
お弁当の中のプチトマトのような絶対的な彩り感
千葉雄大が話題の的である。主演ドラマ「いいね!光源氏くん」(NHK総合/土曜よる11時30分〜)で当たり役を得た。
千葉が演じているのは、現代に「次元ジャンプ」してきた「源氏物語」の主人公・光源氏。
突然、自室に現れた光源氏に、ヒロイン・沙織(伊藤沙莉)は最初のうちおおいに戸惑うが、一緒に過ごしているうちにじょじょに光源氏に惹かれていく。ただ、光源氏は紫式部が「源氏物語」で書いた架空の人物。架空の人物がなぜ三次元化して存在するのか……。

タイムスリップしてきた平安時代人であることよりも、この恋のハードルは高い。なぜなら、実在しない人物だから。そこが物語の面白みで、千葉雄大は、実在しない光源氏のいわゆる“2.5次元感”をうまいこと演じている。なめらかに目線を動かす様は、巧いアニメーターが描いたアニメのよう。ただ千葉雄大はいわゆる2.5次元系俳優ではない。
デビューは戦隊シリーズの主役。「天装戦隊ゴセイジャー」(10年)のレッド(リーダーが赤というのが定番)ポジション。
「家売るオンナ」シリーズ(16年〜)で演じた、女性客にモテることを仕事に生かしている不動産会社のエース社員や、「高嶺の花」(18年)で演じた主人公のライバル華道家など、キレイな花には毒がある感じの役がハマる。毒を抜いてもOKで、次期生徒会長候補の頭脳派を演じた「帝一の國」(17年)や、ヒロインの兄を演じた「わろてんか」(17年)などはこのうえもなく清く正しい。
「おっさんずラブ-in the sky-」で築いた職人俳優としての確固たる地位
その後、棋士つながりで今度はプロ棋士の「盤上の向日葵」(19年)で主演、謎の殺人事件を追う刑事を演じた映画「スマホを落しただけなのに」がヒットし、続編「スマホを落しただけなのに 囚われの殺人鬼」では主演に。
異端のプロ棋士、トラウマを抱えた刑事と、硬派な演技も凛々しく実直な雰囲気が良かったので、三十代に入り、プチトマト路線から、ピリッと清冽な青山椒路線に移行していく次期なのかなと思ったら、「おっさんずラブ-in the sky-」(19年)ではまたビジュアルを生かした役に。
ただ、これも男同士の恋をコメディとして見せながら、徹底的に真面目に演じることで清潔な想いが立ち上ってくるという難易度の高い作品。クールなイケメンに見えて、中身は飛行機を愛する勉強家、ただ恋愛に関するモラルが欠けた面があるという役を千葉はしっかり仕上げ、紅くて甘いプチトマトと辛い青山椒を永遠に行き来していく職人俳優として確固たる地位を築いた。
「いいね!光源氏くん」で飛躍の可能性の限界を突破
だがしかし、千葉雄大にはまだまだ飛躍の可能性があった。「いいね!光源氏くん」で限界突破しちゃったのである。
千葉が演じる光源氏をはじめとしたイケメンキャラの魅力を「あざとさ」として、千葉雄大の生存戦略を語る記事も多く出た。それだけ注目されている時期なのである。だが私は「あざとい」というポップさよりももっと崇高なるものを彼に感じてならないのである。
なぜなら千葉雄大の演じる光源氏には媚が見えないから。なぜか不思議とコスプレ感がなく、違う時代の生活環境や価値観の違う人間がたまたま現代に存在している雰囲気が見事。ジャージに烏帽子を当たり前みたいに着こなし、ロケの街を歩くことはなかなかできることじゃない。当たり前に貴族として生まれ、当たり前に二枚目として生きている人物のように感じられるのである。
位が高いから、どこにいてもおどおどしない。堂々と生きている。光源氏の自然と備わった自信まで腹の底から理解して演じて見せる感性と技術は空恐ろしくある。でもそれをやっていますという力みをまったく感じさせない。
そう思ったとき、思い出したのが、「音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」(18年)で彼が演じたレコード会社社員・坂口のキャラ説明であった。“チョロくて弱くて情けないキャラクターだが、それはもしかしたら全て演技なのかもしれない。裏の顔を幾つも持っていてそれを時々のぞかせる。ある意味、阿修羅な男である”というものである。千葉雄大を表すのにふさわしい言葉はこれだ! と本人の気持ちを差し置いて勝手に思ってしまう。
芸能界という生き馬の目を抜くような世界、とりわけイケメン戦国時代と言われる現代において、演技を磨き、でもその技で相手を決して殺すことなく、むしろまわりを生かし、共存することで生き抜いていく。そんな感じが千葉雄大にはするのだ。

「盤上の向日葵」のときの真剣勝負のときの表情、この顔こそこの人ではないのか。こうして千葉雄大は、この世の美と知の最高峰・光源氏くんに上り詰めたのである。
(文/木俣冬、イラスト/おうか)
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★「千葉雄大」出演作品★
最後のオンナ(2020年)
おっさんずラブ -in the sky-(2019年)
人間失格 太宰治と3人の女たち(2019年)
家売るオンナの逆襲(2019年)
盤上の向日葵(2019年)
家康、江戸を建てる(2019年)
音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!(2018年)
高嶺の花(2018年)
走れ!T校バスケット部(2018年)
しあわせの記憶(2017年)
帝一の國(2017年)
帰ってきた家売るオンナ(2017年)
亜人(2017年)
暗黒女子(2017年)
ソースさんの恋(2017年)
家売るオンナ(2016年)
殿、利息でござる!(2016年)
モヒカン故郷に帰る(2015年)
天使のナイフ(2015年)
通学電車(2015年)
通学途中(2015年)
アオハライド(2014年)
幕末高校生(2013年)
桜蘭高校ホスト部(2011年)
帰ってきた天装戦隊ゴセイジャー last epic(2011年)
天装戦隊ゴセイジャーVSシンケンジャー エピックON銀幕(2011年)
ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦(2011年)
天装戦隊五泉ジャー エピック ON THE ムービー(2010年)
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