健康で長生きするためにはどんなことに気を付けるべきか。内科医の本間良子さんは「私たちが当たり前のように口にしている食材が脳にシミを作り、認知症を引き起こす原因になっている。
まずはその摂取を控えることだ」という――。
※本稿は、本間良子『小麦抜きのすすめ』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■小麦の食べ過ぎで脳が炎症を起こす
私の夫は幼いころから強いアレルギーがあり、さまざまな症状に苦しみながら、長年ひどいアトピー性皮膚炎にも悩まされていました。
もちろん、四六時中皮膚にかゆみがあると、気持ちは落ち着かないし、ときには深く落ち込んで心が疲れ果ててしまうこともあります。そんな状態のうえに、さらに多忙が重なって、夫はイライラして過ごすことが多かったように思えます。
「いつもかゆいからイライラするんだろうな」そう思って、ただただ同情していました。
みなさんのまわりでも、アトピー性皮膚炎などアレルギーを持っている人には、ちょっとイライラしているような雰囲気がありませんか? でも、これは「かゆくてイライラしている」と思われがちですが、それだけが原因とは断定できません。
もちろん、かゆみは主な原因のひとつですが、実は「脳」が炎症を起こしている場合があるのです。
第1回の記事で「腸漏れ」について紹介しました。人間の体は血管などを通じてつながっており、腸が漏れていると、腸から細菌や毒素などが入って、肌やほかの臓器を巡りながら、やがて脳にいたってしまう場合があります。
そのようにして脳に炎症が起きてしまうと、気持ちがイライラしたり、集中力が途切れがちになったり、多動気味になったりしてしまうのです。
■腸から脳へ連鎖する「漏れ」
小麦に含まれるグリアジンによって分泌されるゾヌリンは、血流に乗って脳にいたる場合がよくあります。

でも、脳には本来「血液脳関門(のうかんもん)」と呼ばれる、脳の血管に不必要なものが入るのを防ぐためのバリアが存在します。ただし、その血液脳関門のつなぎ目にゾヌリンが作用すると、タイトジャンクション(※細胞と細胞の間がしっかりと閉じられている状態)が開きやすくなってしまうのです。
つまり、小麦によって脳がダダ漏れしてしまうということ。そうして、そこから細菌や毒素などが入っていく「脳漏れ」と呼ばれる状態が引き起こされます。私の臨床経験からすると、「腸漏れ」の症状がある人は、ほぼ漏れなく「脳漏れ」の症状が見られます。
腸の状態が悪い人は、脳の状態も悪いといえるのです。
■認知症を早める脳のシミ
脳に炎症が起きると、いったいどうなるのでしょうか?
脳が炎症すると、結果としてアルツハイマー型認知症をはじめ、さまざまな認知機能障害を起こしやすい状態になります。先に、炎症は一種の老化現象だと書きましたが、脳内の炎症と、認知機能の低下やアルツハイマー型認知症が深く関わっていることは、すでに多くの論文であきらかになっています。
免疫システムを狂わせてしまう炎症を引き起こすことが、認知症の原因のほぼすべてといっていいかもしれません。
アルツハイマー型認知症をはじめ、認知症には共通点があります。それは、脳に「アミロイドβ」というタンパク質がたまってしまうこと。具体的には、アミロイドβとは、リポフスチンと呼ばれるタンパク質と脂質の混合物です。
もっと単純に、老廃物や毒素と考えてもよく、見た目も中身も、皮膚にできるあの褐色の「シミ」とそっくり。
このシミが脳にたまっていくと、やがて認知症を引き起こします。これまでの認知症の治療や研究開発は、この脳のシミを取り除くことに力を入れてきました。
でも残念ながら、アミロイドβをいくら除去しても、認知症はなかなか治りません。それはなぜなのでしょうか?
■溜めないことが鉄則
これは、皮膚にできたシミで考えると、わかりやすいと思います。
皮膚にシミができる原因は、おもに紫外線を浴びるから。医学的には、「抗酸化力の低下」が主な原因です。
そんなシミを取り除くには、外部からレーザー治療をすれば、その部分の肌はきれいにはなるでしょう。でも、紫外線をふたたび浴びれば、結局またシミは生まれるし、そもそも体の抗酸化力を上げなければ、いくらシミを表面的に除去してもきりがないのが実情です。
同様に、脳のシミをいくら取り除いても、元の原因を治さないままでは、のちにいくらでもシミが生まれてしまいます。しかも、皮膚とはちがって、脳は体の中にある繊細な臓器です。脳のシミを取り除くのは、皮膚のシミのように簡単にはできません。

つまり、脳にとって大切なのは、なによりも体内にシミ(毒素)を「ためない」ことなのです。

(参考文献)

1. グルテンフリーによる抗炎症作用、インスリン抵抗性の改善、減量効果

論文名: Gluten-free diet reduces adiposity, inflammation and insulin resistance associated with the induction of PPAR-alpha and PPAR-gamma expression

掲載誌: J Nutr Biochem 2013 Jun; 24(6):1105-11

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23253599/

2. グルテンフリー・カゼインフリーによる自閉症スコアの改善

論文名: The ScanBrit randomised, controlled, single-blind study of a gluten- and casein-free dietary intervention for children with autism spectrum disorders

掲載誌: Nutr Neurosci 2010 Apr;13(2): 87-100

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20406576/

3. グルテン関連する疾患のカテゴリー グリアジンのアミノ酸配列

論文名: Spectrum of gluten-related disorders: consensus on new nomenclature and classification

掲載誌: BMC Med. 2012 Feb 7: 10: 13

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22313950/

4. 非セリアックのグルテンに関連する疾患

論文名: Non-Celiac Gluten Sensitivity: The New Frontier of Gluten Related Disorders

掲載誌: Nutrients. 2013 Sep 26; 5(10): 3839-3853

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24152744/

5. グルテン不耐症の症状など

論文名: An Italian prospective multicenter survey on patients suspected of having non-celiac gluten sensitivity

掲載誌: BMC Med. 2014 May 23: 12: 85

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24885375/

6. グルテンフリーによる免疫反応

論文名: Effect of gluten free diet on immune response to gliadin in patients with non-celiac gluten sensitivity

掲載誌: BMC Gastroenterol. 2014 Feb 13: 14: 26

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24524388/

7. グルテン関連疾患の分類およびグルテン不耐症に関する臨床症状など

論文名: Non coeliac gluten sensitivity - A new disease with gluten intolerance

著者: Grażyna Czaja-Bulsa

掲載誌: Clin Nutr 2015 Apr; 34(2):189-194

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25245857/

8. 消化器症状、過敏性腸症候群とグルテン不耐症

論文名: US perspective on gluten-related diseases

掲載誌: Clin Exp Gastroenterol. 2014 Jan 24: 7: 25-37

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24493936/

9. アルツハイマー型認知症とグルテン不耐症

論文名: Diet Associated with Inflammation and Alzheimer's Disease

掲載誌: J Alzheimers Dis Rep. 2019 Nov 16; 3(1): 299-309

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31867568/

10. グルテン不耐症の症状、自己免疫疾患などの関連性

論文名: Extra-intestinal manifestations of non-celiac gluten sensitivity: An expanding paradigm

掲載誌: World J Gastroenterol. 2018 Apr 14; 24(14): 1521-1530

URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29662290/

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本間 良子(ほんま・りょうこ)

医師、スクエアクリニック院長

米国発達障害児バイオロジカル治療学会フェロー。聖マリアンナ医科大学医学部卒業後、同大学病院総合診療内科入局。副腎疲労の夫をサポートした経験を活かし、米国で学んだ最先端医療に基づく栄養指導もおこなう。また、日本で唯一、副腎疲労、グルテンフリー外来を開設している。

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(医師、スクエアクリニック院長 本間 良子)

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