しかし、人情物というのもちょっと違うかもしれない。なぜなら、出てくるヤツ出てくるヤツことごとく嫌なヤツで、いわゆる“良い話”はほぼ描かれなかったからだ。「あれ?コイツ実は良い奴じゃないの?どこでどんでん返しするの?今?この後?もう5分しかないよ?」と、ずっと混乱してしまった。

前回に引き続き良い話っぽい!
赤塚探偵事務所が家賃を滞納しているとかほる(山口智子)から聞かされ、五郎(瑛太)、グレ(森田剛)、蘭子(深田恭子)は、必死でビラ配りをする。すると五郎は、街中に元悪役レスラーの外道番長(後藤洋央紀)を見かけ声をかける。外道番長は、その風貌と違って気さくで良い人だった。
ビラを見た幼稚園の先生・杏里(樋井明日香)は、園児のためにヒーローショーをやって欲しいという依頼をする。赤塚探偵事務所のビルのオーナーである、スナック輝のマスター(中岡創一)とアルバイトの萌美(片山萌美)と6人で準備を進めた。
そしてヒーローショー前夜、外道番長はバーと間違えて赤塚探偵事務所に現れる。そこで五郎と意気投合し、「子供達に善悪を教えるため、悪役は必要。だから面白い」と、悪役の美学を語った。
ポイントは、杏里が元彼からDVを受けていたということ。外道番長が杏里に対して何か思うことがありそうだということだ。
ざんね~ん、全員嫌なヤツでした~
多少のアクシデントはあったものの、ヒーローショーは概ね順調に進んでいった。そこに外道番長が突如現れ、ショーをぶち壊してしまう。元カノである杏里を迎えに来たとのことだ。
ここで、客としてショーを観に来た霊媒師・節子(蒼井優)が「助けて~レッドマ~ン」と子供達を巻き込んで、五郎達にムチャ振りをする。これで吹っ切れた五郎達は、“レッドマン”として下赤塚の平和を守るために外道番長に戦いを挑む。客(子供たち)から見たらお芝居だが、本当は本気という劇中劇の黄金パターンだ。この時の五郎達は、顔が紅潮させ切羽詰まった感が出ていてすごくいい。
しかし、DV野郎の外道番長が強すぎて手も足も出ない。仕方なく節子は超能力で金縛りにし、五郎とグレは動けない外道番長を二人がかりでボコボコにする。全然悪いことではないのだが、さっきと比べて二人が全然カッコ良くない。
「外道番長、実は良い人でした~!これも子供達のためです~」という展開を今か今かと待ちかまえていたのだが、外道番長は結局悪者で、翌日には逮捕のニュースが流れる。「悪役レスラーに悪い奴はいない」という定説を完全に覆す見たこともない後味の悪い展開だ。
それでも、お金が入って事務所の家賃が払えるからとりあえずは“めでたしめでたし”か、と思ったら、今度は「ありがとう。レッドマン」とか涙を滲ませていた杏里が、「ショーの最中に外道番長が木琴を壊したので報酬は払えません」。悪者ではないが、完全に嫌なヤツだ。
挙げ句の果てに、外道番長に投げられて大ケガを負ったマスターが「こんな酷い目にあって、君たちをここに居させる理由なんてないからな!」。かわいそうなのは確かだが、マスターはヒーローショーにノリノリだった。しかし、これでは友情も何もあったものじゃない。良い感じだった人達が次々と嫌なヤツに変貌した。もう笑ってしまう。
そもそも良い話を作る気なんてなかった?
最終回につなぐために借金苦を継続させたいのなら、「幼稚園のヒーローショーのギャラでは全く足りない」か、「金はともかく、ケガさせられたからむかついた!」とマスターの器を小さくすれば済んだ話だ。つまり、杏里を嫌なヤツにしたのは絶対にわざとだ。
つまり、初めから良い話を作る気が無かったのではないだろうか?「悪そうに見えて実は良い人。人間、やはり見た目じゃ無いよね」って話をもう1つ掘り下げて、今回は「悪そうだろうが、良い人そうだろうが、人間そんな簡単には本質はわからないよ!」っていう話なのではないだろうか?
外道番長に影響されて杏里が「ぶっ殺す」とか汚いセリフをヒーローショーの脚本に入れたのも、ただの可愛い幼稚園の先生ではないという描写だし、冒頭で外道番長もカラアゲ棒の串をポイ捨てしていたのも、そう考えると納得が出来る。
(沢野奈津夫)