幼い頃、新しいノートを買うとそれだけでウキウキだった。下ろしたてのノートには、自分の中で最高に丁寧な文字を書き連ねる。
何しろ、愛情があるから。
ところが今、あの繊細な気持ちは何処へ行ったやら。使いたてで、いきなり救いようのない汚文字を書き込んでしまう自分。後で読み返すと、我ながらちっとも解読できない位の。いかん、いかん……。

でも、このノートだと変われる気がする。
きっと、愛情を持てる。三省堂書店・神保町本店では、4月1日よりオリジナルのノートを1冊からその場で製作してくれる『神保町えらべる帳(ノート)』をスタートさせているのだ。
これは、まさにノートのオーダーメイド。表紙・裏表紙・ノート用紙・罫線等をいくつかの選択肢からチョイスし、自分だけのノートが作れるというサービスである。

私も仕事柄、ノートはよく使う。ただそれらにこだわりは無く、コンビニ辺りで買った適当な大学ノートばかりを使っているのが現状。
よ~し、せっかくだからこの機会にオンリー・ワンのノートを手に入れてやろうじゃないか!
その前に、色々と質問をしてみました。まず、このようなサービスを開始したきっかけは?
「一昨年の12月から、出版社に在庫が無いものや絶版もの、洋書など入手が難しい作品を、データを基にこの場で印刷して製本する『三省堂書店オンデマンド』なるサービスを手掛けております。今回のサービスは、その際に使用していた製本機を活用しているんです」(同店・担当者)
印刷力が非常に強い機械の力を最大限に活かすため、印刷したものを製本しノートを作るという今回の試みを思い立ったという。よって『神保町えらべる帳』で作成するノートは、罫線をその場で印刷しているそうだ。また、手が込んでるな……。

ということは、あれか。
出来上がるまでに、結構な時間を待たされてしまうのか?
「10分くらい、長くても15分ほどでノートは出来上がってしまいます」(担当者)
作成に際しては「革ボタン」や「留め具」、「名前の刻印」などのオプションメニューもあるのだが、それらを含めても15分ほどで完成してしまうとのこと。綴じるだけだったら、ものの5分もかからないようだ。

ちなみに、ノートのレパートリーは何種類ある?
「う~ん、日々増えているからなぁ。用途の種類×表紙の種類×罫線の種類×縦書きor横書きとあるので……。無限大という感じですかね(笑)?」(担当者)
6月現在でおよそ11億7600万もの組み合わせがあるそうで、一つ何かが増えるとレパートリーもグッと増えるというわけである。まさに、無限大……。


その無限の組み合わせの中から、私好みのノートを実際に作ってみました! まずは、70弱もの種類から選ぶ表紙のチョイスからスタート。ただ、選択肢はあまりにも幅広い。さて、どうしたものか……?
「裏表紙は、厚い方がいいですよ。ペラつかず、下で支えてくれるようなものの方が」(担当者)
なるほど。ちなみにそれぞれの紙には「200g」「300g」と重さが記載されているので、ぜひ参考にしていただきたい。裏表紙は当然、重めの紙を選んだ方が良い。


その次はノート用紙を10種類の紙からチョイスし、リングは4種類から選ぶ。また、そのリングも“全部留め”と“上下留め”があるらしい。何かを書く際、手がリングに接触しないのは“上下留め”である。よし、それにしよう!
そして、肝心要のノート用紙について。スタンダードなものからコミックや銀行通帳に使われる紙、それに和紙なども用意されており、それぞれの書き心地も解説されている。罫線も「5ミリ」「7ミリ」「10ミリ」から選ぶことができるし、それどころか五線譜や英語仕様の罫線にすることも可能。
他にも通常の漫画や四コマ漫画用台割になっている紙まで。カレンダーや日本地図、世界地図まであるという。人によって、このノートの使い道は自由自在だ!

さぁ、以上の組み合わせを約10分かけて選び抜きました。では、作っていただきましょう。まず、製本機によって紙を印刷してもらい……。さて、ここからが見もの! 実は同サービスには専属のスタッフさんがおり、この方がスイスイと一人で作業を進めてくれるのだ。ハンマーを用いて「コン、コン、コン、コン……」と名前を刻印したり、リングをバチッとカマしてくれたり。なんだ、見たところほとんど手作業じゃないですか! コレ、きっとお高いんでしょう?
「表紙2枚と中身の紙40枚で、税込み1,100円(オプションは別料金)です。高いと思われるかもしれませんが、良質の紙を使っておりますしギリギリの価格設定なんですね……(笑)」(担当者)
もし全ページを書き埋めたとても、新たにページを入れ替える「リノート」(250円/20枚)というシステムを活用すれば良い。長期的に考えたら、決して高い買い物ではない。事実、ひと月に平均して300冊以上の注文が寄せられているという。表紙には使えば使うほど味が出て来る紙も用意されているし、繰り返し使っていこう!

私は今、本気でこのノートを愛用してます。だって、世界に一つしかないんだもの!
(寺西ジャジューカ)