「感謝の気持ちをお伝えしたく、つい先走ってしまいました! ご不快な思いをされたことを、なにとぞご容赦いただけませんでしょうか!」

綾瀬はるかの見事なまでの土下座姿でスタートした火曜ドラマ『義母と娘のブルース』第2話。凄腕キャリアウーマンの義母と娘の交流を描く物語だ。


第1話の視聴率は11.5%を記録。さらに無料見逃し配信が120万再生を記録し、初回の見逃し配信としては同枠の『逃げるは恥だが役に立つ』を超える結果となった。第2話の視聴率は少し下がって11.3%だったが、このドラマ、これから大きく化けるかもしれない。
綾瀬はるか「義母と娘のブルース」は子役がスゴい、一気コールで好き嫌いを克服2話
イラスト/まつもとりえこ

「働き方改革」から一万光年離れたモーレツ社員


バリバリのキャリアウーマン……というか、仕事にパラメータ全振りの変人・亜希子(綾瀬はるか)が冴えないサラリーマンの良一(竹野内豊)と結婚、母親と死別した娘・みゆき(横溝菜帆)とともに新しい家族を築く。

冒頭の土下座は、亜希子が家族入りの「内定通知」を出してくれたみゆき(横溝菜帆)に感謝の「腹芸」を行い、みゆきの逆鱗に触れて繰り出したもの。たしかに、あんなことされて喜ぶ子どもは今どきそういないだろう。

一度は亜希子の家族入りを撤回したみゆきだが、結局、亜希子は荷物を持って良一たちの家にやってくる。しかし、亜希子とみゆきの距離はまったく縮まらないまま。挙句の果てにはクライアントの呼び出しに応じて、突然出ていったかと思うと、朝まで酒席に付き合ったりする。亜希子は「働き方改革」から1万光年離れた、昭和感&バブル感漂うモーレツ社員だ。

みゆきとの距離を縮めるため、亜希子は家事と仕事の両立を目指そうとするのだが……。社内の女性社員たちと、結婚することを明かした亜希子の会話が興味深かった。

「部長が好きになるなんて、よっぽど素敵な人なんですよね?」
「彼は、私には欠けているものを持っている人であると言えると思います」

亜希子は質問に答えているようで答えていない。
亜希子がなぜ良一と結婚しようと決意したのかは徐々に明らかになっていくことだろう。

炸裂! 掟破りの「一気コール」


懸命に母親らしくあろうとして、みゆきの母親をコピーしようとする亜希子。実は亜希子も幼い頃に母親と死別しており、彼女は母親像をうまく描けないでいた。

それでも愚直に休みにつきあったり、ハンバーグの食材当て競争をしたり、良一と一緒に苦手な料理に挑戦する亜希子を見て、みゆきの心も徐々に和らいでいく。そして、ニンジンを残したみゆきに繰り出した亜希子のサラリーマン技は……いまやアルコールハラスメントにつながるとして社会では厳禁となった「一気コール」!

「見ってみたい! 見ってみたい! みゆきちゃんのいいとこ見てみたい! 人参食べるとこ見てみたい! そーれ、一気! 一気! 一気!」

コールに煽られて見事にニンジンを食べたみゆき。一気コール、すごいな……。

良一にうながされたみゆきは、亜希子に紫色のカーネーションを渡す。カーネーションは色によって花言葉が違うが、亡くなった母親に捧げた赤いカーネーションは「母の愛」、亜希子にわたした紫色のカーネーションは「誇り」「気品」である。なるほど、クールな亜希子にぴったりのイメージだ。

第2話は、ひたすら綾瀬はるかとみゆきを演じる子役・横溝菜帆の丁々発止が繰り広げられるエピソードだった。大河ドラマ女優と堂々と渡り合える子役って本当にすごい……。この子、目と眉の情報量が多いんだな。と思ったら、横溝菜帆って『精霊の守り人』で綾瀬はるかの幼少期を演じていた子なんだ! 将来、綾瀬はるか級の女優になるかもしれない。


キャリアウーマン・亜希子の選択


終盤、ドラマは急展開を見せる。上司の笠原(浅野和之)に「やめちまえ」と言われたダメ社員の良一が、本当に会社をやめて専業主夫になろうとしていたのだが、それを聞いた亜希子が、自分が会社をやめると言い出したのだ。

収入が少なく、仕事に意義もそれほど見出していない良一が仕事をやめて専業主夫になるのは、妥当な選択のように思える。しかし、亜希子の決意は固かった。亜希子の選択は、長時間労働で家事と仕事の両立ができないから仕事をやめざるを得ないという後ろ向きのものではない。また、「専業主婦が一番幸せ」というアバウトな理由でもない。彼女は義理の娘・みゆきの笑顔をたくさんつくるために、そばにいることに決めたのだ。

当然、会社側は亜希子を慰留するが、亜希子は社長に堂々と年俸10億円を要求する。そのときのセリフが良い。

「うちの娘はべらぼうに可愛いのです! その笑顔は少なく見積もっても1000万の価値があります。私が年に100回彼女を笑わせれば、10億になります。それを棒に振れとおっしゃるなら、10億でお願いします」

まったく理屈になっていないのだが、「子どもが可愛い」という感情は理屈ではないのである。


本日放送の第3話では、専業主婦となった亜希子がPTAと激突! 今夜10時から。
(大山くまお)

【作品データ】
『義母と娘のブルース』
原作:桜沢鈴『義母と娘のブルース』
脚本:森下佳子
音楽:高見優、信澤宣明
演出:平川雄一朗、中前勇児
プロデュース:飯田和孝、中井芳彦、大形美佑葵
※各話、放送後にTVerにて配信
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