高齢者が必要な栄養素を摂取するために、おすすめの食材は何か。管理栄養士の森由香子さんは「若さと健康を保つためにはたんぱく質を積極的にとるべきだが、60歳になると食が細くなり歯が悪い人も増え、肉や魚を敬遠するようになりがちだ。
そこで、高齢者のたんぱく質のチョイ足しにおすすめの食材がある」という――。
※本稿は、森由香子『60歳から食事を変えなさい』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■マシンを使った膝の曲げ伸ばし運動で若返る
40歳を過ぎて筋力の衰えが気になりはじめると、ジムに通ったり、筋トレをはじめる人が増えます。
もちろん、そのこと自体はとても良いことです。人の筋肉は、ある程度の年齢になると、何もしなければ確実に衰えていくので、若さと健康を維持するために、筋肉を鍛える習慣はとても大切。
「筋トレなんて、よほどちゃんとやらないと意味がないのでは?」と言っていた患者さんもいましたが、そんなことはありません。
たとえば、ある研究によると、60~74歳の健康な高齢者が、マシンを使ったひざの曲げ伸ばし運動と屈曲運動を、反復回数8回、3セットずつ、週に2回行ったところ、12週間続けただけで、男女ともに太ももの筋肉の厚みが増加したという結果が報告されています(第24回健康医科学研究助成論文集平成19年度版より)。
しかも、この筋肉の増加量は、男性では約18歳分、女性では約9歳分の若返りに相当したというのです!
それほどきつい運動量ではないのに、なんとすばらしい筋肉増量効果でしょうか。
ですから皆さんには、ぜひとも運動していただきたいのですが、せっかく運動をするのであれば、絶対に忘れてほしくない、しかも多くの人が陥りがちな、大事な注意点があります。
それは、筋トレ後の、ビールをはじめとしたアルコールの摂取です。
筋トレなどの運動をした直後に、ついついビールをたくさん飲んでいませんか。そのタイミングで飲んでしまうと、アルコールが筋肉を分解したり、せっかくの筋トレの効果が台無しになったりしてしまうのです!
■筋力の衰えを補う筋トレ後に控えるべき行為
筋肉というものは、筋トレなどで筋肉を使って傷つけると、それを修復することで、元の筋肉より少し大きくなる、という性質を持っています。
そして、筋肉を修復して大きくするときには、たんぱく質が必要になります。
このときアルコールを大量に摂取してしまうと、肝臓がアルコールの分解・代謝のためにはたらき続けなくてはならなくなり、肝臓で代謝されるはずだった食事からの糖質やたんぱく質の代謝が遅れてしまいます。その結果、たんぱく質が得られにくくなり、筋肉合成よりも体脂肪合成が進みやすくなります。
また、筋トレ後の飲酒は、コルチゾール(副腎皮質から分泌されるホルモン)の分泌を増やしますが、このホルモンには、筋肉を分解する作用もあるのです。
つまり、せっかく筋トレをしても、飲酒によってコルチゾールが分泌されてしまっては、その効果ががくっと落ちてしまうわけです。
しかも、アルコールをとると、筋肉を増やすために必要なホルモンであるテストステロンの分泌量が低下してしまうともいわれています。テストステロンは男性ホルモンとして有名で、男性のほうが多いですが、女性の体内にもあるホルモンです。
どうか皆さん、筋力の衰えを補うために筋トレをするのであれば、そのあとの飲酒はくれぐれも控え、せっかくトレーニングした効果を、しっかりと自分のものにしてください。
■食が細い人のたんぱく質不足にお勧めの食材
若さと健康を保つためにはたんぱく質を積極的にとるべきだという事実は、ここ数年で少しずつ広まってきた印象があります。
しかし問題は、どうやってたんぱく質をとるか。特に60歳くらいになってくると、女性を中心に食が細くなり、歯が悪い人も増えてきて、噛みごたえのある肉や、骨などがわずらわしい魚などはどうしても敬遠しがちという人が増えます。
そんな皆さんのために、ちょっとした工夫でできるたんぱく質摂取のコツをご紹介しましょう。

私の一番のおすすめは、ピーナッツバターの活用です。
ピーナッツの主な成分は約50%の脂質と約20%のたんぱく質。ですからピーナッツバターは、たんぱく質の重要な補給源として、長年、本場アメリカをはじめ、世界中で親しまれてきました。
また、食物繊維をはじめ、からだのエネルギーを作り出すビタミンB1や、血液の循環をよくするビタミンEなども多く含んでいます。
若干脂質が多いのでとり過ぎは禁物ですが、コレステロールがなく消化が良い栄養豊かな優良食品なので、たんぱく質のチョイ足しにおすすめです。
■牛乳に溶かして飲んでたんぱく質補給を
ピーナッツバターといえば、パンにぬって食べるのが一般的ですが、たとえば、ほうれん草、小松菜など青菜の和え物は、ポン酢和えよりもピーナッツバター和えにするとよいでしょう。工夫次第で、ほかの食材と混ぜてもおいしくいただけます。
また、温かい牛乳にピーナッツバターを溶かして飲むのもおすすめ。味もおいしいですし、ぜひ一度、お試しください。
粉チーズ、スキムミルク、練りごまなどにもたんぱく質が豊富なので、ピーナッツバター同様、和え物にしたり牛乳に溶かして飲んだりすれば、小まめなたんぱく質補給に役立ちます。
ちょっとした工夫を毎日重ねて、筋肉の増加に努めましょう。少なくとも、減少を最小限に留めるようにがんばりましょう。


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森 由香子(もり・ゆかこ)

管理栄養士

日本抗加齢医学会指導士。東京農業大学農学部栄養学科卒業。大妻女子大学大学院(人間文化研究科人間生活科学専攻)修士課程修了。2005年より、東京・千代田区のクリニックにて、入院・外来患者の血液検査値の改善にともなう栄養指導、食事記録の栄養分析、ダイエット指導などに従事している。また、フランス料理の三國清三シェフとともに、病院食や院内レストラン「ミクニマンスール」のメニュー開発、料理本の制作などを行う。抗加齢指導士の立場からは、“食事からのアンチエイジング”を提唱している。『おやつを食べてやせ体質に! 間食ダイエット』(文藝春秋)、『1週間「買い物リスト」ダイエット』(青春出版社)など著書多数。

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(管理栄養士 森 由香子)
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