アクションあり、ドキドキのハードボイルドが印象的だったのが初回だ。一方、第2話を一言で表すとしたら「エモい」。

第2話あらすじ
最初に言いたいのは、このドラマのストーリーを転がしているのは真柴祐太郎(菅田将暉)だということ。依頼者のデジタル記録を開けちゃいけない契約のはずが、祐太郎は理由をつけて開ける方向へ坂上圭司(山田孝之)を持っていこうとする。データを削除するだけの仕事なのに、データを頼りに依頼者の人生を垣間見てしまう2人である。
「自分のスマホが48時間操作されなかったら、スマホのデータを全削除してほしい」と依頼していた宮内詩織(コムアイ)のスマホが操作されなくなったと信号が送られてきた。死亡確認に向かった祐太郎は、自室でペンを握ったまま死んでいる詩織を発見。その傍らには、「エンディングノート」と書かれた1枚の紙が。そこには、手書きで「やっぱりデータは消さないでください」との一文が記されていた。なぜ、彼女は死ぬ直前で削除依頼を撤回しようとしたのか?
祐太郎は友人のふりをし、詩織の両親と接触。葬式に他の友だちも連れてきてほしいと頼まれ、詩織の友人を探し始めた祐太郎は春田沙也加(石橋静河)が働くガールズバーへたどり着いた。
祐太郎は沙也加に明日のお通夜に来てほしいと頼むが、彼女のことはよく知らないと断られてしまう。バーで飲んでいる客たちも「うちらは行かない方がいい」とつれない態度だった。
空気を読む祐太郎とピュアな圭司
圭司と祐太郎、2人のキャラクターは対象的だ。でも、わかりやすくはない。前回のレビューで「淡々とデータを削除しようとする圭司。ピュアで人情派の祐太郎」と称したが、もしかして浅はかだったかもしれない。
確かに、祐太郎は人情派。でも、「空気を読む」という特徴も彼にはある。状況に合わせて息を吐くように嘘をつき、口八丁で丸く収める世渡りの上手さを持っている。
圭司は融通が利かない。状況を顧みず、依頼通りデータを削除しようとする。詩織の友人を装って葬式に出席した時は真骨頂だった。
詩織の父・正路(中村育二)は、圭司と祐太郎に詰め寄った。
正路 友人が死んだというのに通夜にも顔を出さないなんて。それが友人だと言えますか! 何という世の中だ……。
圭司 そちらこそ、よくそれで親だと言えますね。彼女はハタチを超えた立派な大人だ。子どもじゃない。彼女がどう生きようとどんな友人を作ろうと勝手でしょう。実の親だろうと文句を言う資格はないと思いますが。
空気に関係なく、故人の両親へ正論を突きつける圭司。
事あるごとにデータを開けようとする祐太郎に、圭司は「彼女の秘密を背負う覚悟はあるのか?」と再三確認した。
祐太郎 どんなデータが残ってるか興味ないの?
圭司 俺が知りたいのは依頼人がどうして死の直前に思い直したのか、だ。
祐太郎 圭は人間に興味があるんだ。
圭司 ……。
祐太郎 あれ。なんか、刺さっちゃった?
データよりも人に興味がある圭司。人情派の祐太郎より、実はウェット。ピュアなのは圭司のほうだった。
圭司の見解が全てを引っくり返す
依頼人のデータの中には、詩織が友人たちと生前葬をする動画が入っていた。圭司と祐太郎は詩織の両親を事務所に呼び、件の動画ファイルを見せた。詩織に弔事を読むのは、バンド「The Mints」のメンバーで親友の沙也加だ。
「詩織は最高の友だちでした。詩織と私は音楽を嫌いになりかけたという共通の過去がありました。私たちはすぐに仲良くなった。本当に、最高の友だち」(沙也加)
「皆さんも知ってると思うけど、私は両親とうまくいかなくて、人生一人ぼっちだなあと悩んだこともありました。でも、今はここにいるみんながいます。
削除依頼を出していたのに、死の直前で詩織は思い直した。この動画を両親に観てもらいたくなったのだ。
「これは詩織さんがお二人ではなく、友人たちを家族に選んだ映像です。だから、お二人にこの映像を観てほしくなかった。だから、うちに削除依頼をしてきた。でも、突然、心不全になり、苦しみの中、必死の思いで書き加えた。詩織さんは最後の最後に、お二人にこの映像を観てほしくなった。知ってほしくなった。お二人と疎遠になった後でも自分の人生がいかに充実していたのか、どれだけ素敵な友人たちに囲まれていたのか。詩織さんは幸せな人生だった」(圭司)
感傷的で感動的。温かなエンディングを迎えるかと思いきや……
祐太郎 良かったね、詩織さん。
圭司 本当にそう思うか?
祐太郎 良かったでしょう! 自分の幸せな人生をご両親に知ってもらえて。
圭司 もし、俺が彼女だったら、両親に映像を見せたかった理由は……復讐。まあ、その辺はよくわからない。
このドラマは、必ずラストに毒を仕込んでくる。圭司の見解で、死ぬ間際の詩織の行動が全て引っくり返ってしまった。苦しみながらペンを握った彼女。圭司が「その辺はよくわからない」と言っていたように解釈は視聴者へ委ねられるものの、筆者はスッと腑に落ちた。自分が幸せになることは、相手に対する最大の復讐。当てつけと言い換えてもいい。「両親と縁を切ったから、こんな素敵な人生に巡り会えた」。
詩織の承認欲求の高さにはげんなりするし(だからコムアイの起用は腑に落ちる)、近親憎悪するほど共感してしまう。親との別離から死の直前まで、果てしなくエモいのだ。
最高の友だちに囲まれる姿を両親に見てもらいたくて、詩織は動画を残した。クールで理論的な自分を保とうとするのは圭司だ。好きな曲を聴き、ドラム代わりにデスクを叩く場面を目撃されたらバツが悪い。
人は色々な顔を持っている。でも、他人には見せたいのは一部だけ。我々はその顔だけ晒そうとしている。前回のレビューで書いた通り、このドラマのキーワードは「多面性」である。
ラストシーン、詩織のデータを削除する圭司の顔が儚げだ。The Mintsのメンバー・宮内詩織の死を悼むファンの顔になってしまっていた。決して、他人には見せない顔だろう。圭司もエモい。
(寺西ジャジューカ)
【配信サイト】
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・テレ朝動画
金曜ナイトドラマ『dele』
原案・パイロット脚本:本多孝好
脚本:本多孝好、金城一紀、瀧本智行、青島武、渡辺雄介、徳永富彦
音楽:岩崎太整、DJ MITSU THE BEATS
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)
監督:常廣丈太(テレビ朝日)、瀧本智行
撮影:今村圭佑、榊原直記
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日