「神童」ウーデゴールのラストパス。現代サッカーを攻略する必殺技とは?

「神童」ウーデゴールのラストパス。現代サッカーを攻略する必殺技とは?

林陵平のマニアック技術論 Vol.7

Martin Ødegaard
マルティン・ウーデゴール
(レアル・ソシエダ)
1998.12.17(21歳) 178cm / 68kg MF Norway

海外の有名どころからマイナー選手まで幅広く網羅したゴールセレブレーションで話題になった林陵平は、自他ともに認める「JリーガーNo.1の海外サッカーマニア」だ。そんな彼が“今見ておくべき選手”のスキルを徹底解剖。今回は16歳でレアル・マドリーに移籍し、今季レアル・ソシエダで大ブレイク中の「進化した神童」マルティン・ウーデゴールの「ラストパス」を解説する。

 今回紹介するウーデゴールを知ったのは、16歳でレアル・マドリーに移籍して大きな話題になった時ですね。「すごい選手がいるな」と。レアルでも2015年に16歳というクラブ史上最年少デビューを果たしたんですが、その後オランダのヘーレンフェーンやフィテッセにレンタルで出されて、「よくある神童の1人として消えちゃったのかな」と感じていました。ヘーレンフェーンでは試合には出ていましたが、結果は出せませんでしたね。ただ、フィテッセでレギュラーとして結果を出して、昨季から移籍したレアル・ソシエダで完全にブレイクしました。今のソシエダではトップ下の「王様」ですね。

 ウーデゴールのプレーを見ていて感じるのは、とにかく状況判断が早い。中盤ではシンプルにプレーしているんですが、アタッキングゾーンの密集地帯に行くと囲まれてもダブルタッチで外したり、また抜きなど独創的なテクニックを見せます。場所によって自分のプレーを変えていて、頭のいいプレーヤーだと感じますね。ウーデゴールがここまで急激に評価を上げているのは、やっぱりゴールに絡む回数が多いからだと思うんです。なので今回は、その中から「ラストパス」にフォーカスしてみます。彼のラストパスのポイントは次の5つですね。

今季のウーデゴールのパスを集めたハイライト動画

「パスセンス」を言語化すると…

 まず1つ目。ボールの持ち方がいいので、どのタイミングでも出せること。ボールを受ける前から首振りの回数が多くて、周りをよく見ています。ボールを持ってからも常に顔が上がっていてタッチが細かい持ち運びをするので、いつでも「蹴れる状態」なんですよね。これはFWとしてもありがたくて、出し手がいいボールの持ち方をしてくれると信じて動き出せるんですよ。逆に置いている場所が悪いと「来ないな」と思って動けないですね。

 2つ目は、ドリブルしながらでも出せること。先ほど受ける前に首振りの回数が多い話をしましたが、この時に味方と敵の位置関係を見ているんです。で、パスが来た時に出せれば出すんですが、コースがなければ自分がドリブルで敵を動かしてパスコースを作れるのが彼の凄さですね。運びながら敵を剥がして角度を作り、スルーパスを通す。味方の位置、自分のドリブルで敵がどう動くか、その両方がイメージできていますね。オサスナ戦の1点目のシーンはその典型ですね。

リーガ第18節オサスナ戦、ウーデゴールはワンツーでライン間に侵入。そのままドリブルで横切りながらDF3人の注意を引きつけると、絶妙なラストパスでオヤルサバルの先制点をお膳立てした

 3つ目は、常に「奥」を見られること。普通、自分がパスを受けた時にFWが受けに降りてきたら出しちゃうのが多いと思うんです。ただ、彼はそこで安易に出さないで、遠くのサイドであったり、裏を常に見ていてそこにボールを出せるんです。アラベス戦のアシストがまさにそうです。ボールをもらってDFをまた抜き、ポストを使わないで斜めのスルーパスを出してゴールという展開でした。

リーガ第6節アラベス戦では、相手の2ラインを1本のパスで切り裂く文字通り“一撃必殺”のアシストを披露。リーガ公式Twitterアカウントを脱帽させた

 4つ目は、スペースへ出すパスがうまいこと。味方が走っているスピード、スペースの大きさなどを瞬時に判断して、パスのスピード、球質、回転などを調整して、ちょうど足を止めずにシュートが打てるボールを出しています。GKがどのくらい出てくるかとか、DFの動きを読めるのはセンスですよね。

「ループパスの名手」という新しい存在

 最後の5つ目、おそらくこれは彼の必殺技だと思うんですが、ループパスですね。現代ではゴール前のスペースがなくなっていて、[5-4-1]で守備を固めるチームが多くなっています。そこまで行くと、下にパスコースがなくなりますよね。そこでウーデゴールは上を通すループパスを多用しているんです。立体的にパスコースをイメージできるのは彼の才能で、ループパスの名手って意外と少ない気がします。イメージできるのは、メッシがジョルディ・アルバに出すパスくらいでしょうか。ウーデゴールは足首の力でチョンと浮かせて上を通すのがうまく、実際にそれが絶好機に繋がっていますので、ぜひ注目してみてほしいですね。

リーガ第9節ベティス戦の46分、ペナルティエリア手前で3人に囲まれたウーデゴールだが、相手の意表を突くループパスで一気に局面を打開している

 今後の話をすると、レアル戦でゴールしても喜びを見せなかったりしていますし、本人は復帰したいんでしょうね。監督のジダンも戻したがっているという話も聞きます。実力的にはレアルでやれるレベルに来ていると思います。ソシエダでは[4-2-3-1]のトップ下としてプレーしていますが、レアルでは[4-3-3]のインサイドハーフか右ウイングでしょうね。モドリッチクロースの信頼が少し下がっている気がするので、バルベルデを左に回して、ウーデゴール、カセミロ、バルベルデという世代交代した中盤トリオになる可能性もあるかもしれません。あとノルウェー代表も面白くなりそうですね。ハーランドとウーデゴールのコンビですから。そちらもどんなチームになるか楽しみです。

「神童」ウーデゴールのラストパス。現代サッカーを攻略する必殺技とは?

コパ・デルレイ準々決勝2ndレグで古巣レアル・マドリ―相手に先制点を挙げたウーデゴール。喜びを顔にすら浮かべなかった結果、チームメイトから手荒な祝福を受けることに

「神童」ウーデゴールのラストパス。現代サッカーを攻略する必殺技とは?

Ryohei HAYASHI
林 陵平FC町田ゼルビア
1986.9.8(33歳)186cm / 80kg FW JAPAN

東京都八王子市生まれ。東京ヴェルディのアカデミーでジュニアからユースまで過ごした。05年に明治大へ進学して頭角を現し、07年関東大学サッカーリーグで43年ぶりの優勝に貢献した。大学卒業後、09年に古巣の東京ヴェルディに加入したが、翌年に柏へ移籍する。その柏でJ2、J1優勝、クラブW杯に出場。12年7月からはモンテディオ山形にレンタル移籍、翌13年シーズンより完全移籍した。17年に水戸へ活躍の場を移し、チーム最多の14得点を記録。プロ10年目の18年、東京ヴェルディへ復帰を果たした。19年8月にFC町田ゼルビア、20年3月にザスパクサツ群馬へレンタル移籍。新天地でもマニアックなゴールセレブレーションに期待が掛かる。Twitter:@Ryohei_h11 Instagram:@ryohei_hayashi

林陵平のマニアック技術論


Photos: Getty Images

あわせて読みたい

footballistaの記事をもっと見る

トピックス

今日の主要ニュース 国内の主要ニュース 海外の主要ニュース 芸能の主要ニュース スポーツの主要ニュース トレンドの主要ニュース おもしろの主要ニュース コラムの主要ニュース 特集・インタビューの主要ニュース

サッカーニュースアクセスランキング

サッカーランキングをもっと見る

コメントランキング

コメントランキングをもっと見る
2020年5月1日のサッカー記事

キーワード一覧

このカテゴリーについて

Jリーグ、海外サッカー、人気のサッカー選手などサッカーにまつわる情報をお届け中。

通知(Web Push)について

Web Pushは、エキサイトニュースを開いていない状態でも、事件事故などの速報ニュースや読まれている芸能トピックなど、関心の高い話題をお届けする機能です。 登録方法や通知を解除する方法はこちら。