宇垣美里(TBSアナウンサー)
「私はマイメロだよ~☆ 難しいことはよくわかんないしイチゴ食べたいでーす」
これは昨年1月にネットで拡散され、宇垣アナの「マイメロ論」として話題になった言葉。人気アナウンサーとして活躍する彼女だが、人気アナゆえ理不尽な目に遭うことも多いという。そんなときは「私はマイメロだよ~☆ 難しいことはよくわかんないしイチゴ食べたいでーす」と思うようにすれば、たいていのことはどうでもよくなるというストレス回避術だ。
ものすごい現実逃避術なのだが、このフレーズが刺さる人が多いということは、それだけ世の中に理不尽なことがあふれていて、現実に疲れている人が多いかということ。ドラマ『獣になれない私たち』で反響を呼んだセリフ「バカになれたら楽なのにね」と通じるところがある。なお、出典は宇垣アナが2017年7月に雑誌で執筆したコラム。
みやぞん(芸人)
「自分の機嫌は自分でとって。人にとってもらおうとしない!」
『24時間テレビ』でトライアスロンに挑戦するなど、常に過酷なテーマに挑み続ける人気芸人のみやぞん。これは昨年4月に放送された『世界の果てまでイッテQ』の中での発言。そのときも過酷なチャレンジを行っている最中だったが、人気芸人らしく周囲のスタッフに機嫌をとってもらおうとするのではなく、自分で自分の心を整えようと言い聞かせた言葉だった。
この言葉に「それそれ!」と共感していたのは、主に女性たち。彼女たちは、急に不機嫌になってマウンティングしてくる夫や恋人に困っていたというわけ。
20歳の大学生
「お金の若者離れ」
若者の消費意欲が薄いことを表す「若者の●●離れ」という言葉に対して、そうではなく「お金の若者離れ」が起きていると指摘する大学生の新聞への投書が話題になった。
共感を集めたということは、若い人たちがこの言葉にリアリティを持っているということだろう。若い人には非正規雇用が多く、どれだけ働いても給料が上がらないという現実がある。また、若い人たちは世代間格差にも怒っている。高須クリニックの高須院長がこの言葉に対して「甘ったれるな若者!」とツイートしたものの大炎上、数日後「反省なう」と呟いた。
日大広報部
「誤解を招いたとすれば、言葉足らずであったと心苦しく思います」
これは名言というより迷言。5月、日大アメフト部の悪質タックル問題について、日大広報部が出したコメントがこれ。「1プレー目で(相手の)QBをつぶせ」というコーチの言葉が「(選手の)誤解を招いた」ことを謝罪している。命令された選手や悪質タックルを受けた選手に対して謝っていないところがポイント。失言や暴言などを吐いた後に謝罪する政治家や官僚などもよく使われる。
HIKAKIN(YouTuber)
「僕一人が100万円募金するよりも、今見てくださっている皆さんの100円の方が、ずっとずっとパワーを持っています」
7月の西日本豪雨の際、人気YouTuberのHIKAKINが動画で募金を呼びかけたときの言葉。
尾畠春夫(ボランティア)
「かけた情けは水に流せ。受けた恩は石に刻め」
8月に山口県で行方不明になった2歳の男の子を発見して一躍時の人になったボランティア、尾畠春夫さんの座右の銘。昔からある言葉だが、あらためて注目を浴びた。
“スーパーボランティア”とも呼ばれる尾畠さんは現在79歳。65歳まで働いた後、自分を育ててくれた社会に恩返しするため、全国の被災地などでボランティアをして回っている。尾畠さんがやってくるとボランティアの現場は活気づくのだそう。彼のように生きるのは難しいかもしれないが、生活に余裕のある人はどうやって社会に恩返しできるか考えたほうがいい。南青山の児童相談所の件で「ブランドイメージが落ちる」と騒いでいるような人は特に。
谷本道哉(運動生理学者)
「筋肉は裏切らない」
8月末にNHKでスタートした5分番組「みんなで筋肉体操」の決めフレーズ。
とにかくフレーズが抜群。みんな何かに裏切られているのだ。バリエーションとして「異性には裏切られるけど、筋肉は裏切らない」「仮想通貨には裏切られるけど、筋肉は裏切らない」などのツイートを見かけた。筋肉は財産だ。
大坂なおみ(テニスプレーヤー)
「やりたくないことやってる暇はねぇ」
9月に日本人で初めてグランドスラムの一角、全米オープンを制覇したプロテニスプレーヤーの大坂なおみが最近覚えたという日本語。この言葉を紹介したツイートは8万リツイート、16万いいねを記録した。元ネタはラッパーKOHHと韓国人ラッパー、キース・エイプの共作「It G Ma(イッジマ)」のワンフレーズ。さらにその元ネタはブルーハーツの「ブルースをけとばせ」。
人生のスタンダードがなくなった今、自分のやりたいことを追求し、極める人が羨望のまなざしを集めることが増えてきたように思う。また、くだらない民放のバラエティ的な質問を浴びせられる大坂なおみに「やりたいことだけやらせてやりたい」と思う人々の心がリツイート数になって表れたのかもしれない。
エマ・ワトソン(俳優)
「女の子がやってはいけない一番悲しいことは、男性のために頭の悪いふりをすることです」
「ハリー・ポッター」シリーズのハーマイオニー役などで知られる俳優のエマ・ワトソンの言葉。
実は出典が明確ではない言葉で、いつ、どこで、どんなインタビューや講演で彼女が発言したかわかっていない。ただ、この言葉が今年のムードにマッチしていたのは事実。だからこそ、これだけ大きな反響を呼んだのだろう。
ファッキングラビッツ
「いい波のってんね~」
2018年「ギャル流行語大賞」第1位。意味は「調子いいね~、イケイケじゃん」。ファッキングラビッツはデビューしたばかりのパラパラを踊る女性グループで、彼女たちの曲「イイ波のってんNIGHT」が動画アプリTikTokで使われて爆発的に流行した。
実は筆者もよく知らなかった言葉だが、とにかくこの1年でものすごく流行ったそう。ほかにもギャル流行語大賞6位の「ぐい縦ぐい横ぐい斜め的な」もTikTok発祥。これはコール。
樹木希林(俳優)
「あとは、じぶんで考えてよ。」
9月15日に75歳で亡くなった樹木希林の言葉。「絆というものを、あまり信用しないの」「病を悪、健康を善とするだけなら、こんなつまらない人生はないわよ」など、彼女の独特の価値観を表す数々の“名言”は注目を集めており、名言を集めた新聞広告がつくられたり、名言本が出版されたりもした。

これはその極めつけ。カリスマっぽい人の言葉や、権力のある人の言葉にしがみついてばかりの人も少なくないようだが、自分で考えることが何より大事。名言も頼りすぎてばっかりいるとあまりいいことはない。
こうやって見ていると、2018年は“女性”にまつわる言葉が多かったことがわかる。理不尽な目に遭う女性の言葉、世の中を元気づける女性の言葉、女性の地位向上ののための言葉などなど……。言葉は社会の写し鏡。さて、今年はどんな年になるのだろうか?