ようやく止まった。

9日、巨人は札幌ドームでの日本ハム戦に2対1と勝利し、5月25日から続いていた連敗が13でストップした。


ほぼ毎日のように試合があるプロ野球で2週間以上勝てないというのは、やっている選手も見ている観客もほとんど我慢比べである。キレたら負け、逃げても負け、気が付けば負け、長嶋監督の伝説の「勝つ!勝つ!勝つ!」じゃくなくて「負け!負け!負け!」みたいな怒りのデスロード。ベンチも打つ手すべてが裏目の負の連鎖。もはやファンも怒る気力も残っていないというギリギリの状況で、ようやく勝ってトンネル脱出でホッと一息。

なんだか長いテスト勉強がようやく終わったみたいな雰囲気になってるけど、肝心の受験シーズンっていうか運命のポストシーズンはまだ先だ。そうなんだ、目の前の連敗しか見ていなかったけど、巨人の今シーズンはまだ86試合も残っている。冷静にセ順位表を確認すると首位広島とは12.5差と突き放されたが、3位DeNAとはわずか3.5差である。

まだクライマックスシリーズ出場は絶望視するほどではない。となると、やはり重要なのが大型連敗脱出後の戦いぶりである。

10連敗した2006年の巨人


そこで今回はひとつのサンプルとして、巨人が前回10連敗した06年シーズンを振り返ってみよう。記念すべき第1回WBCが開催されたこの年、巨人では原辰徳が3年ぶりに監督復帰。

4月はいきなり1引き分けを挟んで8連勝を記録し、開幕ダッシュに成功。最多貯金14としばらく首位を走るが、5月25日から30日にかけて5連敗。
その後、6月初旬に5連勝して再び首位に返り咲くも、ここからが地獄だった。

6月は高橋由伸、小久保裕紀、阿部慎之助と代えの効かない主力陣に故障者が続出して、開始2年目の交流戦でチームは急失速。この時、原監督の名言「上手い選手はいらない、強い選手が欲しい」が生まれることになる。

8連敗→10連敗→9連敗……


その戦いぶりを振り返ってみると、まず6月6日から14日まで8連敗。ようやく連敗が止まったと思ったら、今度は18日から30日まで球団では75年以来となる二桁の10連敗。6月だけでなんと19敗も喫して、もちろん貯金を使い果たし、Bクラスに転落。
あれ? なんだか2017年に似ているな……じゃなくて、注目したいのはこの先だ。二桁連敗から脱した直後、なんとまたもやアリ地獄のような連敗街道へ。7月4日から14日までは9連敗。要は約1カ月ちょいの間に「8連敗→10連敗→9連敗」である。

ちなみにセ・リーグでクライマックスシリーズが導入されるのは翌07年から。この頃は優勝が絶望的になると即消化試合突入という超シビアなペナントだった。日本中がサッカードイツW杯と中田英寿の電撃引退に盛り上がっていた頃、巨人のペナントはひっそりと終わりを告げたわけだ。


原辰徳が語った本音「とにかく選手がいなかった」


とにかく連敗が終わったと思ったら、それは次の連敗の始まりだったみたいな泣ける展開。まさに30メートル歩くごとにカツアゲされるような悲惨なシーズン。終盤の9月23日から10月1日にもすかしっ屁のような6連敗を喫している。

結局、首位中日に23.5ゲーム差をつけられ2年連続Bクラス、4年連続V逸。チーム打率.251は12球団最低と屈辱的な結果でフィニッシュ。そのあまりに豪快に負けまくったシーズンを、原監督はのちに自著『原点』で「最多の貯金14と独走したが、終わってみれば借金14だ。あの“マイナス28”という数字は忘れられない」と自嘲気味に回想している。

そして当時のチーム状況については「驚いたことに、とにかく選手がいなかった。主力選手が相次いで故障し、それは年間を通じて絶えなかった。それをフォローすべき控え選手は、まだ独り立ちしていなかった。誰かいないのか。もうどうしようもないから、誰かスターティングメンバーを決めてくれ、と。そのぐらいのメンバーで戦っていた。
残念なことに、そんな環境でしか戦えないチーム作りを巨人がしていたということだ」と本音満載で振り返っている。
これを今読むと、やはり現在の世代交代が求められるチーム状況と非常に近いと言えるのではないだろうか。

翌2007年にリーグ優勝した巨人


ちなみに屈辱のBクラスに終わったを原監督はFAで小笠原道大を補強、トレードで谷佳知を獲得、そして高橋由伸をトップバッターに起用するという新打線を引っさげ翌07年のリーグ優勝を勝ち取ることになる。(翌08年、09年もリーグ優勝)。35本塁打の1番由伸、打率.318の2番谷、3割・30本塁打の3番小笠原が並ぶ破壊力満点の上位打線は今でも語り草だ。

さて、苦しみあがいた果てに13連敗でストップした由伸巨人。確かに連敗は止まった。だが、これで終わりではなく、この大型連敗がチーム再建の始まりの合図だと個人的には思う。っていうか、頼む、そうあってくれというのが偽らざる本音である。
(死亡遊戯)


(参考文献)
『原点』(原辰徳/中央公論新社)
『週刊プロ野球セ・パ誕生60年』(ベースボール・マガジン社)
編集部おすすめ