きで、チラシの裏に『キン肉マン』や『北斗の拳』を必死に模写してました。ノートの端に四コマ漫画を描いたり、自分で考えた超人や(『聖闘士星矢』の)クロスを描いたり。どこにでもいる漫画少年でしたね。父や兄が買った青年誌なども読んでいましたし、ヒマさえあれば家にある本を読み漁ってました。あの頃は、いくらでも時間がありました……。
――本当に、子供の頃は時間があり余ってましたよね……(遠い目)。ところで、マンガ少年だった新川さんが、「プロの漫画家になる!」と考え始めたきっかけは?
新川 僕の出身地はすごく田舎で、「漫画家になる」なんて言ったら「夢見てんじゃねぇ!」と怒られるようなところだったんです(笑)。高校を卒業して、実家から離れた大学に進学したのですが、そこで知り合ったヤツが「俺、漫研に入るんだ」と堂々と言い放った時、ちょっと感動しました。「そんなことを大声で言うなんて、なんて猛者だ」と。その時、「俺も漫画家を志してもいいのかな」と思ったのを覚えてます。それからは、そいつに「漫画ってどうやって描くの?」とか、「トーンってドコに売ってるの?」とか、興味無さ気に聞いては情報を集め、家で一人コツコツと描いてました。
――友達には内緒だったのですね。その後、どのような経緯で月刊少年マガジンからデビューすることになったのでしょう。編集部への持ち込みなどをされたのですか?
新川 僕は電話が超苦手なので、持ち込みは頭になかったです。持ち込みをする時は、事前に電話予約するのが礼儀ですから。応募した賞(「月刊少年マガジンチャレンジ大賞」。現在は、月刊少年マガジン グランドチャレンジと改称)で運良く担当さんに拾ってもらって。それからは、担当さんに色々と教わりながら読みきり作品を書き、賞に投稿していました。僕はアシスタント経験がなく何も知らなかったもので、漫画のいろはは担当さんに叩き込まれたんです。
――そして、2007年に、辻村深月さんのミステリー小説『冷たい校舎の時は止まる』のコミカライズで、連載デビューを果たされます。
新川 そろそろ賞出しは卒業かなという時期、『さよならフットボール』の原型になるネームを描いていたんです。そして、コミック約一冊分くらいのネームに担当さんのオッケーが出たその場で、『冷たい校舎の時は止まる』のコミカライズのお話を頂きました。その時は、「またネームからかっ!?」とボーゼンとしましたね(笑)。
――すごいタイミングだ(笑)。では、『冷たい校舎の時は止まる』の連載が終了後、そのネームが復活。マガジンイーノで『さよならフットボール』の連載が始まったわけですね。
新川 はい。そういういきさつもあって、ネームもたんまりとあったので。マガジンイーノでの連載のお話を頂いた時、自然な流れでそうなりました。今思うと、いや当時も思っていましたが、イーノの中では若干浮いていたような……。
――そうでしょうか? でも、僕は『さよならフットボール』がきっかけで、新川さんのファンになったんです。サッカーが好きで、サッカー漫画もよく読むのですが、練習や試合シーンの描写を見て、“この作家さんもサッカーが好きに違いない”と思っていました。
新川 自分自身がサッカー部などにいた経験は無いのですが、好きで良く観ていました。僕がネームを描いていた頃、サッカー漫画は少なかったので「じゃあ俺が描こう」と(笑)。
――では、主人公を男子顔負けのテクニックを持った女子中学生にしたのはなぜですか?
新川 ネームを描く前に、女子サッカーの澤穂稀選手のドキュメンタリー番組を観て、女子サッカーのプロ選手がいるのを初めて知りました。しかも、アメリカにサッカーのプロリーグがあるなんて! 恥ずかしながら全然知らなくて……。その当時は、女子サッカーも、もっと人気が出れば良いなという気持ちもありましたね。それが、去年のW杯で優勝までしちゃって……。このまま人気が定着して欲しいです。
――この作品の連載中、特に意識されていたり、大変だったりしたのは、どのようなことでしたか?
新川 大変だったことは挙げればキリがありません。まだまだ未熟なので。その中でも“熱さ”はずっと頭にありました。少年誌のスポーツ漫画に、“熱さ”は必須ですから。お話の熱さは当然ですが、人の熱気。試合中の荒い呼吸や身体から感じる温度。そのキャラが隣にいるかのような熱は表現したかったです。でも今振り返ると、「もっといろいろやれたなぁ」と反省しきりです。
――初のオリジナル作品の連載を終えたことで、コミカライズ作品だった『冷たい校舎の時は止まる』とは異なる手応えや自信も感じられたのでは?
新川 (最初に)『冷たい校舎の時は止まる』を描かせて頂いて良かったと、本当に思います。当時は全力で取り組みましたが、試行錯誤の連続で……。課題と反省が山積みでした。『さよならフットボール』では、それが少し減ったでしょうか。特に、絵で表現できることってたくさんあるんだなと、痛感しました。
――その次にどんな作品を描くのかというアイデアは、すぐに固まったのでしょうか。
新川 何を描くかは、すごく悩みました。やりたいものがたくさんあって、絞りきれず。ネーム段階で、どれも中途半端なクオリティのものばかり……。それでも次の作品は、長く続けなくてはならないと思ってました。悩みすぎて、担当さんに「今の月マガに足りないものは何ですか?」と聞いたこともありましたね。
――いったい何が足りなかったんでしょう?
新川 2人の名物敏腕編集さんいわく、「LOVE」と「ヤンキー」だそうです。
――「LOVE」はともかく、新川さんの描くヤンキー漫画は想像できません(笑)。
新川 僕もヤンキー漫画は無理だと思ったので、「思う通りにやれ! 暴れろ! 精神的ヤンキーになれ!」と言ってくれているんだな、と都合よく解釈しました(笑)。今は好きにやらせてもらってます。
――では、“精神的ヤンキー”になって描かれたという『四月は君の嘘』について、伺いたいのですが(笑)。中学生のピアニストとヴァイオリニストを主人公にした、この作品の出発点。発想の根幹はどのようなところにあったのでしょうか?
新川 『四月は君の嘘』は、賞へ投稿していた頃に描いた作品が元になっています。僕の生活とクラシック音楽は縁もゆかりないのですが、「ヴァイオリンを弾く女の子が描きたい!」という安直な思いつきから始まりました(笑)。
――縁もゆかりもなかったのですか(笑)。
新川 この作品を描き始めるまで、僕の人生でクラシック音楽に触れたことは皆無に近いです。楽器も、音楽の授業でリコーダーを吹いたくらいしか……。高校時代はヘヴィメタ小僧で、レッド・ツェッペリンやクイーンズライクなどを聴いてました。「ヴァイオリンを弾く女の子が描きたい」と思った当時の自分に、「なぜだ?」と聞きたいくらいです。きっとテレビか何かで、偶然演奏を観たんでしょうね。結局、当時は満足いく形にならず眠らせることになったのですが、音楽を題材にした漫画は、いつか描きたいと思っていました。瑞々しく成長する少年少女の心情と、美しい旋律が、合っているような気がしたんです。
(丸本大輔)

(後編に続く)

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