
ナンパなチャラ男に突き落とされた美女、復讐鬼として荒野に復活!
不倫はよくない。バレた時には周囲に迷惑をかけるし、裁判沙汰にでもなったら目も当てられない。
2人だけで休暇を過ごすものだと思っていたジェニファー。しかしそこに、リチャードが呼んだ狩猟仲間のスタンとディミトリが現れる。銃や装備を抱えた男2人がいきなり増えたことに驚くジェニファーだが、スタンの方はそんなことに構わずジェニファーを舐め回すように眺める。なんせ場所は人里離れた砂漠の真ん中の別荘。つい気が大きくなって暴走したスタンにジェニファーは強姦され、彼女はリチャードに助けを求める。が、リチャードは口封じのために大金を渡そうとし、しかも2人の関係を清算しようとしてくる。ブチ切れたジェニファーは着の身着のままで別荘から逃げ出し、リチャードら3人に追われることになる。
崖っぷちに追い詰められるジェニファー。
串刺しになったジェニファーを確かめ、余裕でその場から立ち去る男たち。だがしかし、ジェニファーは死んではいなかった。手元のライターで胴体に突き刺さった木を焼き切り、現場から離れるジェニファー。そしてジェニファーの死体がなくなっていることから、銃でもって彼女をもう一度しっかり殺すことを決断する男たち。砂漠のど真ん中で、ズタボロのジェニファーと銃を抱えた男たちの死闘が始まる。
別荘から逃げたジェニファーの格好は上はTシャツ、下はもう下着そのまんま。おまけに靴も履いてない。その状態で崖から突き落とされて腹には木の枝が突き刺さり、おまけに敵の方が人数が多い。一方で3人の男たちは車やバイクで移動し、食料も銃も無線も持ち、余裕でジェニファーを追い詰めようとする。どう考えてもジェニファーに勝ち目はない。そこをどうひっくり返すのか……というスリルでストーリーを引っ張る。
全体的に漂うのは、70年代のアクション映画のような殺伐としたムード。
新人女性監督が繰り出した、"男女平等に脱がす"アプローチ
この『リベンジ』、監督したのは新人女性監督のコラリー・ファルジャである。これだけ血みどろの作品が一本めというのも凄まじいが、それでも「虐げられた女性が血みどろの復讐をするバイオレンスアクション映画」を女性が監督してこの内容になったという点はなかなか興味深い。
というのも『リベンジ』では、やたらとリチャードの裸が出てくるのである。別にエロいシーンでもなんでもなく、というかジェニファーと銃を向け合う壮絶なシーンなんだけど、全裸。しかもいい体をしているイケメンである。全裸の金持ちのイケメンが、必死の形相で散弾銃を振り回している。「人間が裸で必死になって散弾銃を振り回していると面白いな……」という気づきはあるのだが、それにしてもそんなに全裸じゃなくても……と思うくらい全裸だ。
対するジェニファーも、ほとんど裸同然の格好で荒野を走り回る。着の身着のまま別荘を飛び出し、そのままずっとパンツ一丁。着ていたTシャツもかなぐり捨て、上下下着姿の上に武器を身につけて暴れまわる。戦闘シーンでの全裸度合いで言ったら、リチャードとジェニファーはほぼイーブン、男女平等なのだ。女性監督が撮った映画ではあるけど、「女が裸同然の格好で武器を振り回す」という絵面の面白さを捨てないため、男の方も同じくらい脱がす。ジャンル映画としての面白さを切り離さず、2018年に公開される作品としてバランスを取る方法としては、ちょっと他で見ないアプローチである。
「美しい女が裸同然の格好で銃を振り回していると楽しい」というジャンル映画的面白さと、「そうは言っても最近のコンプライアンス的にはちょっと……」という事情に関して、「男の方も脱がして平等にする」という回答をひねり出したコラリー・ファルジャ、かなりの策士である。自覚的に血みどろアクションを撮りつつ、トリッキーなアプローチを繰り出せる監督として、今後も注目した方がよさそうだ。
(しげる)
【作品データ】
「リベンジ」公式サイト
監督 コラリー・ファルジャ
出演 マチルダ・ルッツ ケヴィン・ヤンセンス ほか
7月7日より全国順次ロードショー
STORY
砂漠の別荘に不倫旅行に来た、リチャードとジェニファー。しかし途中で現れたリチャードの友人にジェニファーは強姦され、口封じのために崖から突き落とされる。復讐を決意したジェニファーと、追撃を始めた男たちの戦いが始まるが……