「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」がついに公開! 「GODZLLA ゴジラ」(14年)から連続する「モンスターバース」シリーズの1作であり、今回はゴジラをはじめ、ラドン、モスラ、キングギドラが暴れまくる姿が堪能できる。(オリジナル・サウンドトラック)
「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」公開記念、Amazonゴジラまつり開催中、これだけは見ておけ
「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」(オリジナル・サウンドトラック) ADA

今回、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」公開にあわせて、「ゴジラ」実写映画31作品がAmazon Prime Videoの見放題対象になった。
まさに「東宝チャンピオンまつり」ならぬ「Amazonゴジラまつり」だ。対象作品は以下のとおり。

「ゴジラ」(54年)、「ゴジラの逆襲」(55年)、「キングコング対ゴジラ」(62年)、「モスラ対ゴジラ」(64年)、「三大怪獣 地球最大の決戦」(64年)、「怪獣大戦争」(65年)、「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」(66年)、「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」(67年)、「怪獣総進撃」(68年)、「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」(69年)、「ゴジラ対ヘドラ」(71年)、「地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン」(72年)、「ゴジラ対メガロ」(73年)、「ゴジラ対メカゴジラ」(74年)、「メカゴジラの逆襲」(75年)、「ゴジラ」(84年)、「ゴジラVSビオランテ」(89年)、「ゴジラVSキングギドラ」(91年)、「ゴジラVSモスラ」(92年)、「ゴジラVSメカゴジラ」(93年)、「ゴジラVSスペースゴジラ」(94年)、「ゴジラVSデストロイア」(95年)、「GODZILLA」(98年)、「ゴジラ2000 ミレニアム」(99年)、「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」(00年)、「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」(01年)、「ゴジラ×メカゴジラ」(02年)、「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」(03年)、「ゴジラ FINAL WARS」(04年)、「GODZILLA ゴジラ」(14年)、「シン・ゴジラ」(16年)

以上31作がタダで見放題!(タダじゃなくて年会費4900円必要だけど) よくもまぁ、これだけたくさんのゴジラ映画がつくられたものである。「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」を手がけたマイケル・ドハティ監督の「映画史上最大のフランチャイズは、ボンド映画でもマーベル映画でもなくゴジラ」という言葉も、このラインナップを見れば説得力が増す。

初代「ゴジラ」はまず観ておくべき


そこで今回は「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」がより楽しめるようになる作品をラインナップの中からいくつか挙げてみたい。予習として見てもいいし、復習として見てもいいだろう。あ、「GODZILLA ゴジラ」は当たり前なので割愛します。ちなみにドハティ監督によると、「GODZILLA ゴジラ」が「エイリアン」(79年)だとすると、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」は「エイリアン2」(86年)みたいなものなのだとか。なるほど、わかりやすい!

「ゴジラ」(54年)

初代「ゴジラ」はまず観ておくべき。言うまでもないが、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」に登場する渡辺謙が演じる芹沢猪四郎博士の名前は、本作の芹沢博士(平田昭彦)と本多猪四郎監督の名前から採られている(ちなみに芹沢博士の父親の名前は英二。もちろん特殊技術の円谷英二から)。制作陣から深いリスペクトが捧げられているのだ。

ここでのゴジラは、まさに災厄そのもの。
東京に上陸して破壊の限りを尽くし、逃げ惑う人々を容赦なく殺戮する。公開された昭和29年は、東京大空襲など戦争の記憶が生々しい頃であり、さらに水爆実験で死の灰を浴びた第五福竜丸事件も起きていた。プロデューサーの田中友幸は作品のテーマを「水爆に対する恐怖」として、従軍からの帰途、原爆が落ちた広島の惨状を目の当たりにした経験を持つ本多猪四郎監督は「荒唐無稽の怪獣映画という照れを持たずに、原爆の驚怖に対する憎しみと驚きの目で造っていこう」と語っていた(NHK「ゴジラからのメッセージ」)。ゴジラと戦争、ゴジラと核の関係について考えざるを得ない作品である。

とはいえ、本作はメッセージ一辺倒の映画ではない。本多監督の演出は、説明過多に陥ることなく(むしろ、現実との直接的なリンクを注意深く避けながら)怪獣そのものの脅威と驚異をストレートに表現している。また、ゴジラがまとう神話性は、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」の怪獣たちに色濃く受け継がれている。

現在44歳のドハティ監督の最初のゴジラ体験は、4、5歳の頃にケーブルテレビで観たこの54年版だったというが、物心ついたばかりのドハティ監督にとっても初代ゴジラとの出会いは衝撃だったに違いない。なお、ドハティ監督は「ゴジラにとって王冠のような存在である背びれに関しては、54年版に近づけたかった。あれがベストのデザインだからね」とも語っている。

「三大怪獣 地球最大の決戦」(64年)

「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」と同じ顔触れの、ゴジラ、ラドン、モスラ、キングギドラが一同に会する作品。それまで単独で「ゴジラ」、「空の大怪獣ラドン」(56年)、「モスラ」(61年)という作品にそれぞれ主演(?)していた怪獣たちの初顔合わせであり、まごうことなく「東宝アベンジャーズ」だ。


ストーリーも単純明快で、金星を滅ぼした宇宙超怪獣キングギドラの脅威から地球を守るため、それまで敵対していたゴジラとラドンがモスラの仲介により共同戦線を張って戦うというもの。ゴジラとラドンがタイマンを張るシーンで、ラドンが意外と善戦するのが驚き。

本編部分も、夏木陽介、星由里子、小泉博、ザ・ピーナッツ、平田昭彦、志村喬などとオールスターキャスト。王女を演じたボンドガール、若林映子の美貌にも注目。ストーリーは「ローマの休日」からの影響もチラリ。

「ゴジラ対ヘドラ」(71年)

怪獣映画に社会問題とサイケデリックカルチャーと残酷描写をぶっこんでゴッタ煮にした「ゴジラ」シリーズ屈指の怪作。「♪水銀、コバルト、カドミウム~」という主題歌「かえせ!太陽を」もインパクト抜群。

深刻だった公害問題を題材にしており、静岡県富士市にある田子の浦湾のヘドロ公害が扱われていた。ボディペイント風の全身タイツを着た麻里圭子がサイケなディスコでゴーゴーを踊ったり、なんだか悩んでいる柴本俊夫(柴俊夫)が「公害反対100万人ゴーゴー計画」を原っぱで計画するも100人ぐらいしか集まらず、ヤケクソ気味にゴーゴーを踊るもほぼ全員ヘドラに惨殺されたりする。ヘドラの硝酸ミストを浴びた人間は白骨化してしまったりと、いろいろ容赦がない。途中、いきなり挿入されるアニメもシュール。

ドハティ監督は「子どものころに『ゴジラ対ヘドラ』を見て、本当に怖かったのを覚えている。
おそらく54年版『ゴジラ』以外で、最も環境というテーマを掘り下げた作品だと思う」とコメント。「『真のゴジラ映画は、表面の物語以上のメッセージを持っているものだ』と感じさせてもらえる映画でもあった」とも。

なお、本作の監督を務めた坂野義光は、IMAX 3Dによるゴジラの短編映画の制作権を獲得した後、アメリカ人プロデューサーとともにレジェンダリー・ピクチャーズに話を持ちかけ、「GODZILLA ゴジラ」の制作に至ったという経緯がある。坂野監督は「GODZILLA ゴジラ」と「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」の両作にプロデューサーとしてクレジットされている。「モンスターバース」の生みの親と言ってもいいだろう。

バラゴンやモスラが人を殺す理由


「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」(01年)

平成ゴジラシリーズの中でも評価が高い1本。平成ガメラシリーズ三部作で絶賛を集めた金子修介監督が満を持して「ゴジラ」に挑んだ作品である。ゴジラ、モスラ、バラゴン、キングギドラが登場するが、これまで一貫して悪役だったキングギドラがモスラ、バラゴンと協力し、凶悪かつ残忍なゴジラを倒そうとする。

金子監督はゴジラを戦争のメタファーとして描いており、ゴジラには太平洋戦争で亡くなった兵士(英霊)たちの怨念が宿っているという設定になっている。それなら、なぜ国(日本)を襲うのか、という問いには、人々が戦争のことを忘れたからだ、という答えが用意されていた。また、護国聖獣であるバラゴンやモスラが人を殺す理由として、彼らが守る“国”とは“国家”のことではない、と劇中で回答されている。

ゴジラをはじめとする怪獣たちが人々を虐殺しまくるのだが、カメオ出演が大変豪華で、島の宿で小便をしている温水洋一が建物ごと踏み潰されたり、店から品物を略奪してついで犬を殺そうとした塚本高史がモスラに殺されたり、暴走族のリーダーの木下ほうかがバラゴン出現による落盤で死んだり、漁船に乗っていた加瀬亮がゴジラに船ごと海面に叩きつけられたりする(隣にいた中村嘉葎雄も一緒に死亡)。
怪獣を可愛いと言っていた篠原ともえの最期も見もの。怪獣(=戦争、自然)への畏怖を忘れた人たちは死ぬのだ、と言わんばかり。死にはしないが、佐藤二朗も本当に一瞬出演している。

ただ、そのわりには司令部でふんぞり返っていた軍人や政治家たちが無傷だったので、そのあたりのストレスを解消したのが「シン・ゴジラ」だったのかもしれない。

「ゴジラは、人類ではなく自然に対する守護者だ。人類が自然のルールに沿って生きている限りは、人類の味方になるだろう。一方で自然に敵対すれば、彼(ゴジラ)は自然の守護者であるため、人類とも敵対する」というドハティ監督の言葉は、本作のテーマとも一致している。なお、初期構想によると、登場する怪獣はモスラとキングギドラではなく、バランとアンギラスだったらしい。そのあたりもドハティ監督の好みと似ている。

「ゴジラVSビオランテ」

様々な評価がある本作だが、ゴジラ細胞とバラの細胞と沢口靖子の細胞から生まれた怪獣・ビオランテのインパクトがすごい。ドハティ監督は好きな怪獣にメカゴジラ、アンギラス、ビオランテを挙げているので、新たな「モンスターバース」作品にビオランテが登場する可能性は少なくない。そのときは沢口靖子も出演してくれるはずだ。

(大山くまお)
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