番組は、先週からの番組開始50周年を祝うムードを残しつつ、50年の「笑点」事件簿のコーナーで「歌丸、死亡事件」とか「歌丸が救った好楽引退事件」といったエピソードをとりあげるなど、全編にわたって歌丸にスポットが当てられた。それでも、当人は自分から前に出ていくというよりは、あくまで番組の引き立て役に徹していたように思う。

新司会者の発表もしごくあっさりしていた。最近のテレビでありがちなCMをまたぐなどしてズルズルと引っ張ることはなく、歌丸の口から「昇太さんにお願いしたいと思います」ときっぱり伝えられた。そのあとも花束贈呈といったセレモニー的なものはなし。湿っぽさを一切感じさせないまま、まさに五月晴れの空のようにさっぱりと番組は終わり、粋ですらあった。

むしろこの日、歌丸にディープに迫ったのは、「笑点」よりも21時からのNHKスペシャルだった。「人生の終(しま)い方」と題する特集で歌丸は案内役を務めるだけでなく、自らも取材対象として登場。そこでは、彼が高座を降りると用意された車椅子に乗って移動する様子、着替えるときに見せた痩せ細った体など、結構ショッキングな映像も少なくなかった。

それでも、高座に上がり続ける気迫は十分すぎるほど伝わってきた。「笑点」生放送終わりの提供クレジットの画面には、「歌丸は終わらない」のフレーズが掲げられていたが、そうか、あれはNHKスペシャルの前フリだったのか! そう思わせるほど、この日の日テレとNHKの連携は見事であった。
(近藤正高)