アニメ『BANANA FISH』(→公式サイト)。Amazon Prime Videoで毎話フジテレビ放送開始1時間後より配信予定。


アニメ『BANANA FISH』(→公式サイト)。
「第17話 殺し屋」が今日11月1日(木)25:05より、フジテレビ”ノイタミナ”ほかで放送。Amazon Prime Videoで毎話フジテレビ放送開始1時間後より配信予定。
「バナナフィッシュ」ディノおじさん「私の育てたアッシュ最高でしょ?私のものだからね!」みたいな16話
吉田秋生「BANANA FISH」16巻表紙。16話は「バナナフィッシュ」としては珍しいドタバタアクションのある回

15話はコミカルな場面が多い脱出アクション回。
女装したアッシュが医者に痴漢されるシーンなど、今までのハードな展開はどこへいったのかというくらいカラッと明るい逃亡回になっている。
人殺しの武器をアッシュが携帯していない、じいさん(ドースン博士)をずっと背負った構図になっている……などもあって、全体的に雰囲気が明るい。

いつも大人が邪魔をする


「何で俺はいつも年寄りに足を引っ張られるんだ……!」というアッシュのセリフが今回は印象的。
中でもマックスの今回取った行動は、偶然にもアッシュの足を引っ張りまくる。
倒した警備員をダストシュートに投げ込んだところ、下にいたアッシュらを巻き込んで転落してしまう、などのシーンはドリフのコントみたいだ。

本来はアッシュを助けに来たつもりのマックスたち。ところがアッシュが自力で外に出てきた時に、今度はマックスと伊部が外で見つかって連行される。連続で畳み掛けてくるものだから、深刻なシーンなのにギャグっぽくてしかたがない。
「ふざけんなあのバカジジイども!死ぬ思いでやっと出てきたんだぞ!」

アッシュがここで2人を見捨てきれず戻っていく。
彼が過去の暴れ山猫から変わったのが、よくわかる瞬間だ。
作品序盤のアッシュは、大人は絶対に信用ならない、という牙の剥き方をしていた。
6話でアッシュの故郷に戻った時、エイジには笑顔を向けていたが、伊部が視線を向けた途端に顔色を曇らせていたのが象徴的だ。

彼の「大人」観は主に、マックスを通じて変化してきた。
マックスはどうにもおっちょこちょいなところが目立つ男性キャラだ。ただ、彼は信念を曲げずに自分のペースで、アッシュを思いやり続けている。だからこそアッシュは、自分が死んだ場合はバナナフィッシュについての命運をマックスに託そうとした。人間性はともかく、行動は信じているのだ。
時折イラッとするけれども、揺るがないで向き合ってくれる大人、父親的存在のマックス。変装で喧嘩気味の親子を演じていた2人が、徐々に本物に近くなってきた。
アッシュによるマックスの救出は、感動的なものではなく、ずっこけたもの。2人の「ある程度は本音を言える」関係にぴったりだ。


アッシュはわしが育てた


今回のディノのアッシュ愛は、前回にも増してすごいことになっている。
「知性と力、強靱な精神力、比類なき気品と美貌……それを生かすも殺すも、その権利は創造主たる私のものなのだ」
私の育てたアッシュ最高でしょ!私のものだからね!みたいな話。
彼のイメージするアッシュ像は、花に囲まれたタキシード姿で描かれていた。耽美というよりは「うっとり」が近い。

他の人間がアッシュをガキ扱いするシーンでの、ディノの反応が毎回おもしろい。
「それにしても子供なのだろ?早く捕まえることだな」と言う相手に対して、ディノは「そうしてなめてかかるがいい。お前などに分かるはずがないのだ。あれは私がつくり上げたこの世で唯一の魔性の生き物なのだからな」と返す。
また、ドースン博士を担いで脱走したことを知った際の「ただの子供が一人でドースンを連れ出して逃亡するなどできるわけが……」という反応に対しても、ディノは変わらない。
「ただの子供ではないというのは散々ご説明したはずですが?」
なんだか誇らしげだ。

周囲の人間は薬物「バナナフィッシュ」を最高傑作として見て動き回っている。
ディノにとっても大事ではあるが、それよりもはるかに、アッシュそのものが最高傑作で、一番大事。

前回、アッシュが回復するまで待って、再び追い詰めてやると本人の目の前で言って去ったディノ。
アッシュはこの建物から当然逃げることができる、と信じていたからこその態度だ。

ディノから見たアッシュは、自分の作った最高の作品。
エイジから見たアッシュは、年の近い純真な少年。
アッシュに感情移入するとエイジ視点を支持したくなるが、人間性を一回切り離して考えると、ディノの言うことは間違ってはいない。兵器というか魔物というか。
両方を持ってしまったからこそ、アッシュは諦めきることも救われることもなく、苦しみ続けている。
(たまごまご)
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