巨大カジノを舞台に、怒ったマフィアから息子を取り戻せ!
ラスベガス。深夜の車道で、殺人課の刑事ヴィンセントは相棒とともにドラッグの輸送車を襲撃、25キロのコカインを強奪する。しかし、その際の銃撃戦で麻薬組織の2人が死亡。刑事の立場で証拠隠滅を図ろうとするヴィンセントは、自らが起こした銃撃事件の捜査に志願する。ヴィンセントと相棒は、マフィアからの内部情報を元に金儲けを企む汚職警官なのだ。
一方、汚職警官の摘発を担当する内務調査官のブライアントは、事件現場で警察官向けの銃弾が回収されたことに着目。
ルビーノのカジノには、マフィアのボスであるノヴァクとその手下が押しかけていた。ヴィンセントが強奪したコカインは元々ルビーノからノヴァクへ売り渡されるはずのものであり、取引を潰されたノヴァクは激昂。
そこに現れるヴィンセント。彼は息子が返してもらえなかった時の保険として、まずコカインの大半をトイレの天井裏に隠し、2つの包みだけを持って交渉に挑む。しかしヴィンセントは内務調査官のブライアントに尾行されており、彼女はトイレで発見したコカインをカジノのスパのロッカーに移す。ここにきて、コカインを返せば息子が戻ってくるはずだったヴィンセントの計画は大きく狂いだす。果たしてヴィンセントは息子を取り戻すことができるのか。
『スリープレス・ナイト』は、元々2011年に製作されたフランスの映画であり、今回公開されたものはそのリメイクだ。舞台はパリのナイトクラブからラスベガスの巨大カジノに移り、ザラッとした実録風だった映像はアクション映画然としたゴージャスなものに変更。アクションもマシマシで、さらに悪役をルビーノとノヴァクという2人にすることで、より先の読めないストーリーへと変化させた形である。
巨大カジノという密閉された空間で、時間制限付き(なんせ取引が遅れたらより怖いノヴァクの父親が出張ってくるのだ)の死闘が繰り広げられるというストーリーは否応なしの切迫感が。加えて、カジノに乗り込む前にヴィンセントは腹を刺されており、この重傷を負った状態で一晩中戦わなくてはいけないという設定もハラハラさせる。
「ひとつのマクガフィン(この作品では25キロのコカイン)を複数の登場人物が取り合う」という筋立てはアクション映画としては割と古典的だが、ここに「ヴィンセントの息子」というヴィンセントだけにとって重要な要素を加えることでツイストをかけた脚本も秀逸。というか、やっぱり古典的なストーリーっていうのは強いな……と改めて感じさせてくれる内容だ。元々のフランス版からストーリーの大筋は変わっていないので、そりゃリメイクしたくなる気持ちもわかるのである。
強そうで強くない少し強い男、ジェイミー・フォックス
リメイクにあたって「トンチが効いてるなあ!」と感心したのが、主演をジェイミー・フォックスにした点である。「主人公、大ピンチだけどこの後どうすんの!?」というハラハラ感で引っ張る映画なので、ちゃんとピンチっぽく見える人が主人公じゃないと成立しない。
で、ジェイミー・フォックスである。ヴィンセントは汚職警官なので見た目もある程度ワルそうじゃなきゃいけないし、加えて前述の理由から強そうすぎても映画が成立しない。でもある程度は強そうじゃないとアクションに説得力がないし、おまけに息子思いなキャラクターだからあんまりコワモテすぎても困る。
ジェイミー・フォックスの見た目は、そのあたりの条件をかなり満たしている。
最初のフランス版で主人公を演じていたトメル・シスレーもそのあたりを意識した見た目の人だったけど、ジェイミー・フォックスに関してはほとんど当たり役といってもいいハマり具合。一応続きも作れそうな終わり方だったし、できればシリーズ化してほしい。おれは見に行きます。
【作品データ】
「スリープレス・ナイト」公式サイト
監督 バラン・ボー・オダー
出演 ジェイミー・フォックス ミシェル・モナハン ダーモット・マローニー スクート・マクネイリー ほか
1月20日より公開中
STORY
25キロのコカインを強奪した、悪徳警官のヴィンセント。しかしコカインの持ち主であるカジノ王ルビーノは、報復としてヴィンセントの脇腹を刺し息子を拉致する。コカインをルビーノに返すべくカジノに向かうヴィンセントだが、彼の素行を見張る内務調査官のブライアントに追跡されていた
(しげる)