日本テレビ系)などでもおなじみの芸能リポーター・長谷川まさ子さん(61)。

「なっちゃん(※近藤さん)は“友達の友達は、みな友達”という人です。

私の友人のテレビ局の女性ディレクターの大学時代の同級生に自衛官がいて、その人の友達がなっちゃんでした」

独身女性が4人集まった「腐れ縁」というLINEグループのメンバーを中心に、飲み会やゴルフをしているという。

「彼女には昭和的なノリがあって、“飲みニケーション”を大事にしているんじゃないでしょうか。よく部下を飲みに誘ったりするようです。自衛隊のクリスマスパーティに招待してくれたときも、なっちゃんは周りに気を使い、部下の子供ともよく遊んでいました。

場を盛り上げるのも上手です。スナックでゴールデンボンバーの『女々しくて』を歌ったときは振付も完璧で、お客さんもみんなが拍手喝采でした(笑)」

キャンプや海外旅行などにもよく行った。

「とってもまめで“旅のしおり”も作ってくれるんですね。《○時に、○○に到着予定。長谷川さんは歩幅が小さいので、みんなより○分遅れて到着予定》とか、ユーモアも忘れないんです」

海外のビーチリゾートに遊びに行ったときは、さすがに海上自衛官だと感心することも。

「『長谷川さん、沖のほうまで行きましょうよ』と誘ってくるんです。足がつかないし怖いよと断ると、一人でどんどん沖のほうに泳いでいって、米粒みたいに小さくなって、最後は波で見えなくなってしまうんですね」

だが、あるときを境に海外旅行には行かなくなった。

「あるとき、なっちゃんから『長谷川さん、ごめんなさい。

私は自衛隊を辞めるまで、もう海外には行きません』と言われたのです。国内で遊びに行くにも、職場から1~2時間以内の場所しか行けないし行かないとのことでした。それだけ責任が重くなったのでしょうね」

お互い独身のため、結婚を話題にすることもあったという。

「なっちゃんは『私は(結婚)しますよ』と言っていたけど、真剣にお相手を探しているそぶりは見えませんでした。どうしても仕事を優先してしまっていたのかも。

だから、よく『部下はいっぱいいる。

家族みたいなもの』と話しています。そんな思いもあるためでしょう、『国を守る、国民を守る、部下を守る、部下の家族を守る』が口癖ですね」

このように徹頭徹尾、自衛官となった近藤さんに対し、入隊時は「私はあなたを自衛官にするために大学に行かせたわけじゃない!」と、激しく反対していた母親も、次第に理解を示し、逆に応援してくれるようになった。

近藤さんが振り返る。

「何がきっかけかはわかりませんが、誰にでも私のことを『世界に羽ばたく自慢のなっちゃん』と言うようになったのです。見ず知らずの人を『ちょっとあがりんさい』と家に招き、居間に飾ってあった制服姿の私と安倍(晋三)元首相の写真を見せて『これがうちのなっちゃん』と、自慢していたそうです。

あれだけ反対しておきながら“どの口が言うの?”とも思うのですが、誇りに思ってくれたことは正直うれしいですね」

その母は10年ほど前、がんでこの世を去った。

当時の勤務地は長崎県佐世保市だったが、2週間に1度くらいのペースで山口県の病院に顔を見せに行った。

「でも鎮痛剤などで頭がぼうっとしていて、1日半ぐらい一緒にいても、私のことを理解できないことがありました。それでも『あなた、なっちゃんに似ているわね、なんてかわいいの!』って言ってくれたのですね。あの一言は忘れられません」

意識が混濁していても、最後までなっちゃんのことを思っていたのだ。“自慢のなっちゃん”は、人望・判断力・想像力・統率力などが評価され、ついには海将へと昇任することに。

「内示を受けたときも“なぜ、女性である私が”とは、まったく思いませんでした。

女性というだけでそこまで卑下する必要はありません。どの組織においても、資質や能力、実績、貢献度、影響度などを評価されて地位が与えられるものであって、性別、国籍、民族などの属性で与えられるものではありません」

とキッパリと語った。近藤さんを補佐する青木邦夫幕僚長もこう話す。

「海将は海上自衛隊でトップの階級で、非常に重い責任を伴うからこそ、近藤総監が選ばれたのだと思います。海将の実力を持った人が“たまたま女性だった”ということです。

いっぽうでわれわれの組織は女性に活躍してもらえなければ、組織の存亡にかかわってきます。

今回の人事は、キャリアを積んでいる女性自衛官のモチベーションを上げてくれたと思います。

さらに近藤総監は大湊地方総監部以外にもファンが多く、着任のときにはお祝いの花がずらりと並んでいました。あれほど多くの花は、見たことがありません」

昨年12月23日、大湊地方総監部の大講堂で行われた着任式は、厳粛な雰囲気に包まれていた。約200人もの隊員が整然と並ぶなか、その中央を胸にいくつもの勲章をつけた近藤さんが進み、隊員に向けて敬礼した。

その凜々しい姿を、天国の母はきっと『やっぱり、世界に羽ばたく自慢のなっちゃん!』と、誇らしく思ったに違いない。

■「常に命を懸ける覚悟は持っています」

「総監室」という札がかかった扉を開けると、世界地図や担当区域である北海道・東北の地図などが壁に掲げられ、手前には大きな応接セット、奥には執務机が配置されていた。机の背後のわずかに開けた窓から海風が運ばれ、レースのカーテンを揺らしている。

《周到な準備なくしては的確かつ柔軟な対応はない》ため、毎日、7時半には出勤して8時からの業務の準備をしている。

「8時からモーニングレポートを受け、8時半くらいからは総監部の朝の会議に臨み、その後も夕方まで、幕僚の報告が続きます。何も事案が生起しなければ、16時半に退庁しますが、今のところ、事案が生起しない日はほとんどありません」

着任式後の記者会見でも、女性が働きやすい職場にするためには、まだまだ課題が山積していると語っていた。なかでも「決して許してはならないと意識している」のがセクハラ問題。陸上自衛隊では、五ノ井里奈さんの性被害が大きな社会問題となったばかりだ。

「一昨年の陸上自衛隊で生起した事案だけでなく、海上自衛隊においても、昨年10月に被害者の心情に寄り添っていない、誤った対応が発覚しました。セクハラ防止のための教育等各種対策を実行するとともに、事案を認知したならば、公明正大な調査の実施と被害者の心情に寄り添った対応を強く指導していく所存です」

一方、世界に目を向ければ、防衛費が増額されるなど、東アジアも含めた安全保障の情勢は混沌としている。

「有事の際、どういう場面に立つのかはわかりませんが、常に命を懸ける覚悟は持っています。自衛隊員は《事に臨んでは危険を顧みず》と宣誓しますので、誰もが同じ気持ちだと思っています」

そう語る近藤さんは、改めて海将としての責任の重さをかみしめていたに違いない。“国を守る、国民を守る、部下を守る、部下の家族を守る、それが私の使命だ”と――。

(取材・文:小野建史)