幻想的なシマウマの写真である。ハヤシユタカさんが撮影した動物の写真が、横浜で開催されたカメラと写真映像の情報発信イベント「CP+(シーピープラス)」内の写真展「御苗場」(写真家・テラウチマサト プロデュース)でエプソン賞を受賞した。
普通の動物の写真とは違って、どこか人を立ち止せる力のある写真の数々。早速、ハヤシユタカさんにお話を伺った。

――なんだか、思わず見入ってしまう写真ですね!
「2003年にデジタル一眼レフを買った時から、よく練習として動物園に写真を撮りに行ってたんです。初めは動物をかっこよく撮るということでしたが、次第に動物たちが一瞬見せる表情を見るうちに、綺麗に写すというよりも動物それぞれの感情をうまく表現しようというように意識するようになりました」

――写真のタイトルを「言葉のない対話」にしたのは?

「動物園といえば、普段見れない動物たちを見に行くためのレジャースポットで、家族連れの人達が子どもたちとたくさん来ていますが、何度も通っていると珍しさとかではなく、限られた空間で動物それぞれ何を考えているのか?などを考えていくうちに、『対話』をしているような感覚になってきたので、『言葉のない対話』というタイトルにしました」

――背景が黒いこともあって、神秘的な写真に見えますね。
「動物にはそれぞれカラフルな模様がありますが、個々の表情をより強く感じ取って欲しかったので色情報を排除していきました。といってもモノクロにしたのではなく、若干のカラー情報を残すことによって、動物たちの質感を出すことを何度も印刷して試しましたね」

――実際の印刷した写真を見ると、本当に美しいです!
「サイトの写真ではわかりにくいですが、実物の写真の皮膚や毛などの見せ方にこだわりました。
そういった、印刷にこだわった部分を、プリンターを出されているエプソンの担当の方に評価していただいてとても嬉しかったです!」

――やっぱり、手間がかかってますね!
「仕事がWEB制作など、モニタをベースにした仕事が多いので、あまり細かい部分までこだわっても見えないので『ある程度でいいや』と思ってしまうのですが、今回ははじめての写真を掲載し、たくさんの人に見てもらう機会はあまりないのでとことんこだわって行いました」

こだわりが伝わってくるからこそ、写真愛好家の間でも人気が出るわけである。

「写真の背景の黒は実際の動物園では表現ないので、RAW現像の際の露出調整を行なっていきました。Photoshopなどを使うと、切り抜き作業みたいに不自然な合成になりますので、撮影する時に自然に処理できる場所に動物たちが来るのを待って、撮影後に調整する感じです。見に来てくださった方に『スタジオに動物を連れてきて撮ったの?』など聞かれましたが、まさにあのイメージで、スタジオでしっかりライティングした感じにどのように近づけるかを意識して撮影しました」

写真のように仕上げるためには、数時間はかかるという。特に毛の多い動物は大変なのだそうだ。スマホのアプリであれば、あっという間に写真が加工できてしまう時代だが、ハヤシさんの作品のように仕上げるためには一筋縄ではいかないのだ。


ハヤシさん曰く「普段、動物園に行って観察する動物とは違った感覚を感じていただけたら…」とのこと。


●おすすめの風景写真

ハヤシさんは動物の写真以外にも風景の写真を撮影している。特におすすめの撮影スポットは宮古島、京都、伊勢だそうだ。それぞれのおすすめのポイントを紹介してもらった。※PCでご覧の方は、写真と照らし合わせてご覧下さい。

(宮古島)
「現地で出逢った沖縄の人も『宮古島は本当に綺麗だ』と言ってましたが、南の方に行くと、誰も来ないような穴場のビーチがあって、そこにはヤドカリがたくさんいたり、海に潜ると『ファインディング・ニモ』に出てくるような魚がいたりして、遊びから写真を撮るのにも最高でした」

(京都)
「京都には、デザインのトレーニングも兼ねて、学校の生徒と撮影旅行に行きます。
桜や紅葉の季節も綺麗ですが、中でもおすすめは、新緑がとても綺麗な5月。特に、下調べしないで行った際に見られる感覚が好きで、年に数回は通っています」

(伊勢)
「伊勢神宮と、その周辺に広がる原生林がおすすめです。特に好きな場所は瀧原宮です。伊勢神宮は朝の8時を過ぎると、だんだんお客さんでいっぱいになってしまうので、朝5時の日の出の頃には入ります。日本一のパワースポットと呼ばれる伊勢神宮ですが、朝のこの時間は空気からして違いますね」

京都も伊勢も、とにかく早朝に撮らないと幻想的な光景にはおめにかかれないということである。ちなみに、
「京都市内は自転車でまわります。
電車やバスで移動しちゃうと、日常の中での移動になっちゃうので」

とのこと。なんと、ストイックであろうか。筆者のように電車に乗る度に爆睡してしまうのとはワケが違う。

●昨年の1年間だけで、出版した書籍は5冊(共著も含む)

と、ここまで写真について触れてきたが、実はハヤシさんの本業は写真家ではない。ここで、プロフィールを紹介すると…

2001年、有限会社ムーニーワークスを設立。WEB制作の他、記事執筆、セミナー講演、企業研修などを行う。
クリエイター育成機関デジタルハリウッドでは1999年より教鞭をとる。2004年からは、デジタルハリウッド大学大学院、明治大学大学院非常勤講師を歴任。2012年からはデジハリオンラインスクールにてHTML5をはじめWEB関連講座のeラーニング教材の開発に携わり、会社・自宅のPCからいつでも「HTML5」や「WordPress」を学べる講座を担当。

しかも、昨年(2012年)だけでも5冊の本に関わっている。
「WordPress 3.x 現場のワークフローで覚えるビジネスサイト制作」(ハヤシユタカ著:エムディエヌコーポレーション)「WebデザイナーのためのHTML5入門」(ハヤシユタカ著:秀和システム)などなど。

他にもWeb連載も執筆していて超多忙。
Webにまつわるご自身のブログのアクセスは、月間で10万アクセスを超えるという。

思わず、「う~~ん、私のような文系にはワケがわかりませんねぇ~(涙)」と、ため息をもらしたところ、ハヤシさんから
「いや、実は私も大学では経済を学んでいたので、理系や美術系ではないんです」との意外な言葉が。実は、ハヤシさんご自身もおよそ10年前に「デジタルハリウッド」で学んだ生徒だったそうだ。それが、コンピューターやグラフィックデザインや映像の世界にどんどんのめり込んでいって、やがて講師となり、著書をどんどん発表するようになり、挙句の果てには撮った写真がエプソン賞をとってしまったというわけである!

「やりたいことの中から自分が取り組んでいける場所を見つけるようにしています。自分ができることを理解して、それに向かってはとことんこだわって進んでいくという感じですね」というハヤシさん。web関連のお仕事や写真撮影の旅に大忙し。早朝の神社で、熱心にファインダーを覗いて酔いしれてPCに画像をアップいる人がいたら、その人はハヤシさんかもしれない。(やきそばかおる)

ハヤシユタカさんの写真をもっと見たい方は
http://www.html5-memo.com/zoological/

ハヤシユタカさんのブログ
http://www.html5-memo.com/

近著「WordPress 3.x 現場のワークフローで覚えるビジネスサイト制作」(ハヤシユタカ著:エムディエヌコーポレーション)
http://www.html5-memo.com/other/wordpress-book/