
3話は、こんな話
あさ(鈴木梨央)とはつ(守殿愛生)は許嫁の住む大阪へはじめて行く。
活気に満ちた町に興奮してあさが駆け出すと、謎の武士(のちの五代友厚/ディーン・フジオカ)と激突。その拍子に五代がもっていた拳銃があさの袂に入って、追いかけられるはめになる。
お姫様子役過ぎないところがいい、鈴木梨央
1話の「なんでどす」押しにしないで、今度は「びっくりポン」を繰り出してくるところに余裕を感じる。
それでいて、3話の冒頭、1話の「あさが来たで〜」と、あさを見て男子が騒ぐシーンの回想を入れて、念を押す用意周到さ。
1話からずっと口を酸っぱくするように語られるのは、あさが、江戸のおわり、女性の生き方を一方的に決められている時代に窮屈に生きていることだ。
女中のうめ(友近)の「心から思うてないことうまいこというのが大昔から女の得手でございます」なんていう台詞も皮肉が効いている。
思ってないことをうまく言えないタイプのあさは、世の風潮にはまることができず、3話では、大阪の町を走り回ったり、ジャンプして拳銃を奪ったり、挙げ句に男相手に「それがニッポン男児のすることですか?」と意見を言ったりまでする。でも、いい過ぎたことには「申し訳ございません」と丁寧に頭を下げる。
その小気味よさ、清々しさは、寝起きのフルーツのよう。朝起きたばかりでぼ〜っとした頭に、テンポのいい進行、走る人物を追いかけてぐいぐい動くカメラ、大仰に劇的な拳銃が飛ぶカットなども刺激的だ。
子役の鈴木梨央が天下を獲ったような堂々とした演技をしているものだから、惹き付けられてやまない。子役の強さは演技に没頭できる強さだなあと思う。神童のごとく名演技を見せる子役が何人か存在するなか、鈴木も、大河ドラマ「八重の桜」でも綾瀬はるか演じる主人公・八重の子供時代を演じて好評だった、できる子役のひとり。
彼女も子役ブームに乗って、CDデビューしたり本を出版したりもしているが、お姫様化するギリギリで留まっているところが好感触。
例えば、着物の襟からのぞく首の長さの分量が姉のはつとまるで違う。着物の女の首の長さは、いまでいう女子の絶対領域(着物だとほかに見える肌部分がないので)のようであり、そこに女の美が集約されるといってもいいくらいだが、そんなことをふっとばして、鈴木のあさは輝いている。可愛すぎず不細工過ぎない、場合によってどっちにも転じることのできる如才なさが、たのもしくもあり、こわくもある。あまりお姫様になってしまうと、ドラマがスター公演のようになってしまうので、程よくドラマに奉仕する子役であっていただきたい。
ちなみに、原作「小説土佐堀川 女性実業家・広岡浅子の生涯」の13ページに「浅子は外股でのっしのっしと歩いた。躾の厳しい三井家で、どんなに礼儀作法を教え込まれてもこれだけは直すことができなかった」とある。あさがやたらとのっしのっし歩くのは、原作に忠実なようだ。
今日の、名優
亀助「野良猫だすか」
新次郎「捨て猫や」
字にすると、ごくふつうの会話を、なぜかおもしろく聞かせてしまう三宅弘城(加野屋の中番頭・亀助役)の登場も楽しめた。
(木俣冬)